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親子で学びたい。我が子に伝えたい。そんな気持ちになれる、やる気が出てくる世界の言葉。歴史上の偉人や名著からピックアップ。その言葉はどうして出てきたのか、お伝えしていきます。
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内気で人見知り。なかなか人と打ち解けられず、悩んだ経験はありませんか?もし、ご自身が明るく社交的な性格だったとしても、お子さんはそうでないこともありますよね。
どうして自分とこんなにも違うのか、なぜお友達ができづらいのかと心配になることもあるかもしれません。
でも、内向的だということは決して欠点ではありません。注意深く物事を見つめる、そんな姿は、きっと魅力になり得るものだと思います。
お子さんに自信を持ってもらい、時には少し勇気を出してみる。そんなやる気を起こさせるような一冊の本と、その中から言葉を紹介します。
【やる気が出てくる世界の言葉】:「スキッパーは自分がわらっているのに気がつきました。どうしてわらっているんだろう。わらわないでおこうと思っても、なんだかうれしさがこみあげてきて、どうしても顔がわらってしまいます。」
「ふしぎな木の実の料理法」/岡田淳 著
作者は岡田淳さん。彼の著作はとても人気ですから、保護者の方の中にも読んだことがある、という方が多いかもしれません。筆者もその一人です。
静かな、しかし想像力に満ちた岡田さんの世界にどっぷりはまり、小学生時代、図書室に通って夢中で読みました。岡田さんは、40年近く小学校で図工専任教諭を務めるかたわら、沢山の名作を生み出し続けてきたのです。
この作品は「こそあどの森」シリーズの一作目になります。この本の主人公はスキッパーという男の子。
彼は、博物学者のバーバさんというおばさんとふたり暮らしですが、バーバさんは研究でしょっちゅう旅に出てしまうため、一人きりで暮らしていると言っても良いでしょう。
スキッパーは無口で大人しく、とても内気なために「こそあどの森」の住人たちにもよく知られていません。
ある雪の日、旅に出ているバーバさんから見たこともないふしぎな木の実、ポアポアが送られてきます。
一緒に届いた手紙には、その料理法が書かれていたはずなのですが、雪で濡れたために部分的に読めなくなっているのです。配達人のドーモさんと、一緒に荷物を届けた森の住人のポットさんは罪悪感から世話を焼こうと大騒ぎしますが、そんな親切もスキッパーにとっては煩わしいだけです。
一人きりで本を読んだり、化石を眺めたりするのが大好きなのです。それでも、どうしても送られてきた木の実と手紙の内容が気になって仕方がなくなり、助言を求めて森の住人の家々を訪ねて行くのです。
スキッパーが森のみんなと、おそるおそるですが交流を重ねていく様子は微笑ましく、自然と人との交流を求めていくようになるスキッパーには親近感を感じます。
スキッパーは一週間かけて、森の住人たちにポアポアの料理法を訪ね歩きますが、手がかりはつかめません。
みんなにポアポアを一つずつあげて、あきらめかけたスキッパーは読書をはじめますが、以前のように本の世界に入り込めません。一人きりだったときは、あんなにも楽しかった読書。なのに、騒々しかったこの一週間が意外にも幸せな余韻をスキッパーに与えてくれていたのです。
雪解けのころ、ポアポアに芽が生えてきます。スキッパーは、「森のみんなに教えなければ」と、いてもたってもいられず出かけようとします。すると、森のみんなもスキッパーに教えようとポアポアを抱えて訪ねてくるところでした。
「スキッパーは自分がわらっているのに気がつきました。どうしてわらっているんだろう。わらわないでおこうと思っても、なんだかうれしさがこみあげてきて、どうしても顔がわらってしまいます。」
こうしてみんなが集まったとき、スキッパーが思ったことです。無口でおとなしい彼ですが、人と交流することの楽しさを知り、素敵な住人に囲まれていることを嬉しく思ったのでしょう。
それにしても、楽しいのに「わらわないでおこう」なんて、スキッパーの膨らみすぎた自我を感じさせる一文です。
郵便配達のドーモさんは、バーバさんに手紙が読めなくなったことを伝えてくれていました。
その返事が届き、ポアポアの実の料理法がついに判明します。その意外な料理法は、ここでは内緒にしておきましょう。
みんなで協力して出来上がった料理は、とても美味しくてスキッパーは幸せな気分を味わいます。バーバさんがいないときは、いつも一人だったスキッパーの食卓。
今こうしてみんなでテーブルを囲み、ひとつの喜びを共有していることが、このうえなく幸せに思えるのでした。
この物語に勇気づけられるのには理由があります。
それは、スキッパーの内向的な性格は何も変わっていないというところです。自分から森の住人たちに関わりを持ったのも、最初は嫌々だったとも言えるでしょう。
みんなが家を訪ねてきて、帰った後もスキッパーは変わらず図鑑を眺め、本を読み、一人の時間を満喫している様子があります。それでも、ポアポアの実のおかげで思いがけず楽しい思いをすることができました。
ポアポアの実は、スキッパー自身の姿と重なります。固く固く閉ざされていた殻。しかし、時間をかけて芽吹き、花が咲き…殻を破ったとき、とてつもない感動があるのです。
例えばこのお話が、一人を愛するスキッパーが、殻を破って明るく積極的になったという成長物語だったとしたら、こんなに心動かされることはありません。
一番素敵なことは、スキッパーの個性はそのままに、住人たちが彼を受け入れ、彼も住人たちを受け入れ仲良くなったことにあります。そして、「こそあどの森」の住人たちもまた、ひとくせあるユニークな人たちなのです。
この森で 遊んで暮らすふたごは、支離滅裂で自分勝手、自分たちの名前を自由に変えて楽しんでいます。作中、ふたごの本名などはわからないままです。
姉弟で暮らすスミレさんは、悪い人ではないけれど皮肉っぽい物言いをすることがあるし、弟のギーコさんはスキッパーを大人にしたような無口な人です。
けれど、そんな個性豊かな住人たちが暮らす「こそあどの森」にはとても優しい時間が流れています。作者の岡田さんが、教員生活の中で子どもたちに向けてきた優しい眼差しが、「こそあどの森」にも注がれているのだと実感します。
誰にでもコンプレックスはあります。自分を好きになれず苦しんでいる子どももいるでしょう。
しかし、相手に対して誠実であれば、ちょっと変わっていたとしても自分の個性を愛し、受け入れてくれる仲間がこの世界のどこかにいます。
自分のことを嫌いにならず、大好きな友達を見るように自分のことも見てあげる。そんな気持ちにさせてくれる、不思議なファンタジーです。
参考文献:「図工準備室の窓から〜窓を開ければ子どもたちがいた〜」/岡田淳
やる気が出てくる世界の言葉:
スキッパーは自分がわらっているのに気がつきました。どうしてわらっているんだろう。わらわないでおこうと思っても、なんだかうれしさがこみあげてきて、どうしても顔がわらってしまいます。 /「ふしぎな木の実の料理法」/岡田淳 著
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この記事を書いた人
藤原 望(ふじはら のぞみ)
1993年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後は福祉施設に勤務するが、社会人5年目で一念発起し文章を扱う仕事を目指す。この世で好きなもののトップ3は本、映画、お酒。