仕事・働き方

部下の仕事をマネジメント! 仕事が面白いと感じさせるフロー体験 |やる気にさせる心理学(9)

2021.01.18

新型コロナウイルスによって働き方や教育、生活や人との関わり方など、 私たちの取り巻く環境は変化を余儀なくされました。さらに、AI社会、グローバル化など未来は大きく変わろうとしています。社会が変わっていけば、必要となるスキルも変わります。変化し続ける社会の中で自分のやりたいことを実現していくために、学び続けられること、成長し続けられることが大切になってきます。
そのために必要な要素の中でとても重要なのは「やる気」です。家で過ごす時間が増えたけどなかなかやる気になれない、子どもをやる気にさせるためにはどうしたらいいの?と悩むことはありませんか?
実は「やる気の出し方」「やる気の引き出し方」については、心理学の知見に基づいた方法論があります。
このコーナーでは、立正大学心理学部名誉教授の齊藤勇先生が、人がやる気になる・人をやる気にさせる心理学的なメカニズムを、みなさんにわかりやすく説明していきます。

立正大学心理学部名誉教授
齊藤 勇

対人心理学者、文学博士1943年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、立正大学名誉教授、日本ビジネス心理学会会長。 対人・社会心理学、特に人間関係の心理学、中でも対人感情の心理、自己呈示の心理などを研究 。TV番組「それいけ!ココロジー」に出演し監修者を務めるなど、心理学ブームの火つけ役となった。『人間関係の心理学』『やる気になる・させる心理学』など、編・著書・監修多数。

 

部下の仕事の効率が悪いのはなぜ?


  

    

仕事もなかなか覚えないし、小さなミスが多くて困るなぁ。と部下の仕事の仕方に頭を悩ませてしまうことはありませんか?もしかしたら部下自身も「どうしたらもっとミスしないで仕事ができるんだろう?」と落ち込んでいるかもしれません。

  

せっかちだったり、ちゃんと確認しないなど、何気ない習慣や行動からミスをしやすいということもありますが、仕事に対して集中力が長続きしないことも原因かもしれません。注意力や集中力が散漫になると業務もなかなか覚えづらく、効率の悪い仕事につながります。集中力を高めて業務パフォーマンスを発揮できる部下に成長させるために、部下にフロー体験をさせましょう。

  
  
  

没頭できる体験は自己成長につながる


  

プロ野球選手がバッターボックスに立つと球場の大声援が聞こえなくなり、ボールが止まって見えたという話もありますし、曲作りをしているアーティストも曲が頭の中にひらめくと、時間を忘れて一気に作品を作り上げたなんて話もよく聞きますよね。

  

このような経験は、別に一流の人ばかり経験するのもではなく、だれもが条件が整えさえすればそのような状態になれます。私自身、ものを書くということが好きでしたから、若いころに(当時は鉛筆書きでしたが)執筆活動で原稿を書いているときは、手が痛い感覚があってもやめられない、誰かに書かされているのではという感覚になる経験が何度かありました。気づいた時には外が真っ暗で、時間がこんなにも過ぎていたということに驚かされましたね。手が痛くなっているのに、心地よい疲れとともに充足感を感じる経験を何度もしていました。

  

日本語では「没頭する」、「集中する」という言葉がありますが、このような通常の心理では考えられない状態のことを心理学的には「フロー状態」と言われています。これは、20世紀を代表する心理学者チクセント・ミハイが提唱した理論です。

  

このフロー体験は、その体験をしたこと自体に喜びを感じ、心地よい充足感を得られることから、次への自律的な行動を生み出します。フロー体験を重ねていければ、どんどん成功体験が積みあがっていくので、自己肯定感が高まり自身の成長にもつながります。また、先ほどのアーティストの例のように高い集中力で取り組むので、創造的なアイデアが生まれやすくなります。

  

では、どういうときにフロー状態になるか?というと、チクセント・ミハイは、次の4つの状態になるとフロー状態になりやすいとしています。

  
  
  

フローはどうやったら生み出せる?フローの入り方の4つのポイント


  

①自分の能力に対して、適切な難易度の課題に取り組んでいるとき

自分が持っているスキルに対して、 自分が持っているスキルに対して、易しすぎず、中程度の難易度で、緊張感があるような課題が適当です。 挑戦する課題が能力よりも高すぎると「不安」を感じ、逆に課題が能力より低すぎると「退屈」を感じて物足りなくなります。中程度の難易度の時が1番、やる気が出るのです 。

   

  

②取り組んでいることに対して、直接的なフィードバックがあること

例えばゴルフでドライバーを打った時にいい球が打てたかどうか打球の音やスイングの角度などでわかり、自分の手や腰の身体の感覚 で良し悪しがすぐにわかるというようなことです。「手ごたえを感じる」とよく言いますが、これが直接的なフィードバックということですね。

  

    

③取り組んでいることのみに集中できる状態にあること

先の私の体験からですと、執筆中に電話も来訪者もなく、自室で一人こもって執筆だけに集中できている環境だったり、 鉛筆や原稿用紙を用意されていて書くという作業にスムーズに入っていけるところですね。これがパソコンでは集中状態に入れない(笑)。私の場合は、パソコンで変換したときに違う漢字が最初に出てくるだけで流れが消えてしまいます。

 

職場では同僚や上司から話しかけられたり、会議があったり、電話が鳴ったりと、なかなかこういった環境をつくるのは難しいことですが、集中したいときの環境を自分でつくることはできますよね。就業時間の中で集中できる時間帯を部内で決めるなど、意識的に「超集中」時間を設定するのもよいでしょう。

  

    

④取り組んでいること自体に興味があること

フロー体験は、行為の先にある報酬が目的ではなく、行為の達成自体が目的になるので、自分が何に楽しさを感じるのか、興味があるのかといった内発的動機が大いに関係してきます。ですから、上司からいわれてやることだとしても、そこに部下自身がその行為に対して魅力を感じることが大前提です。部下の個性に合わせて、欲求をくすぐる仕事をやらせてみましょう。

   

  
  
  

フローを経験するとより高いレベルで挑戦したくなる


  

一度こういう経験をすると、自分がどういうときにフローな状態に入るかということがわかってきます。フローを積み重ねていくと自分の能力が上がっていくので、同じ挑戦では退屈になり、さらに高いレベルへの挑戦を求めるようになります。たとえその挑戦が失敗したとしてもフロー体験ができたことは、心地よい体験として記憶に残ります。ぜひ、フローの入り方を理解して、部下に「超集中」状態を経験させましょう。

 



    

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この記事を担当した人

わん子

やる気ラボに古くからいる微魔女犬。やる気が失せると顔にでるためわかりやすい。my癒しは、滝と戦闘機と空を見上げること。

 
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