新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
仕事・働き方
2022.03.16
さくらはな。
漫画家。千葉県出身。2013年5月3日に突然将棋を始める。ブログで発表した4コマ形式の漫画『将棋好きになりまして』で注目を集める。将棋フリーペーパー「駒doc.」(ねこまど)にて『将棋好きに成りました!』「本当にあった愉快な話」にて『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』(竹書房)を連載中。共著『将棋「初段になれるかな」大会議』(扶桑社)は、第33回将棋ペンクラブ大賞・技術部門優秀賞を受賞。自身もアマチュア初段を獲得。
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――さくらはな。さんの将棋にまつわるコミックエッセイ、面白いですね。将棋をよく知らなくても、とても楽しさが伝わってきます。
よかった(笑)。ありがとうございます!
――まずは将棋にハマったきっかけから教えていただけますか?
「アメトーーク!」ってご存知ですか?
――テレビ朝日のバラエティ番組ですよね。
はい。2013年に「将棋たのしい芸人」という特集をやっているのをたまたま見まして。そこで芸人の方が、佐藤紳哉七段の将棋番組のインタビュー映像を紹介していたんですよ。それがすごい衝撃的で(笑)。
――さくらはな。さんの漫画で知って観てみました。本当に衝撃的でした(笑)。
相手の豊島将之九段はすごく強い方なんですけど、その方に対して「豊島?強いよね」「だけど俺は負けないよ」「駒たちが躍動する俺の将棋を見せたいね」みたいなことを言っていて、その言い方もすごい面白くて。
しかも、おしゃれカツラをつけられていて、あとで調べてみたら、将棋の番組中にカツラを外して盛り上げたり、女装をしたり、アイドルを目指すと言っていたりするんです(笑)。
将棋ってすごいマジメっぽいじゃないですか。なのに「こんな面白い人がいる世界なんだ!」と衝撃を受けまして、そこから興味を持ちました。
――それで自分でもやってみようと。
はい。昔からゲームは好きだったんですけど、将棋は触れる機会がなかったんですね。じゃあ、ちょっと将棋を覚えてみようと思って、インターネットで駒の動かし方を探すところから始めました。
将棋って小学生の頃は、男の子の遊びという感じだったので、それまで全然やったことがなかったんですけど、そのときに初めて駒の動かし方を知って始めてみたら、すごい面白くて。
――最初から面白かったんですね。
はい。最初はネットでやっていたのですが、リアルな将棋もしたくなって。その頃は初心者講座みたいな教室があまりなかったんですけど、株主優待で有名な桐谷広人七段が初心者講座をやるという情報を見つけまして「初心者」と書いてあるから行っても怒られなさそう」と思って行きました(笑)。
桐谷先生はすごい優しく教えてくださって、教え方も面白いんです。それから将棋教室に通うようになって、大会にも出るようになって、どんどんハマっていきましたね。
――5年くらいかけてアマチュア初段もとられたそうですね。
2018年に棋士の高野秀行六段とライターの岡部敬史さんと一緒に出させていただいた『将棋「初段になれるかな」会議』(扶桑社)という本がありまして。このときはまだ1級だったんですけど、こういう本を出すのだったら、初段になったほうが売れるかなと思いまして(笑)。
将棋「初段になれるかな」会議(高野 秀行 岡部 敬史, さくらはな。/扶桑社)
好評を得てシリーズ化。『将棋「観る将になれるかな」会議』、『将棋「初段になれるかな」大会議』(扶桑社)も発売中。6月にシリーズ新刊を発売予定。
――そんな理由で(笑)。
そうなんです(笑)。子どもではないので、いろいろやることがあって勉強する時間はそんなにとれないんですけど、毎日1時間ぐらいすごい勉強して、なんとか初段になれました。
――将棋の面白さって、どんなところなんでしょうか?
将棋が魅力的なのは、いつも違うところ、ですかね。毎回同じように指しているんですけど、違うことが起こるんですよ、相手によって。それで勝ったり負けたりするんですけど、勝てればもちろん嬉しいですし、負けてもくやしいですが楽しいです。
私は熱しやすくて冷めやすい性格で、翌日には突然興味がなくなったりするのですが、将棋はもう9年くらいやっていますけど、本当に面白くて、全然飽きないですね。
――将棋好きになったきっかけを描いたコミックエッセイ『将棋好きになりまして』をブログで発表されようと思ったのは、何かきっかけがあったのですか?
その頃、私、漫画家としてデビューはしていたのですが、ネームがなかなか通らなくてですね、アシスタントをしたり、広告用の漫画を描く仕事をしていたんですね。
で、ちょっと漫画家をあきらめかけていたのですが、夫の誕生日か何かでワインを飲んでいるときに「そういえば、将棋をやる人のコミックエッセイってないなぁ」と、ふと思ったんです。「私、読んでみたいんだけど、ないなぁ」と。「じゃあ自分で描こう」と思って描き始めました。
――漫画家はいつ頃から目指していたんですか?
小学校6年生のときには、もう漫画を描いていたので、苦節うん十年とかになると思います(笑)。
――じゃあ、学校を卒業した後は持ち込みとかして?
はい、それでデビューもなかなかできなくて、かなり経ってからデビューしたんですが、連載もなかなかとれなくて。そうすると仕事がないわけなので、アシスタントに行ったり、広告用の漫画とかを描く仕事をしていました。そうすると、けっこうヒマなんですよ(笑)。
アシスタントも広告用の漫画も決まった時間でできるので、空いた時間にコミックエッセイを自分の時間で描こうかなと思って、自分のブログで『将棋好きになりまして』を発表し始めました。
――もともと漫画家になりたいと思った子どもの頃は、どんな漫画を描こうと思っていたんですか?
今思えばなんですけど、三国志みたいな壮大なストーリーを考えていましたね(笑)。
――三国志(笑)!では、今でいうと『キングダム』のような?
そうですね、シリアスなストーリーもので、男たちの熱い闘いを描きたいなと思っていました(笑)。でも漫画の学校に通っていたときに「少女漫画を描いたほうがいいんじゃない?」と言われて、少女漫画を描いては、いろんなところに持ち込んでいたんですけど、向いてなくて。
その後、運よく少女漫画誌で読み切りが載ってデビューして、しばらく連載用のネームとかを出していたんですけど通らず、連載には至らなくて。そのうちにその雑誌もなくなりました。
――ああ…。漫画家さんは、連載を通すまでが大変だっていいますもんね。
連載になって、コミックスが出ないと、やっぱり厳しい世界なので。で、アシスタントとかに行っていると、他の人たちが有名な雑誌とかで掲載されたりするんです。
――焦りますよね。
焦ります。焦るけどネームは通らなくて、もう描くのもいやになってきて。それで広告用の漫画とかを描いたりしてたんですけど、そんなときに出会ったのが将棋だったんですね。
――『将棋好きになりまして』を描くときは、どんなモチベーションだったんですか?
私は「将棋はどんなゲームよりも面白い」と思っているので、そのことを伝えたくて、描いてすぐにTwitterにあげたんです。そしたら少し反応があって。それまで自分の漫画を見てもらえる機会がなかなかなかったんで、最初はそれだけで結構満足していましたね(笑)。
ただ、その頃は将棋を始めて2年くらい経っていたので、将棋仲間とかも知り合いにいるわけです。その人たちが「面白いね!」と言ってくれたりして。やっぱりTwitterなので、リツイートとかいいね!とかをしていただくと、いろんな人に見てもらえる機会が増えるので、それでちょっとずついろんな人に見てもらえるようになったかなってかんじですね。
――その後、評判が大きくなって、将棋のフリーペーパー「駒doc.」で『将棋好きに成りました!』として連載開始。2018年には「本当にあった愉快な話」で『将棋好きになりまして!』にも掲載。2019年には、山口恵梨子女流二段の日常を描くコミックエッセイ『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』の連載が始まるなど、どんどん活躍の場が広がっていったんですね。
そうですね。将棋のおかげで、もう本当に何ていったらいいんだろう、ありがたいですね。あのとき、出会えて本当に良かったです。
――『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』は、念願のコミックスも発売されました。
山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々(山口恵梨子・さくらはな。/バンブーコミックス エッセイセレクション)
5月に2巻が発売予定。
嬉しかったですね。この作品は『将棋好きになりまして!』と同じ雑誌なんですけど、その担当の方も将棋が大好きで、その方と話しているときに山口先生の話になりまして。じゃあ、えりりんを主役とした漫画を描いたら面白そうじゃない?ということで、やってみようということになりました。
――文春オンラインでも特集されるなど、多くのメディアで話題になっています。どんなことを描きたいと思ったんですか?
女流棋士ってあんまり知られていなかったので、そのことをいろんな方に知っていただきたいなと。あと、この連載を始めた頃は、将棋ブームが起こる前だったんですね。藤井聡太竜王があんなに活躍される前だったので、将棋のことをもっと知っていただきたいなという思いもありました。
――漫画のえりりんは、すごくチャーミングで面白いですね。
あのままの方ですね。顔とかも小さくて、モデルさんみたいな美人さんなんですけど、全然飾らない、気さくな方で。いつも一生懸命なので、見ているのも楽しいし、応援したくなるかんじです。
――将棋の世界を取材されるようになって、改めて感じたことなどありますか?
プロの方は素敵な方ばかりで、結構たくさんの方にお会いしてるんですけど、嫌な人に会ったことがないです。なるのが難しい職業なのに、控えめで、やさしくて。本当に人柄が素晴らしくて。
プロになる方は、小学生の頃から将棋をやられている方がほとんどだと思うので、やっぱり小さい頃から礼儀などに厳しい環境で育っているからかもしれないですね。それでいて、天然で面白い人がすごく多いので、将棋のそういう魅力も描いていきたいです。
――ちなみに、もともとの夢だった三国志みたいな壮大なストーリーとはちょっと違う、将棋のコミックエッセイという分野でブレイクされたことについては、どのように思われていますか?
将棋って、ちょっと三国志っぽいと思うんです(笑)。
――あっ、そういえば、将棋も三国志も、王を守る国と国との戦いですね。
そうなんです。なので、そんなに外れていないと思っています。いったん少女漫画に行ったときよりは、だいぶ近くなりました(笑)。
――やる気の出し方についても、アドバイスをいただけますか。さくらさんが将棋に出会えたように、自分が夢中になれるものに出会うには、どうしたらいいと思いますか?
常に好きなものを探すこと、ですかね。それほど偉そうには言えないんですけど、「これはどうなんだろう?」という興味を持つことが大事なのかなと思っています。
――さくらはな。さんも将棋に出会う前は、いろんなものに興味を持たれた?
そうですね。競馬とかテレビゲームとか、いろんなものを好きになりました。韓国ドラマにハマって、北朝鮮との境界線まで行ったこともあります(笑)。
――北朝鮮!すごいですね(笑)。
『冬ソナ』を見て「面白いな〜」と思って、その後たくさんのドラマを観て、わざわざ行ってしまいました(笑)。ただ、熱しやすく冷めやすいので、ある日突然冷めて、ヒマになってしまいまして。「何かほかにないかな」と。
で、私はヒマなとき、漫画ばかり読んでしまうんですが、漫画だけ読んでる人の漫画ってつまらないと思っていて。どこかで見たような漫画になっちゃうので。
なので、できれば漫画以外のものから吸収したいなと思っていまして。映画とかも見ていたんですけど、なんか違うなと。そんなときに出会ったのが、将棋だったんですよ。
――なるほど。さくらはな。さんは、行動力ありますね。好きなものを探して、行動して、実際にやってみる。将棋に夢中になったのも、将棋教室に行くようになったのが大きかったんですよね。
将棋にハマれたのは、周りの人の存在が大きかったですね。教室とかに行って友達ができると、新しい情報が入ってくるじゃないですか。「ここで練習会してるよ」とか「こういう大会があるよ」とか。大会が終わったら「飲み会やるよ」みたいな。それで飲み会で会った人と、また「今度はこっちの大会があるから一緒に出てみない?」とかなって、それでだんだんハマっていったかんじでしたね。
――そうすると、やる気もどんどん出てくる?
はい。将棋仲間がいてくれたおかげですね。たぶん家でひとりでずっと将棋を指していたら、今はもうやってないと思うんです。友達ができて誘ってくれたり、「この人に勝ちたい」と思ったり、「一緒に将棋大会で頑張ろう」みたいのがあったおかげで続けていられるんだと思っています。
――連載やコミックスという漫画家としての夢も実現されて、今どんなお気持ちですか?
コミックスを出せたのが、特に嬉しいですね。コミックスは今なかなか出ないので、出せるとは思ってなかったです。将棋と出会ったおかげですから、いつか恩返しをしなきゃと思っています。
――では、今後の夢や目標は?
今ってやっぱり藤井聡太竜王がすごいブームで、その部分を取り上げられることがすごい多いと思うんですけど、将棋自体が面白いゲームであることを、もっと伝えられたらいいなと思っています。
将棋って、特に女性には、ちょっととっつきにくい世界だと思うんですけど、やったらすごい楽しいんですよ。私はゲームが好きだったので、マリオとかドラクエとかFFとか、いろんなゲームをやってきましたが、その中でも将棋がいちばん面白いと思っています。
今後はコミックエッセイだけでなく、オリジナルの作品でも将棋の魅力を描いてみたいですね。
――今後の作品も楽しみにしています。本日はありがとうございました!
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この記事を編集した人
タニタ・シュンタロウ
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。著書に『スローワーク、はじめました。』(主婦と生活社)など。