新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
子育て・教育
2019.05.31
【今回のポイント】
・適切な練習で伸ばしたいのは「手先の器用さ」と「身体全体の器用さ」。
・子どもに自由に工夫させる環境をつくろう。
・競い合いが、試行錯誤を生み出す。
東京大学大学院
名誉教授
深代 千之 先生
ふかしろ・せんし●一般社団法人日本体育学会会長。日本バイオメカニクス学会会長。秩父宮章受賞(2018)。トップアスリートの動作解析から子どもの発育発達まで、幅広く研究する日本スポーツ科学の第一人者。
幼児・小学生向けスポーツ教室「忍者ナイン」のプログラム監修にも携わっており、トップアスリートのメソッドを数多くの子どもたちに伝えている。
川崎:前回は、生まれつきの運動オンチは存在しないこと、運動がうまくなるためには脳の中に神経パターンをつくることが重要だとうかがいました。
先生、そのための練習には何が効果的なのでしょうか?
深代:たくみさには大きく分けて、二つあります。一つは、手先の器用さ。もう一つは、身体全体の器用さですね。
川崎:手先の器用さというと、前回の「箸」のようなものでしょうか?
深代:そうですね。
川崎:箸のほかには、何を練習するといいでしょう?
深代:何かグッズを使うと良いですよね。お手玉、ベーゴマ、けん玉といったものです。
川崎:ふむふむ。遊び方にコツはありますか?
深代:勝負する、競い合う要素があった方がいいですね。昔、ベーゴマとかビー玉で遊んでいたんですけど、下手だと負けて、コマやビー玉を取られちゃうんですよ。取られたくないから、練習するんですよ。
川崎:負けたくないというのは、やる気になりますね。
深代:小さいとき、そういう風に遊びませんでした?
川崎:やりました。親戚とか友達と容赦なく奪い合ってましたね…。…ええ、よく泣かせたり泣かされたりしましたが…。子どもの遊びって、容赦ないですから…。
深代:ちょっとコツを身につければ競い合えるようになるんですけど、そこに到達するまでが大変ですね。うまくできない子には、最初に大人が適切なやり方を教えるのも大切です。少しできるようになれば、あとは自分でやるようになりますから。
川崎:確かに、「できる!」という感覚を一度つかめると違いますよね。
深代:友達との勝負も大事ですが、自分との勝負というのも大切です。つまり、どのくらい以前の自分よりもうまくなっているかですね。
川崎:この点、成長がハッキリ分かる遊びは良いですよね。
深代:例えば、けん玉だとボールを乗せられるようになったら終わりじゃなくて、「いろいろと回転させてみよう」「利き手じゃないほうでやってみよう」といったふうに、どんどん遊びの幅を拡げられるわけです。そうしてどんどんうまくなっていくのが分かると、もっとやってみたいという気持ちが出てきます。
川崎:自分で新しい技を編み出しちゃったりしますよね。それで、編み出した技に好きな名前をつけてみたり。好きなキャラクターの名前をつけたり、自分の名前をつけたり。
深代:そういうのがいいんですよ。
川崎:一方、スポーツだとそうした成長ぶりを実感するのに少し時間がかかる印象です。
深代:走る、跳ぶ、投げる、打つといった動作は、上達の度合いがあまり目に見えにくいですからね。ただ、走り方を身につける、投げ方を身につけるというのと、けん玉やベーゴマができるようになるというのは、本質的には変わりません。
川崎:どちらも脳の「神経パターン」ですね。
深代:そのため、スポーツがうまくなりたい人は、まず手先の器用さを身につけることに挑戦したら良いと思うんです。
まず手先を動かすことで「うまく身体が動く」という感覚を身につけてもらってから、身体全体で、走る、跳ぶというところに応用すると、モチベーションを高く持ってもらえるんじゃないかと思います。
川崎:次は、身体全体の器用さについて質問させてください。
深代:どうぞ。
川崎:身体を動かす場所というと、まずイメージされるのが公園です。
深代:特に、お子さんが小さいとそうでしょうね。
川崎:公園にはさまざまな遊具があります。ジャングルジムやブランコ、シーソーといったものですね。
でも、いろいろな公園にさまざまな種類の遊具があって「どういったものが子どもにとって良いんだろう」と疑問に思うことがあります。
子どもの器用さを育てるために、どんな遊具を使ってもらうと効果的なんでしょうか?
深代:遊具は使わないのがいちばん良いですよ。
川崎:えっ。
深代:何もない広場で遊ばせるのが理想的です。
川崎:えっ(汗) …それ、子ども、飽きたりしませんか?
深代:何もないからこそ、子どもは工夫します。昔は遊具なんて一つもなくて、缶一つで缶蹴りをやったりしていたわけです。場所に固定された遊具があると、子どもたちの遊びも固定されてしまうんです。
川崎:なるほど…。
川崎:正直なところ、私自身は公園にあたりまえのように遊具がある世代でして、何となく「公園は遊具を使って遊ぶものだ」という思い込みがあった気がします。
深代:固定観念はあるかもしれません。そういえば、以前幼稚園の方が相談に来て「園内にどんな遊具を置いたらいいと思うか」と聞かれたことがあります。「何も置かない方が良いです」と答えたら、あ然となって帰っていきましたが。
川崎:幼稚園の先生方の中には、遊具などである程度子どもの遊び方に「ワク」や「カタ」といったものを作らないと、やりにくいという気持ちはあるのかもしれません。もちろん、子どもたちに自由に遊ばせようという先生方も多いと思いますが。
深代:決まった遊び方があると、園児たちをコントロールしやすいですからね。多くの子どもを預かっている以上、安全性を担保しなければいけませんから。
川崎:子どもたちの工夫を後押しできるような遊具があれば良いのですが。
深代:その意味だと、鉄棒は良い遊具だと思います。先ほどのけん玉と同じように、練習すればするほどさまざまな遊び方ができるようになりますね。
川崎:いずれにしても、子どもが自分で工夫できるような環境づくりが大切なんですね。
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この記事を編集した人
川崎 健輔
1987年生まれ。教育業界のWeb編集者です。2歳息子の育児、奮闘中。小学生時代はゲームボーイと受験勉強ばかりやっていました。最近はリモートワークが続いているので甚平を仕事着にして頑張っています。バームロールを与えられると鳴きます。
(Twitter ▶ @kwskknsk)