子育て・教育

【教育】家庭で知育、やってみよう|わが子のやる気を目覚めさせる「知育のヒケツ」(3)

2019.07.5

【今回のポイント】
 知能研究所の市川希所長に、子どものやる気を目覚めさせるための「コツ」や「奥の手」について、3回に分けてお話をうかがいます。
 最終回は『家庭でできる知育』です。

第1回はこちら第2回はこちら

知能研究所 所長

市川 希 先生

いちかわ・のぞみ●脳生理学・教育学・心理学などを基礎に、人間の知能および知能幼児教育学の研究を重ねている知能研究所の所長として、全国約130教室で使われている知研プログラムの研究開発に携わっている。



ドリルの効果的な使い方

──まだ教室に通っていないお子さんたちが、知育ドリルを使うときに、学習を効果的にするポイントはありますか?

市川 まず子ども向けのドリルは、いくつか種類やジャンルがあります。
ひらがなや計算を学ぶ「小学校の先取り系」
推理や読解、思考力を育てる「パズル系」
あとは工作や鉛筆の使い方、生活習慣を身につけることを複合した「複合系」もあると思います。

ひらがなや計算は、子どもが興味を持ってから始めてもらえればいいと思います。
生活の中で自然にひらがななどの文字を見る機会があると思うので、そこで子どもが興味を持ったときに、ひらがなドリルをやるという順番が良いでしょう。

生活の場に「ひらがな」は転がっている

──最初にドリルではなくていいんですか?

市川 まずは、子どもたちが考えるのが楽しいと思ってもらうことを考えてほしいです。
そうなれば、後々の成長にもつながります。これを習慣づけてもらいたいですね。

──楽しいと感じてもらうにはどうすればいいでしょうか?

市川 例えば、先生が柿の絵が描かれたカードを持って、「これは柿っていうんだよ?」と言い、子どもたちに柿について知っていることを言ってもらったり、先生の知っていることをお話したりします。そして、その場では絵のカードと一緒に、文字の書かれたカードも出します。
その過程で、徐々にひらがなに興味を持つようになります。

──パズル系はどのようなものでしょうか?

市川 パズル系のドリルは、同じパターンが並んでいるものと違うパターンが並んでいるものの2つがあると思うのですが、違うパターンが並んでいる方がおもしろいと思います。

ただ、気をつけないといけないのは、子どもは興味のある・なし、得手・不得手が出てきたときに、苦手なものからやってしまうと嫌になってしまいます。
幼児の場合は、まず楽しくやることが基本なので、得意なものからやるという考え方でいいと思います。

「楽しい」がベースとなる

気長にやりましょう。気長に

──「できないからダメ」「興味を持たないからダメ」と決めつけるのも、良くないことですよね。

市川 そうですね。「いま・ここ」で「できない」「興味を持たない」ことに気を取られる必要なんてありません。3カ月くらい過ぎたころに、またチャレンジすればいいのです。

子どもたちは気分屋なものですから、気長に接してあげてください。2歳ぐらいでしたら、問題を解かなくても「これなんだろうね?」と一緒に見ながら、お話をするだけでも良いと思います。

あと、「できた」「できなかった」と書かれたシールがあるドリルが多いと思いますが、これもお母さんが貼るのではなく、子どもに貼らせてあげてください。
指の運動になりますし、何より「シールを貼ること自体楽しい!」と思わせられると、とても効果的です。

ここでも、1回で「できる」「興味をもってくれる」ことを期待するのではなく、気を長く持って楽しみながら学んでいただきたいですね。

遊びが未来の学びにつながる

──その他のドリルはどうでしょうか?

市川 年長さんになると、小学校に入るための生活習慣、えんぴつの持ち方、お箸の持ち方から季節をまとめた図鑑、動物カードといった少し具体的なことをするドリルがあると思います。

これを使うときは、シチュエーションを大事にして欲しいです。家で一緒に遊ぶため、電車やバスの中でおとなしくしてもらうためなど、何を目的にするかを意識して選んでもらえればいいんじゃないでしょうか。

──最近では、幼児教育用のアプリも増えてきました。こういったアプリを使うときに注意しないといけないことはありますか?

市川 アプリの中には、動物の鳴き声の音声も一緒に入っているなど、紙ではなかなかふれられない、おもしろいものがたくさんあります。

ただ幼児の間は、「スマホにさわらせたくない」と考えているご家庭も少なくないと思います。無理にアプリを使う必要はないので、ご家庭の考え方に合わせて使うか使わないかを決めてもらえればいいと思います。

イマドキの子、アプリ大好きです

また、動物を扱ったものを例に挙げると、アプリでは設計上動物を一体ずつ見ることになるものが多いですが、カードは自分で並べたり、分けたりできるといった特性に違いはあります。
家でじっくり取り組むならカードの方が遊び方は広がりますし、アプリは、電車などに乗っているときには使いやすくていいのではないかなと思います。

興味を引き出すポイントは
まんべんなくと、いつでも

──ドリルにしろ、アプリにしろ数をやったほうが良いのでしょうか? あるいはひとつの教材の中に色々な要素が入っているものが良いんですか?

市川 基本的には、まんべんなく体験させてあげてください。
同じパターンの問題だけでまとめるのではなく、さまざまな形の問題がひとつのものにパッケージされているものを選んだ方が、子どもの好きなものや興味を持つものを把握するのにわかりやすいと思うので、オススメです。

──興味を持てる“フック”を、たくさん設けるわけですね。

市川 そうですね。いろいろなものをさわって、経験して。いま興味を持っていなくても、いつでも子どもが手に取れるようにしておくのが良いです。 部屋の奥に閉まっておくのではなく。

でも、配置場所とかまで頑なに考えなくても良いですよ。おもちゃと一緒に置いておくのが良いかもしれません。
ドリルも絵本みたいなものだと考えて、目に入るところにあれば、何かのタイミングで興味を持ってもらえます。
りんごに興味を持ったら、りんごの絵が書いてあるドリルにちょっとふれてみるとかですね。

いつか興味を持ったときのため
まんべんなく、いろいろ
いつでも手に取れるように

市川 人間はそもそも考えることが好きなので、子どももいずれは興味を持ってくれると思います。どうしてもドリルに興味を持たないのであれば、手を動かすものから入ってみるのが一番だと思いますね。

──子どもの興味を一番に考えて、無理強いしないのがポイントになりそうです。

市川 そうです。でも、家庭では、お母さん、お父さんの負担にならないものにしてください。「あれもこれもやってあげよう」となるのは重荷になってしまいかねないので、気長にがんばりましょう。

──ありがとうございました。

 
 

3回にわたり、知育の心構えとコツ、そして知育玩具の選び方までをお届けしました。お子さんとのふれ合い方の参考にしてみてくださいね!


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