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子育て・教育
2019.05.24
【今回のポイント】
・運動オンチは遺伝するの? …答えは明確!
・できる子は、練習することで身につけている。
・適切な練習をすれば、誰でも上達できる。
こんにちは。やる気ラボの川崎です。
突然ですが、自分はかなりの運動オンチです。
スポーツクラブや部活に入ればビリや補欠はあたりまえ。
中学はマジメに野球部に通っていたのですが全然身につかず。高校の授業でちょっとたまに遊んでる程度のスポーツ万能なイケメンにボロ負けし、それ以来やらなくなりました。
そんな私にも息子(1歳半)がいるのですが、父に似ず、身体を動かすのがかなり大好きなようです。
日曜日にリビングでダラダラ過ごしていると玄関で自分の靴を履き、私の靴を持って歩いてきて「ほら出かけるよ父ちゃん」と言わんばかりに渡してきます。土足で。
公園で嬉々として駆けまわる息子といっしょに遊んでいると、「ひょっとして将来はアスリートか?」などと妄想するのですが、一方で「運動オンチな父ですまんな…遺伝してないといいんだけどな…」と心配もしてしまいます。
実際のところ、運動オンチは遺伝するのでしょうか? どんなにやる気があっても、向いていないことはできないものなのでしょうか?
遺伝してしまうのだとしたら、なんとか治す方法はないものでしょうか?
今回、東京大学大学院のスポーツバイオメカニクスの第一人者、深代千之名誉教授に教えていただくことになりました!
東京大学大学院
名誉教授
深代 千之 先生
ふかしろ・せんし●一般社団法人日本体育学会会長。日本バイオメカニクス学会会長。秩父宮章受賞(2018)。トップアスリートの動作解析から子どもの発育発達まで、幅広く研究する日本スポーツ科学の第一人者。
幼児・小学生向けスポーツ教室「忍者ナイン」のプログラム監修にも携わっており、トップアスリートのメソッドを数多くの子どもたちに伝えている。
川崎:本日はよろしくお願いします。
深代:よろしくお願いします。
川崎:さっそくですが、運動が苦手だった保護者からすると「親の私が運動オンチだったんだから、きっとうちの子も同じよね…」と思う方は少なくないようです。
実際のところ、親から子どもに運動能力が遺伝することはあるのでしょうか?
深代:ありませんよ。
川崎:えっ(きっぱりと言い切られてしまった…)…ええと、運動がちょっと苦手とか、そのくらいは…。
深代:まったくありませんよ。
川崎:すみませんでした! 反省します!!
深代:…?
深代:親の遺伝によって子どもが運動オンチになるということはありません。すべての子どもたちは、スポーツ動作がうまくなる可能性を秘めています。
川崎:運動オンチの自分にとってはこれ以上ない朗報です!
…ただ、実際のところ運動が得意な子と苦手な子は分かれてくるものですが、この違いはどこから来ているのでしょう?
深代:新しい動作でもすぐにできる子というのは、必ず過去に似たような動作を経験しているんです。過去に行った練習によって動き方を獲得し、それを無意識に応用しています。
川崎:運動の上手い・下手は、先天的なものではなく、あくまで後天的なものだと。
深代:そうです。適切な練習ができたかどうかということで変わってきます。
川崎:そうなんですね…。
深代:そもそも、「運動が上手い」とはどういうことだと思いますか?
川崎:え。…身体が強いとか、筋肉がすごいとかでしょうか?
深代:一般的にはそういうイメージをもたれがちですが、上手い・下手で本当にカギを握っているのは筋肉ではなく「脳」なんです。
私たちがスポーツ選手を見ているとき、野球でアクロバティックな体制でボールをキャッチしたとか、サッカーできれいなドリブルでディフェンスを抜き去ったとか、そういった見事なパフォーマンスを目にして「上手い」と感じます。そうしたスーパープレイは、筋力もありますが、「自分の身体をたくみに動かす能力」をベースにしたものです。だから、身体を動かす指令を送る司令塔たる脳こそが重要なんです。
川崎:確かにそうですね。腕立て伏せや腹筋をして筋肉を強くしたからといって、それだけでボールが捕れるようになるわけではありません。重要なのは脳の力を伸ばして、身体をうまく使うということなんですね!
深代:はい。そして、運動神経は脳から筋肉に行く途中に必ずあるもので、生まれつきの差はありません。運動神経を通る指令の速度に個人差はなく、遺伝によって変わることもないんです。ですから、「生まれつきの運動オンチ」や「運動オンチの遺伝」は存在しないのです。
しかし、動作の上手い・下手は事実としてあります。それは「脳にそれぞれの動作の運動パターンをつくったかどうか」ということになります。
川崎:どうすれば脳の能力を発達させられるのでしょうか?
深代:大事なのは練習を重ねることです。
私たちが「箸」を使えるようになった時のことを思い出して欲しいのですが、最初は指をうまく操れず、使いこなすことができなかったのではないかと思います。
しかし、練習を重ねるうちに少しずつ慣れてきて、ある日突然、コツをつかんでできるようになった。これは、脳の中で指を適切に動かすための神経パターンができあがったということなんです。そして、箸の例で分かるように、一度身につけるとそう簡単には忘れません。
川崎:練習によって箸を使えるようになるのも、野球のボールがうまく捕れるようになるのも、そのための神経を脳につなげるという点では同じことだということですね。
深代:そうですね。この練習を適切に積み重ねられる「環境」をいかに整えるかが、子どもを「運動オンチ」にしないためには大切なのです。
川崎:(帰ったら息子と箸の練習しよう)
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この記事を編集した人
川崎 健輔
1987年生まれ。教育業界のWeb編集者です。2歳息子の育児、奮闘中。小学生時代はゲームボーイと受験勉強ばかりやっていました。最近はリモートワークが続いているので甚平を仕事着にして頑張っています。バームロールを与えられると鳴きます。
(Twitter ▶ @kwskknsk)