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親子で学びたい。我が子に伝えたい。そんな気持ちになれる、やる気が出てくる世界の言葉。歴史上の偉人や名著からピックアップ。その言葉はどうして出てきたのか、お伝えしていきます。
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自分の子ども時代を振り返ると、内弁慶だったとはいえ、
家族の前では「わがまま」「謝れない」「反省しない」。
この最悪な三拍子で、さんざん両親を悩ませただろうなと思います。
皆さんのお子さんはどうですか?私ほどひどくはないにしろ、
何かしら心配する点はあるのではないでしょうか。
もちろん人間、何かしらの長所とともに必ず短所も持ち合わせているはずで、
その短所にどう気付き、反省し、長所に変えていくか。
そこに人間としての成熟があるのではないでしょうか。
私自身、最初にあげたひどすぎる三拍子を長所に変えられたかどうかはわかりませんが、自省と改善のやる気を起こさせてくれる一冊の本を紹介します。
【やる気が出てくる世界の言葉】
この小さなできごとだけは、いつも私の目の前に浮かんでいて、ときにはそれがひときわくっきりとなって、私を恥じ入らせ、私を革新させようとし、また私に勇気と希望を与えてくれるのである。
「小さなできごと」/魯迅
言わずと知れた中国近代文学の祖、魯迅による短編小説です。
魯迅といえば当時の中国を風刺とともに描いた「阿Q正伝」。
中学校の教科書に載っていて覚えている、という方も多いのではないでしょうか。
今回紹介するお話はそれほど知られていませんが、とても良い教訓を私たちに与えてくれます。
このお話の主人公は、おそらく国家の要職に就く社会的地位の高い男でしょう。
彼の身の上については詳しく語られませんが、田舎から北京に出て出世を重ねるうちに尊大で横柄な態度が身に付いてしまったと、回想の中で語られます。
そんな彼が、外出をしようと人力車に乗るところからお話は始まります。
吹きすさんでいた北風も弱くなり、車夫がスピードをあげた時突然、ある老婆が人力車の舵棒にひっかかったように倒れ込んでしまいます。
どうやら当時の中国では、貧しい人による当たり屋まがいの詐欺が横行していたようで、主人公はどうせそんなことだろうと車夫に先を急がせようとします。
しかし、車夫は人力車を止め、疑わしい老婆を助け起こし派出所に連れて行くのでした。
この物語のあらすじは、なんとこれだけです。
しかし、主人公はその車夫の行動を見て、自分の疑り深さや傲慢さ、思いやりの無さを恥じてこの出来事を生涯忘れず教訓としました。
何気なく発した言葉が、友達を傷つけてしまった。
きっかけも思い出せないような軽いケンカのはずが、つい手が出てケガをさせてしまった。
そんな小さな失敗たちは、深い後悔の念とともに子どもたちを苦しめます。
後悔や罪悪感は、良心のある証拠です。
しかし、それだけで安心して終わってしまってはいけないのです。
大人の私たちにとっても、罪悪感というのは嫌な感情です。
自分のダメさ加減を思い知らされ、人に迷惑をかけてしまったという恥ずかしさと闘うのは、何度経験していてもつらいものですよね。
それが子どもなら如何ばかりかと思います。
しかし、罪悪感のない人生を想像してみると…
こんなに怖いことはないと思ってしまいませんか?
お話の主人公は、自分の心のなさや傲慢を恥じました。
自分より社会的地位の低い車夫が、自分より何倍も大きく、立派に見えました。
しかし、その後もことあるごとにこのできごとを、苦しみながらも思い出し、公明正大な人間になろうと自分を奮い立たせました。
自分の失敗を恥じる心、罪悪感は、きわめて健全なものだと魯迅は教えてくれます。
自分の過ちを認め、同じ失敗は繰り返さないという決意。
その思いを固め、より成熟した器の深い人間になろうとする気持ち。
このページ数わずか4ページにも満たない、まさに「小さなできごと」が、
子どもたちにやる気と勇気をもたらしてくれるでしょう。
【やる気が出てくる世界の言葉】
この小さなできごとだけは、いつも私の目の前に浮かんでいて、
ときにはそれがひときわくっきりとなって、私を恥じ入らせ、
私を革新させようとし、また私に勇気と希望を与えてくれるのである。
参考文献
「阿Q正伝•故郷」/魯迅
「中国という世界―人•風土•近代―」/竹内実
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この記事を書いた人
藤原 望(ふじはら のぞみ)
1993年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後は福祉施設に勤務するが、社会人5年目で一念発起し文章を扱う仕事を目指す。この世で好きなもののトップ3は本、映画、お酒。