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「子育て心理学」の連載では、子どもの成長&やる気アップに役立つ心理学知識を、子育てにお悩みの保護者の皆様に向けて分かりやすくお伝えしています。 第6回は「勉強をする価値とは何か」がテーマです。教育心理学者エクルズの「課題価値」という考え方をもとに、子どもの「どうして勉強しないといけないの?」という問いにどう答えるべきか考えます。
「どうして勉強しないといけないの? 」
ふと子どもが尋ねてきます。簡単なようで実は究極の問いですよね。
「子どものうちは勉強するものなの」
「分かったり、できたりしたら楽しいでしょ」
「大人になってから仕事に役立つわよ」
いろいろと答え方はありそうです。
「どうして勉強しないといけないのか」という問いは、難しいものだと感じます。自分の価値観を問われているような気がしてしまいますね。そう、勉強をする価値が何かあるはずなのです。
勉強する価値は1つだけと考える必要はありません。エクルズという教育心理学者は、やる気のもとになるものとして、課題価値という考え方を提案しました。
課題価値とは、「なぜ自分は学ぶのか」という価値観のことです。人によってどのような課題価値はもつかは異なります。エクルズは、課題価値には大きく分けて興味価値、獲得価値、実用価値の3つがあるとしています。
興味価値は、学ぶことに対する興味や楽しさに関する価値です。「学ぶことに興味がある」「勉強することが楽しい」といった気持ちに基づいています。
獲得価値は、成長や上達に関する価値です。「勉強しておくと自分の成長につながる」「勉強すれば上手になれる」といった気持ちと結びついています。
実用価値は、実用性に関する価値です。「これを学んでおけば実際に生活のなかで役に立つだろう」という考えとつながっています。
子どもの側から見ると、勉強することの価値は年齢によって少しずつ変わっていくようです。
大まかに言うと、小学校の小さい頃は興味価値がやる気につながりやすく、小学校でも高学年や中学生になるにつれて実用価値がやる気を支えるようになっていきます。小学校1年生の子が生活科で虫やどんぐりに夢中になっている様子、あるいは中学生が自分の将来を思い描きながら英語の勉強をしている様子を思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれません。
ただ、多くの子どもはどこかで「どうして勉強しないといけないのか」という問いに悩みます。ときには、勉強することの価値や意味について迷うこともあるでしょう。そんなとき、まわりの大人はどう応えてやればいいのでしょうか。
いくつかの実験で、課題価値のなかでもとくに実用価値を高めることがやる気にとって効果的だということが分かっています。学習内容について、日常とのつながりを子どもに考えさせたり、あるいは親子で話し合ったりすると、興味や成績が高まることが明らかにされています。「勉強したことが自分の生活とつながっている」と感じることが、やる気を高めるのです。
「どうして勉強しないといけないの? 」と問われたら、どうしましょうか?
もちろん、それがとても切実なSOSの場合は、よくその子の話を聞いて状況を探ってみる必要があります。ただ、日常的には、「勉強したことが、どんな風に生活とつながっているか」を伝えてあげるのがよさそうです。
「そんなこと言われても困るわ」と思った方もいるかもしれませんね。確かに、学校などで勉強することのなかには生活とのつながりが見えにくいものも少なくありません。でもよく見てみると、実は日常生活とつながっているものが、見つかったりします。
たとえば、「スマホの料金プランは関数だよね」とか「ジェットコースターって、運動エネルギー、すごそうだね」だとか、よく探してみると日常生活と勉強することのつながりが見えてきます。あるいは、授業で習った選挙の仕組みをもとに、衆院選のニュースを一緒に見てもいいかもしれません。
ニュースの出来事や身近な話題について、「これ授業で聞いたことあるよね」とか「これ教科で言うと何かしら」というように、つなげて考えてみる習慣をつけることが大事です。
あるいは、大人側が伝えるだけでなく、子どもの側から話題がでてくることもあるでしょう。「今日、学校でこんなこと習ったんだけど」と言ってきたら、しめたものです。「それって…」と話を広げてやることができます。
勉強したことと生活とのつながりを、子どもと一緒に考えてみる。そんなコミュニケーションを普段からとれるといいですね。
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(6) 子どもの「どうして勉強しないといけないの?」にどう答えるか
この記事を書いた人
岡田 涼
香川大学教育学部 准教授。2008年、名古屋大学大学院教育発達科学研究科修了。11年、香川大学教育学部講師就任。13年、香川大学教育学部准教授、香川大学大学院教育学研究科准教授就任。現職。友人関係場面における自律的動機づけの役割や、学習場面における自律的動機づけなどを主な研究テーマとしている。