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仕事・働き方
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新宿御苑前にある「ケンズカフェ東京」。
「日本ギフト大賞」や食べログの「チョコレート店ランキング第1位」 など、数々の栄えある賞を受賞してきた日本初のガトーショコラ専門店です。
ケンズカフェ東京のガトーショコラは、小麦粉など余計なものを一切使用していないシンプルな点が特徴的です。厳選されたチョコレートの持つ深い味と、それを極限まで引き出すために考えられた独自の製法により、コク・甘み・苦味を三位一体で楽しむことができます。
甘すぎず、苦すぎず――その絶妙なテイストが、男女問わず人気を集めているのです。
さらに特筆すべきは、そのガトーショコラのお値段。1本280gが、なんとひとつ3,000円もするのです。一般的なガトーショコラと比べると、3倍以上の価格。これには、「高すぎる!」と感じる人もいるのではないでしょうか?
しかし、ケンズカフェ東京へガトーショコラを求める客足が途絶えることはありません。1店舗のみ、さらにはネット販売をしていないにもかかわらず、1日300~400本が売り切れることもしばしば。まさに、「日本最高峰のガトーショコラ」として爆発的なヒットを記録しています。
どうして、ケンズカフェ東京のガトーショコラはここまで売れるようになったのか?
その独創的なビジネス戦略を編み出した「ケンズカフェ東京」オーナーシェフ・氏家健治さんに、その経緯とガトーショコラにかける「やる気」を尋ねました。
――氏家健治さん、本日はよろしくお願いします。
はい。よろしくお願いします。
――さっそくですが、氏家さんがオーナーシェフを務める「ケンズカフェ東京」は、元々イタリアンレストランだったそうですね。氏家さんが、シェフを志した理由について教えてください。
僕の実家が工務店をやっていたんですけど、家が事業をやっていたこともあって、なんとなくサラリーマンになるという感覚がわからなかったんですよね。僕の父が「好きなことをやればいい」という考えの人だったということもあって、「決まった何かになりなさい」と強制されることがなかったことも大きかったかもしれません。
幼い頃から食べ物が好きだったこともあり、高校3年生くらいから「そっちの道に進むのかな」と漠然と思うようになりました。どっちかというと洋食の系統が好きだったので、大学を卒業してからは、ホテルオークラ東京や赤坂アークヒルズクラブ、レストランマエストロなどで修行を重ねました。
24~5歳の時はパン屋さんになろうかという考えもあったのですが、当時の日本は「パン屋」といえばまだあんパンや総菜パンなどが主流の時代。欧風の食事パンだけで独立すると、専門的過ぎて失敗するのではないかと思いました。それで結局、29歳の時に、カジュアルなイタリアンの店として「ケンズカフェ東京」を開くことになったんです。
――「これが絶対にやりたい!」という思いから始められたわけではなかった、と。お店も、開店当初は赤字続きだったそうですね。
おいしいものをそこそこ作れている自信はあったんですけど、「集客」という言葉をまるで知らないあまちゃんだったんですよ。「おいしいものを作っていれば客は来る!」みたいな、そういう感じでやっていました。当時は、「広告なんてかっこ悪いから嫌だ」とも思っていました。そもそも、広告を出すお金さえもなかったんですけどね(笑)
そんなスタイルだったから、赤字続きだったんですよ。「政府が悪い」「時代が悪い」「立地が悪い」というように、どんどんネガティブに考えるようになってしまい、やる気なんて下がっていく一方でした。
――そんな状態からどうやって脱却されたのでしょう?
今から約20年前くらいからネットが普及し始めたんですけど、その時にいち早くインターネット集客の方法とかキーワード対策とか、そういったものを覚えたのが大きかったですね。
実は僕、大学の頃に写真をかじっていたので写真の知識もありましたし、弁論部に入っていたこともあって、ちょっとだけ文章を書く能力がありました。当時は、大手企業のサイトでも画質が悪い写真を使っていたり、文章も対策できていなかったりするものが多かったので、そういった意味では1歩リードできたんですね。過去にやっていたことが役に立ったわけです。
僕って、人よりも抜きんでて得意なことはなかった。でも、2つ3つ、少しだけ得意と言えるようなことを集めれば、大手にだって勝てる。そのことに気づいたんです。
「ぐるなび」を使って集客を始めたら、貸し切りの忘年会や新年会、同窓会や歓迎会など、宴会をしたい人たちに来てもらえるようになりました。そこからは、どんどん経営が安定していきました。
――少しでも得意なことを活かして成功体験をつかんだ結果、経営も安定したし、モチベーションも高まってきたということですね。
――現在、ケンズカフェ東京はガトーショコラの専門店です。どんな経緯があってインタリアンレストランをガトーショコラ1本のお店にしようと思ったのですか?
宴会を中心にすることで経営が回っていった反面、こんな集客方法では長くは続かないと思ったんです。宴会や忘年会で箱貸ししていても、お店自体の価値はつかないですし、延々と広告を出し続けなければならない。それでは長続きしませんね。
そんな時、デザートで出していたガトーショコラが「めちゃくちゃおいしい」と人気になり、「売ってほしい」といわれることが増えたんです。最初は、テイクアウトなんてやりたくなかったので断っていたんですけど、要望が多かったので仕方なくラップに包んでてきとうな手提げ袋に入れて売るようになりました。そしたら、口コミであっという間に広まっていって、「どこよりもおいしい」と評判になったんですよ。
そうして、ガトーショコラはありがたみのある商品になりました。着々とファンがついてきているということもわかりました。だから、宴会で儲かったお金をガトーショコラ部門にまわし、最終的にはレストラン部門を無くして、ガトーショコラ1本に絞るという決断に至ったわけです。
――売り上げが良かった部門を切るというのは、大きなチャレンジだったと思います。ガトーショコラが売れなくなったらどうしようという不安はありませんでしたか?
「余計なことはやめなさい」というのが僕の合言葉です。いろいろなことに手を出して、その中で自分の生きる道を探す事も重要だは思うんですけど、もっともっと上を目指すという意味では、必要なものだけを選択するという決断力が大切なんですよ。
だから、チャレンジできる時にはチャレンジした方がいいんです。もちろん失敗して終わりという一か八かな状態ではダメだと思いますけど、チャレンジすることによって状況が良くなる可能性があるならば、しないと損すると思うんですよね。「余計なことはやめる」という言葉は、自分の道が定まるまでに、余計なことをたくさんやってきた僕だからこそ言える言葉だと思っています。
――「余計なことをやめる」といった意味では、1本3,000円への値上げもポジティブな決断だったのですね?
そうですね。僕は、値上げをすることによって、既存のお客さんを覚悟をもって「やめた」。3,000円という値段にすることによって、出会えるお客さんが変わったんです。「高くても良いものを買いたい」という人たちにリピートして買ってもらえるようになりました。
やってダメだったら、戻せばいいじゃないですか。やらずに後悔するのは、いちばんもったいないことですよね。
――氏家さんのように、一つのことを追求するためにはどうすればいいですか?
儲けることとモテるということはとても似ていると思います。いかにして、「人に興味を持ってもらえるか」「人にいい思いをしてもらえるか」。どちらも、これが非常に大切なんですね。
僕は、ケンズカフェ東京というブランドについて、データや売り上げを基に勉強を繰り返してきました。どんな人がどのサイトからやってきて、お客さんが今欲しているものは何か。そういったところを、しっかりと見極めることが重要だと思います。
――氏家さんの言葉からも、もっともっとケンズカフェ東京ブランドを大きくしたいという意気込みが伝わってきます。そこまで情熱を注げる理由はなんですか?
小さなお店でも、全国規模のグランプリで日本一になれば(※1)、ビジネス書(※2)も出版できるし、ファミリーマートとコラボ(※3)だってできるんです。
(※1)2014年、食べログ『全国人気チョコレート店ランキング』 第1位を獲得
(※2)『1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ 4倍値上げしても売れる仕組みの作り方』2014年発売。『余計なことはやめなさい! ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方』2018年発売。
(※3)「コンビニスイーツ革命の第一人者」としても評価は高い。今までのコンビニスイーツの常識を覆すクオリティの高いコンビニスイーツを提供している。詳細はこちら
ケンズカフェという店は日本に1店舗でも、ファミリーマートは全国にあるじゃないですか?ケンズカフェという名前が、全国に並ぶと思うと気分がいいんです。小さくても、唯一無二の存在になれば、皆さんの目に留まることができる。「弱者が強者に勝つ!」。そういうところを目標に、やる気と力に変えて頑張ってきたという感じです。
――最後になりますが、「やる気が出ない」「やりたいことがみつからない」といった読者の皆さんにアドバイスをお願いします。
僕も初めは、やる気なんてまったくありませんでした。料理も本気で苦労して修行したわけではないし、マーケティングもちゃんと勉強したことがなかったから、商売で悩むことになりました。「いつまで逃げるのかな」って、自分の中で苦しんだ時期もあったくらいです。
けれど、そんな僕でも、ガトーショコラで有名になることができたんです。
たとえ総合的に見たときに他人にかなわなくても、誰もがなにか小さな部分で得意なことが必ずあると思います。僕の場合は、それがカメラや弁論の知識だったように、小さなことの積み重ねが何かの役に立つことだってあるんです。だから、皆さんもチャンスがあればどんどんやっていく。一歩踏み出す勇気を持てたらいいですね。
――氏家健治さん、ありがとうございました!
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この記事を書いた人
勝部晃多(かつべ・こうた)
やる気ラボの娯楽記事担当。23歳。ハウストラブルコラムやIT関連のニュースライターを経、2019年8月より現職。趣味はプロ野球・競馬観戦や温泉旅行、読書等と幅広いが、爺臭いといわれるのを気にしているらしい。性格は柴犬のように頑固で、好きな物事に対する嗅覚と執念は異常とも評されている。
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