新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
子育て・教育
2019.03.26
【今回のポイント】
・豊富な経験を“親子で”楽しむことの大切さ。
・まずは保護者がさまざまな経験を楽しもう。子どもを巻き込もう。
・子どもの探究心が、興味・関心を広げ伸ばす。
前回は、子ども自身が自らアクションを起こすまで「ただ待つ」という姿勢の大切さについて述べました。しかし、もうひとつ「ただ待つ」姿勢とならんで、最難関大学の学生達に見られた特徴についてお話したいと思います。それは、幼少期からさまざまな経験や豊富な体験を重ねてきたことです。
「幼いときの経験」というと、いわゆる早期教育であったり、子ども向けのお稽古事や習い事を経験させることだと、ついイメージしてしまうのではないでしょうか。
しかし、そうではありません。最高位大学の学生がいる家庭の多くでは、保護者のみなさまが自分自身の趣味や興味、たとえば釣り、旅行、楽器の演奏、スポーツ、美術館や博物館めぐり、模型やログハウスの制作などを、子どもと一緒に楽しんでいたようなのです。
そうした保護者の方々は、子どもと一緒に、趣味の活動などを楽しみながら、魚や川・海のこと、楽器のルーツや演奏の愉しみ、スポーツのルールやコツ、絵画や彫刻の見方、木が育つ森林や工具のことなど、その面白さや魅力を子どもに説明し、子どもと共有していたようです。子どものほうも、普段の生活ではなかなか体験できない経験や活動から、視野を広げることができたと言います。
それのみならず、保護者からさまざまな話を聞くことで、経験した内容が知識と結びつき、「生きた知識」になったようです。社会現象も自然現象も、知識や経験と結びつくと、「死んだ知識」ではなくなるのです。
それは、「もっと上手にやる方法はないかな?」「あの現象はどうして起きるのだろう?」という子ども自身のさらなる探求心につながっていきました。そして、浮かんできた謎について家庭で保護者と一緒に調べたり、考える機会をつくっていました。その経験が、のちの学生生活に役に立っているのだと考えられます。
もちろん、これはひとつの理想かもしれません。また、こうしたからといって、すべての子どもの学習意欲や成績の向上につながるとは限りませんし、必ず子どもを最難関大学に入学させるための秘訣やコツとまでは言い切れないでしょう。
ただ、保護者のみなさまによる「ただ待つ」姿勢も、経験や体験の共有も、お子さんとの絶妙な距離の取り方や関わり方を示しているように思います。そしてこのポイントにこそ、お子さん自身の興味・関心を広げ伸ばすためのヒントが隠されているように思うのです。
【連載】2020年、子どもたちのアクティブな学びを考える
1. 未来を担う子どもたちに、これから「求められる力」とは
2. 思考力や探究心を育むには
3. 習い事やお稽古事は早くからやらせた方がいい?
4. 「勉強しなさい」は効果的?
5. 経験や体験を親子で共有し、子どもの興味・関心を広げよう。
6. 情けは人のためならず~「みんなの学校」のために~
小針 誠
青山学院大学 准教授
こばり・まこと●1997年、慶應義塾大学文学部卒業。2005年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士。同志社女子大学准教授を経て、17年、青山学院大学教育人間科学部准教授に就任。現職。
教育社会学や教育社会史を専門とする。著書『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』(講談社現代新書)。