新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
子育て・教育
2019.10.24
親子で学びたい。我が子に伝えたい。そんな気持ちになれる、やる気が出てくる世界の言葉。歴史上の偉人や名著からピックアップ。その言葉はどうして出てきたのか、お伝えしていきます。
▶シリーズの一覧はこちら
子どもは風の子、外で元気良く遊びましょう・・・まるで小学校の月間目標のようですが、これは全ての親御さんの願いではないでしょうか。
外遊びは心と体を健康にしてくれ、大人数で遊べば協調性も育んでくれます。元気に遊び回る子どもたちの姿は本当に良いものですよね。
しかし、親御さん世代ではすでにファミコンゲームが普及しており、外で遊ぶよりもテレビゲームの方が好きだったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私の子ども時代も同じく、「外で遊びなさい」と親に言われたため、仕方なく公園でゲームボーイに興じる同級生の姿をよく見たものです。
もちろんゲームも楽しいもので、仮想空間で繰り広げられる様々なストーリーは心躍るものがあります。
しかし、なにより良いのは子どもならではの自由な想像力と体力をフルに発揮してくれる外遊び。
普段はインドア派のお子さんに、外の世界に繰り出して行こうとするやる気を起こさせてくれる名言と、一冊の本を紹介します。
【やる気が出てくる世界の言葉】
荒れ地の上を曲がりくねっている道は、広い世界へ通ずる道で、また私の一生に通ずる道です
「ムーミンパパの思い出」/トーベ・ヤンソン著
言わずと知れたムーミンシリーズのなかの一作である本書。ムーミンは、キャラクター製品なども可愛らしく人気があるため、ファンの方は多いと思います。
でも、ムーミン谷の物語を全て読んだことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。実は筆者もそのひとり。
ムーミンやミィの雑貨は可愛くてつい集めてしまうけれど、彼らが一体何なのかはよくわかっていませんでした。
ムーミン達は何なのか。それはこの本に出会った全ての人が持つ印象が作り上げていくもので良いのだと思います。
ムーミンシリーズの作者は、トーベ・ヤンソン。出身地であるフィンランドでは、国民的な作家・芸術家として知られています。
彼女は画家とグラフィックデザイナーという両親のもとで、幼い頃から芸術に親しんで育ちました。
フィンランドの豊かな自然の中で育まれた彼女の精神は、想像力と優しさに満ちた数々の作品を生み出すことになるのです。
この物語は、ムーミンの父親であるムーミンパパが、若き日の冒険を本にして、息子であるムーミンたちに語って聞かせるというお話です。
その冒険は危険に満ちていますが、ワクワクする展開と仲間達との友情は、大人気漫画のワンピースを連想させます。
そう考えると、お子さんウケは抜群ではないでしょうか。
ムーミンパパは孤児として、ヘムレンおばさんが経営する「みなしごホーム」で育ちます。
そこでの味気ない生活に辟易した若き日のパパは、ある夜ついにホームを飛び出し、冒険の旅に出発するのでした。
上記の言葉は、まだ見ぬ冒険への期待で胸を踊らせるムーミンパパが言ったものです。
旅先で、発明家のフレドリクソンに出会ったムーミンパパは、自分の冒険家になりたいという夢を真剣に聞き、認めてくれたフレドリクソンと友達になります。
フレドリクソンの甥ロッドユールと、スナフキンの父ヨクサルも仲間に加え、共に大きな船「海のオーケストラ号」に乗って海原へと繰り出したのです。
竜のエドワード、寂しい海の怪物モランなどとの戦いを通して、大きなものが偉大とは限らないことや、反対に小さいからといって弱く臆病だと決めつけてはいけないことを学びます。
さらに出会いと冒険は続きます。ミムラ一族の娘と出会い、王様の園遊会に出席したり、海のオーケストラ号で海へ潜ったり、心踊る思い出話をムーミンパパは綴っていきます。そして、仲間たちと新しい村づくりを始めるのでした。
ある嵐の夜、大荒れの海を眺めていると、ムーミンパパは美しい女のムーミンが波に揉まれ溺れているのを見つけます。本能的に飛び込み、助けた彼女こそ後のムーミンママなのです。
ムーミンパパが綴ったこの物語。聞き手である息子のムーミンたちの興奮が冷めやらぬ中、かつての友フレドリクソンがパパを訪ねてきます。
次から次と旧友たちが集まり、昔話に花が咲きます。そして、またすぐに旅に出るというフレドリクソンを、尊敬のこもった眼差しで見送るのでした。
このワクワクする冒険の中でムーミンパパが得たものは大きく二つ。
一つ目は自由です。みなしごホームでは絶対に持つことの出来なかったもので、パパは反動のように冒険に執着し楽しんでいます。
そして、その自由は自分の好きな物事の追求にも繋がっているように思います。ムーミンパパは、冒険心を大切にし、人生経験を積んでいく中で様々な教訓を学び、大切な友達や最愛の妻であるムーミンママとめぐりあっています。
二つ目は、生涯にわたって尊敬しあえる友人です。物語の最後に再会したパパとフレドリクソンの熱い抱擁は、彼らの青春を思い出させ目頭が熱くなります。
ムーミンパパは、みなしごホームを抜け出し初めて出会ったフレドリクソンと、互いに認め合える熱い友情を築くことができました。
また、途中で出会った仲間たちも、かけがえのない存在となっています。
その姿は、本書の作者であるトーベ・ヤンソンの人生とも通じるものがあります。
ヤンソンさんは、自分の好きな絵の勉強をするために海外へ留学し、少女時代から熱中していた絵と物語の創作力を磨き、このような素晴らしい作品世界を生み出したのです。
そして、公私共に最良のパートナーであったトゥーリッキ・ピエティラという女性とも出会うのでした。
ヤンソンさんもまた、何より自由を愛した人であったに違いありません。
柔らかく、先入観の少ない子どもたちの頭は、ムーミン谷ふうに表現すると、宝の泉です。彼らが自然の中で育む想像力は、無限の可能性を秘めているように思います。
筆者も子どもの頃は、友人宅の隣にある栗畑(本当は立ち入り禁止だったので大きな声では言えませんが)で、木の蔓にぶらさがり猿人になりきったり、人質役が石塀に登り下から突き落として海賊ごっこをしたりしました(これもよその家の石塀だったので親には内緒です)。
友達とお泊まり会をした際には、お風呂場で人魚姫ごっこに熱中し、のぼせてしまったこともあります。
今考えると、人魚が水温42度の湯船で無事でいられるのかはわかりませんが、子どもにとってそんなことは関係ないのです。
大切なのは、何もなくとも自分たちの想像力が生む冒険を楽しむ力なのではないでしょうか。
今日では、子どもたちの間でもタブレットやスマートフォンが普及しています。他人の考えたゲームに自分の頭を委ねていては、想像力の育つ隙間がありません。
もちろん、それらは便利で楽しく現代文明における最高の産物だと思います。でも、たまには顔をあげて、天気の良い日は外に繰り出してみて欲しいと思います。
ムーミンパパが味わった冒険は、時に危険もありました。それでも自由と沢山の出会い、喜びに満ちた旅は、人生の宝物となり、子ども時代を思い返すとき真っ先に記憶が帰るふるさとであります。
冒頭にあげた名言をもう一度読んでみましょう。外の世界で待っている出会いと冒険にワクワクしてきませんか?
やる気が出てくる世界の言葉:「荒れ地の上を曲がりくねっている道は、広い世界へ通ずる道で、また私の一生に通ずる道です」/「ムーミンパパの思い出」トーベ・ヤンソン著
参考文献:「ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン」/トゥーラ・カルヤライネン
あわせて読みたい
おすすめコンテンツ
この記事を書いた人
藤原 望(ふじはら のぞみ)
1993年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後は福祉施設に勤務するが、社会人5年目で一念発起し文章を扱う仕事を目指す。この世で好きなもののトップ3は本、映画、お酒。