仕事・働き方

崇勲「人見知り」を長所に変えたラッパー【インタビュー】

2020.03.25

大人気MCバトル番組『フリースタイルダンジョン』で「2代目モンスター」として活躍するなど日本のヒップホップシーンをけん引する崇勲さんに、そのやる気の源泉についてうかがいました。
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崇勲(すうくん)

埼玉県春日部市在住。地元の仲間たちとヒップホップ集団「第三の唇」を結成し、18歳より活動を開始。2006年からフリースタイルの練習をはじめ、数々の大会に出場。MCバトルの全国大会「KING OF KINGS 2015」で優勝を果たした後、人気テレビ番組『フリースタイルダンジョン』で「2代目モンスター」の1人として活躍した。現在はテレビ番組『ハイスクールダンジョン』の審査員を務めるほか、楽曲の制作にも力を入れている。

ヒップホップは
感情を表せる場所


早速ですが、崇勲さん。
崇勲さんがラッパーになろうと思ったきっかけを教えてください。

高校生の頃に、友達が誘ってくれたのがきっかけですね。
でも俺、元からラップをしたいと思っていたわけではないんですよ。

えぇ。それはどういうことでしょうか?

俺は小学生のころから、あんまり感情を表に出す性格ではなかったんです。
だけど当時から、「文章を作ること」が好きだった。文字を書いている時だけは、自分の感情を表現できる気がしたんです。

わかります。「喜怒哀楽」を文字にすることは、感情の整理につながりますよね。

まさにそれです。
高校生の時にヒップホップを聴いて衝撃を受けてからは、昔から作文が好きだったこともあって、自分でリリックを書き始めました。ヒップホップは「喜怒哀楽」を表現するツールとして、もっとも自分に向いているなと思ったんです。

崇勲さんのヒップホップは「ラップする」ことでも「曲を作る」ことでもなく、「書く」ことから始まったと。

そうです。一人で黙々と、ノートにリリックをつづっていました。真似事みたいな感じですね。
でもそれを、DJをやっていた同級生が聞きつけて「じゃあ、ラップをやってみないか?」と誘ってくれたんです。

「感情を表現する場所が欲しい」と始まった個人的な作詞活動が、崇勲さんがラッパーになるきっかけだったのですね。

作文が好きで友達の宿題を代筆していたそう

それでは、ラップ活動を始めてすぐに「音楽で生きていきたい!」とやる気スイッチが入ったのですか?

いやいや。音楽で生きていきたいなんて、今まで一度も思ったことないですよ(笑)
それこそ、『フリースタイルダンジョン』に出させてもらう前、5年くらい前までは、音楽でお金をもらえる環境ではなかったですから。

そうだったんですね。
ではなぜ、高校生の時から今にいたるまで、20年近くもラップを続けてこられたのでしょうか?

そう言われると、自分でも不思議なんですよ。
俺って、なんでも長続きしないタイプで、仕事なんかも続かずプータローの期間が長かった。だけど、ラップだけはなぜか続いているんですよね。

1つのことをやり続け、さらにそれをお仕事にするのは大変なことだと思いますが…。

うーん…。
「いつでもやめてやる」っていう気持ちでやっているのが、逆に続いてる理由かもしれないですね。

えぇ。「いつでも」ですか?

仕事とかでも、「辞めてやる、辞めてやる」って不満や愚痴を言ってる人ほど辞めないものじゃないですか。

まぁ、確かにそうですけど(笑)

あとは、 ヒップホップと適度な距離感を保てていることが大きいかもしれないです。
俺、 日本のヒップホップの人間関係とかが好きではなくて、入り込みすぎないように距離を置きながら活動しているんですよ。

なるほど。
崇勲さんのヒップホップは、昔から変わらずあくまで自己の「感情表現」の場所ということなのですね。

「俺は俺のままでいたいだけ」と歌う

人見知りを
武器に


ヒップホップの人間関係が苦手とは、具体的にどういう意味でしょう?

ヒップホップ業界の人たちって、もちろん良い人もたくさんいるんですけど、ノリがどうしても自分に合わないと感じるんですよ。「第三の唇」のメンバーも、人との付き合いがうまくできない内弁慶の人たちばかりだったので、ライブをやりたいけどやれないという葛藤が続いていました。

いわゆる「人見知り」だったのですね。
それなのになぜ、フリースタイルの大会にどんどん出ていけるようになったのですか?

当時のフリースタイルの現場を見て、「俺の方がおもしろいし、俺の方が頭の回転が速い」と思ったんです。「負けるわけがない」と、根拠のない自信がありました
春日部の仲間たち以外の人たちと話していると、「なんでこんなにおもしろくないんだろう?」と思うほどだったんです(笑)

「KING OF KINGS 2015」で優勝を果たすなど、数々のMCバトル大会で優秀な成績を収められました。
バトルを機に、「人見知り」を克服されていったのでしょうか?

いいえ、今でも人見知りですよ。だけど、この性格を克服しようと考えたことはありません。
むしろ、この性格があったからこそ、今名前を売ることができているんじゃないかと思っています。

人見知りのおかげ?

人見知りという性格のせいで人と仲良くできないし、コミュニケーションも取れない。これって普通、マイナスに思われるかもしれません。
でも逆に、周りにほめてくれる人が少ないこと、なれ合いがないことは、常に自分のやることに対して緊張感を持てるということでもある。なれ合いが悪いとは思わないけど、俺の場合は逆にこういう環境が自分を育ててくれたんです。

すごい。そういうとらえ方もできるんですね。

「崇勲は凄いって言え」

崇勲さんにとって、『フリースタイルダンジョン』という大舞台はどのようなものでしたか?

大変でした。とにかく「周りに迷惑をかけないように」と思ってやっていましたね。

やっぱり緊張するものですか?

めちゃくちゃ緊張します。
収録が一か月に1回くらいあったので、だいたい1週間前に当日のスケジュール表が送られてくるんです。その表を見ていると、だんだんと緊張してくるんですよ。「どうしようかな、どうしようかな」って。

テレビで見ていても、ピリピリとした緊張感が伝わってきます。

こういうこともありました。
毎回自分の車で収録現場まで行っていたんですけど、高速道路の降り場を間違えてディズニーランドに行ってしまったんです(笑)

それはすごい(笑)
そんな張り詰める緊張感の中、どうやってやる気を出して頑張ってこられたのでしょうか?

これもさっきと同じなんですけど、特にその緊張を克服しようと対策することはありませんでした。「ありのまま」こそ自分のフリースタイルと思って、ステージに立っていましたね。

緊張で足も手もガクガクだったという崇勲(引用:AbemaTV)

でも、崇勲さんのバトルを見ていると、常に堂々としていてるように映ります。

俺はかえって、緊張がなくなったら良くないと思うんです
緊張しているということは「集中力を高められる場面だな」とか、「この緊張感を味わえて幸せだな」と思うようにしてバトルに臨んでいましたね。

マイナスの状況を、どうプラスの考えに変えていくかが重要なのですね。

急かされる時代
必要なのは忍耐力


2019年に2ndアルバム「素通り」を発売。楽曲制作も精力的に行う崇勲さんですが、その「やる気」ってどこから湧いてくるのですか?

生活でも楽曲制作でもそうなんですけど、「やる気」をおこそうと思ったことはないんです。作詞をする時だったら、歌詞が自分の頭の中に降りてくるのを待っています。

「待ち」ですか?

はい。無理やりやる気を出そうと頑張ってみたこともあるんですが、どうもそれだと続かないんですよ。

なかなか思いつかない時って、気持ちが落ち込んだり焦ったりするということはありませんか?

そういう時は、外に出てライブをみたり映画をみたり、行ったことのないところに行ったりするのが良いですよ。出かけてみて得たものがあると、制作意欲って自然に沸いてきたりするものなんですよ
家に引きこもってると、ネガティブになってしまいますしね。

降りてくるのをただジッと待つ

「やる気が出ない」「やりたいことが⾒つからない」といった悩みを抱えている読者のみなさんに向けて、夢に向かって頑張るためのアドバイスをお願いします。

今って、何もしていないと焦らされるような世の中だと思います。でも、何も焦る必要はないんですよ。
「やる気」を出すためには忍耐ですね。 俺も本当に何もしていない時期がめっちゃ長かったですから、耐えていたらきっと大丈夫です。

でも、ただ待っているだけではダメなのですよね?

そうですね。やる気の出ることを「みつけよう」とする精神だけは持っておくべきだと思います。「我慢して待つ」ことと「放棄」することは、まったく違うことですから。

最後になりますが、崇勲さんの今後の活動と目標を教えてください。

引き続き曲を作ること、あとは行ったことのない街に行ってみたい。コミュニケーションは取りたくないけど、会ったことのない人たちに会ってみたいですね。
目標は、もっと女性に曲を聴いてもらうことですかね。今は統計上、97パーセントのリスナーが男性らしいので(笑)

そうなんですね(笑)
ありがとうございました!これからの崇勲さんの活躍を期待しています。

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この記事を書いた人

勝部晃多(かつべ・こうた)

やる気ラボの娯楽記事担当。23歳。ハウストラブルコラムやIT関連のニュースライターを経、2019年8月より現職。趣味はプロ野球・競馬観戦や温泉旅行、読書等と幅広いが、爺臭いといわれるのを気にしているらしい。性格は柴犬のように頑固で、好きな物事に対する嗅覚と執念は異常とも評されている。

 
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