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「子育て心理学」の連載では、子どもの成長&やる気アップに役立つ心理学知識を、子育てにお悩みの保護者の皆様に向けてわかりやすくお伝えしています。 第5回は「子どもはなぜ勉強していないと言ってしまうのか」がテーマです。「セルフ・ハンディキャッピング」という考え方をもとに、子どもが「勉強していない」と言ってしまう理由について考えます。
「今日テストなのに、ぜんぜん勉強していない、どうしよう」
「えー、私もぜんぜんやってないから大丈夫だよ」
中学校などのテスト前によく聞かれる会話です。これを見て、どう思いましたか?「ああ、そんなこと言っている人いたな」とか、「私もけっこう言っていたかも」と懐かしく思ったでしょうか。
このセリフのおもしろいところは、訊かれていなくても言ってしまうところです。「勉強した?」と尋ねられなくても、テスト前になるとふと口をついてでてしまいます。実際にはある程度勉強していても、「勉強していない」とまわりの人に言いたくなってしまいますね。
なぜ「勉強していない」と言いたくなってしまうのでしょうか?
「勉強していない」とまわりの人に言うことは、セルフ・ハンディキャッピングの一種と考えることができます。セルフ・ハンディキャッピングというのは、何かをする前に、自分にハンデがあるとまわりに伝えることです。
テストを受けるにあたって、勉強していないことは大きなハンデです。そうしたハンデが自分にあることを、テストを受ける前にまわりに伝えようとするのがセルフ・ハンディキャッピングです。
ハンデがあることを伝えるだけでなく、実際にハンデになるようなことをあえてやってしまうこともあります。
「勉強していない」の場合は、実際には勉強していることが多いかもしれません。でも、テスト前日に限って徹夜で動画サイトを見てしまったり、いまやらなくてもいいような部屋の片づけをしてしまったりして、本当にノー勉でテストに臨んでしまうこともあるでしょう。これもセルフ・ハンディキャッピングに含まれます。
なぜ人はセルフ・ハンディキャッピングを行うのでしょうか?
セルフ・ハンディキャッピングは、自尊感情を守るための方略の1つだとされています。年齢が上がっていくにつれて、子どもは能力と努力を区別して考えるようになっていきます。つまり、テストなどでいい点をとったら、「がんばったから」なのか、「頭がいいから」なのかを分けて考えるようになっていきます。
逆も同じで、テストができなかったりすると、「がんばらなかったから」と「頭がよくないから」を分けて考えます。そうすると、がんばったのにテストができなかった場合、「頭がよくないから」ということになってしまいます。
これは自分にとってのダメージが大きく、自尊感情が傷つきます。そうなってしまうのを避けるためには、「がんばらなかったから」という余地を残しておきたい。そうして、テスト前に「勉強していない」と口にすることになります。
つまり、「勉強していない」の背景として、「失敗して自尊感情が傷つくのを避けたい」という動機がはたらいているのです。
さて、お子さんが「勉強してない」と言っていたら、どうしましょうか?
「ちゃんと勉強しないとだめじゃないの」と返すのは、どうもよくなさそうですね。「そんな言い訳みたいなこと言わないの」と言ってしまうのも、反感を買いそうです。
こう返すのが正解だというのはありませんが、自尊感情を守ろうとしているという視点で見てあげるのが必要です。「自分に自信をもてていないのかな」とか、「勉強以外のことで、何か自信を無くすようなことがあったのかな」といったように、その子の全体的な自尊感情の状態に注目したいところです。
本当にまったく勉強をしていない状態なら困りますが、実際は努力を隠そうとしている場合が多いのではないかと思います。「まあ、テスト勉強も大変よね」と返しておいて、よくできたときには「がんばったじゃない」というように、自然にがんばりを認めてあげるというのがよさそうです。
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(2) 子どもの才能がわかる「8つの知能」とは
(3) 子どもの「自尊心」をどう育むか
(4) 子どもの「自律的な学び」をどう促すか
(5) 子どもが「勉強していない」と言うのはなぜか
(6) 子どもの「どうして勉強しないといけないの?」にどう答えるか
この記事を書いた人
岡田 涼
香川大学教育学部 准教授。2008年、名古屋大学大学院教育発達科学研究科修了。11年、香川大学教育学部講師就任。13年、香川大学教育学部准教授、香川大学大学院教育学研究科准教授就任。現職。友人関係場面における自律的動機づけの役割や、学習場面における自律的動機づけなどを主な研究テーマとしている。
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