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子育て・教育
2020.10.16
【子どもの自律性支援のポイント】
・ 「なぜやる必要があるのか」「やるとどういう効果があるのか」理由を説明してあげましょう
・ 『尋ね』、『待ち』、『選択肢』を与え一緒に考えましょう
・ 子どもの選択には支持して、応援をしましょう
・ 大人自身が自律性のお手本 になりましょう
【教育】【中学生】【高校生】【保護者】
保護者として、あるいは教師として、子どもにしっかり勉強をして欲しいと願っていながら、なかなか子どもがやる気を出してくれない……そんな悩みをかかえることは、おそらく少なくないでしょう。
今回の連載では、塾講師としての豊富なキャリアを持ち、現在は高知工科大学で教育心理学の教育・研究に携わる鈴木高志先生に、やる気のメカニズムをふまえた子どもへのアドバイスやサポートの方法をうかがいました。子どもが「やってみよう!」「できた!」と思えるようになるヒントを紹介していきます。
子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる
悩める子ども応援団のみなさまへ
#1 子どもをやる気にさせる! バンデューラの「結果期待」と「効力期待」
#2 子どもの「自己効力感(効力期待)」の育み方。元塾講師の心理学者が解説
#3 中学生を勉強へのやる気にさせる「マスタリー目標」。高校受験でも目標を見失わないために、望ましい“できる”の種類
#4 小中学生の勉強へのやる気を引き出すコツ。「学び」を「あそび」に変えよう!
#5 親子の会話を見直そう!子どもの自律性の育み方
今日は、内発的動機づけと並んで自発的な頑張りを引き出す力を持つ、「面白くなくても大切!」「自分の夢のために!」といった自律的動機づけについてお話したいと思います。
前回ご紹介した内発的動機づけは、いわば“遊ぶように勉強している”という、理想的なものでした。確かに「楽しいからやる」という状態は大変すばらしいものです。でも、自律的に勉強やスポーツに打ち込むには、内発的動機づけだけでは、心もとない気がしませんでしょうか。
まず、私たち大人は、残念ながら、勉強が楽しいばかりでないことを身に染みて知っています。また、勉強の延長線上にある将来の『仕事』にしても、「いつもワクワク、ウキウキ」というよりは、むしろ、「生活の必要のため」「同僚やお客様への責任を果たすため」といった思いでも頑張っていて、常に楽しく仕事をしているという方は、少ないのではないでしょうか。
だとするならば、子どもにも、「おもしろいから」「たのしいから」という内発的動機づけだけではなく、「たとえ、そのときはおもしろくなくても、自分にとって大切だからやる」とか、「将来の夢のために苦しいけど頑張る」という気持ちも、持っていてほしいと思うものです。
『自己決定理論 (Self Determination Theory)』という、動機づけの理論体系をまとめ上げた、ロチェスター大学のデシとライアンは、このような動機づけを、『同一化的動機づけ(調整)』および『統合的動機づけ(調整)』に分類して、内発的動機づけと同様に、質の高い自律的動機づけの一種と位置づけています。
例えば、勉強なら、学校の先生になって子どもを励ますために勉強するとか、自由研究で地元野菜のおいしさと栽培の苦労を皆に知ってもらうために勉強するとか、アニメーターとしてきれいな絵を描くため色相や画像作成ソフトの操作法を身につけるとか。
「大切な自分の夢のためにやる!」や、「それが自分自身の生き方そのものだからやる」といった具合であれば、誰かに言われなくても自律的に頑張れそうですよね。
このような動機づけは、 やること“それ自体”が楽しいという内発的動機づけとは、大切な何かのための“手段”としてやるという意味で異なりますが、「自分の意志でやる」という自律性の観点からは、同様に質の高い動機づけと言われています。
では、どんな風に、子どもの自律性を育み支えてあげればよいのでしょうか。今日は、主に自己決定理論の観点から自律性支援を研究している、リーヴ教授の指摘のうち2つに絞って事例を挙げ、私の経験を交え説明させてください。
以下に【事例】と、それに対する【自律性支援が難しいパパの会話】を考えてみました。もちろん、これは説明の便宜のために用意した“ダメな例”です。よろしければ、皆様ならどうやって自律性を支援できるかをお考えになってみて下さい。
最後に、【自律性支援を意識したパパと子どもの会話】の例を考えてみました。合わせてご参考にしていただければと思います。
【事例】
【自律性支援が難しいパパの会話】の例
何かの作業(勉強)の指示をするときは、「なぜやる必要があるのか」「やるとどういう効果があるのか」など、なるべく合理的な『理由』を説明することで、子どもの納得感を高めて、自律性を助けることができます。
例えば、事例では少なくても、2つの点で合理的な理由を説明してあげられます。
第一に、そもそも、なぜ「漢字書き取り」という作業が勉強において必要なのか?、という点です。たとえば、上の例では、その理由を、単に「夏休みの宿題」「他の子たちもみなやるんだから」と言っていますが、これはもちろん本質的な理由ではありませんよね。
本当は、きちんと漢字が書けることの大切さや、一見つまらない作業でも根気よくやりぬくことの意義など、より本質的な理由や意義があるはずです。少し大げさかもしれませんが、要所要所では、これらの本質的な理由や意義を、根気よく伝え続けてあげたいものです。
第二に、なぜ「毎日2ページずつ」なのか?、という作業ペースに関する点です。これは、60ページのドリルを1か月(約30日)でこなすための計算で “60÷30”の答えですから、大人にしたらあたり前の結論です。あまりにあたり前すぎるので、説明をはしょりたくなるのですが、そこを面倒くさがらないのがポイントです。
「えーと、夏休みはだいたい一か月だから、60ページを割り算すると、60÷30で、一日2ページになるね」と、子どもが考えるスピードに寄り添うように、ゆっくり理由を説明すると良いでしょう。
さらに進んで、このような『理由』を、大人が説明しなくても子ども自身が考えて、自ら進んで勉強するよう導きたいところです。なぜならば、子どもが自分で勉強の理由を見つけて、それに合わせて自分をコントロールできることこそ、自律性を獲得した姿そのものだからです。では、そのような力を育むためには、どうしたらよいでしょうか。
一番重要な基本は、まず子どもに『尋ねる』ことです。大人があれこれ説明する前に、まず「どうしたいのか」「どんな風にやっていきたいのか」等、尋ねましょう。そして、尋ねたら、子どもが答えるまで一定時間『待ち』、考える時間を確保しましょう。
その上で必要なら、考えを邪魔しない程度に、励ましたり、本質的なヒントを出したりするなどして、何とか子どもから回答を引き出すように努めましょう。
ただ、なかなか子どもから回答が出てこない場合や、回答があっても、ただ単に「やりたくない」とか、「(とりあえず今はやりたくないので、いろいろな“出来ない理由”をあげて)あとでやる」といった回答の場合もあるでしょう。
その場合には、大人の側で『選択肢』を与えて、子どもの考えを促すのも良いと思います。必要に応じて、各選択肢の長所や短所(危険性)等を、それとなく説明して、子どもが考える際のヒントを、情報として与えてあげるのも良いでしょう。
いったん子どもが何らかの選択肢を選んだら、大人から見てベストの選択肢でないと分かっていても、その選択肢による作業の完了を可能な限り応援してあげましょう。そうすることで、自律的な選択を尊重する姿勢を、子どもに示すことができます。
もし、うまくいかなかった時にも「じゃあどうしたらうまくいくか」を丁寧に子どもに尋ねつつ、子どもの自律的な選択を尊重して、必要があれば一緒に作業方法を改良するなどして、子どもの再チャレンジを応援し続けましょう。
以上、自律性支援のためのワンポイントアドバイスでした。
子どもの応援に熱心になり過ぎるあまり、ついつい「このままじゃ、この子の宿題終わんないよ、何とかやらせないと!」や、「なんで、この子は出来ないの?!、他の子はもうできてるのに。。。」など、不安感やイライラに負けてしまいそうな時はないでしょうか。私は、しょっちゅうです。
でもそんな時は、「いや、チョット待てよ」と深呼吸。何とか、「へーこの子っておもしろい発想するなあ」と楽しむことはできないか(内発的動機づけ)と目先を変えて見たり、「たいへんだけどこの子の成長にとって大切なことなんだ」と意義や理由を再確認したり(同一化的動機づけ)といった、自律的動機づけを思い出そうとすることにしています。
なぜならば、子どもの自律性を支援するためには、まず、私たち大人自身が自律性のお手本として子どもたちの前にいてあげることも、きっと重要なことだと思うからです。まず、率先垂範、ということでしょうか。道は平たんではないですが、よろしければ、ご一緒に。
子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる
悩める子ども応援団のみなさまへ
#1 子どもをやる気にさせる! バンデューラの「結果期待」と「効力期待」
#2 子どもの「自己効力感(効力期待)」の育み方。元塾講師の心理学者が解説
#3 中学生を勉強へのやる気にさせる「マスタリー目標」。高校受験でも目標を見失わないために、望ましい“できる”の種類
#4 小中学生の勉強へのやる気を引き出すコツ。「学び」を「あそび」に変えよう!
#5 親子の会話を見直そう!子どもの自律性の育み方
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この記事を書いた人
鈴木 高志
高知工科大学 准教授。1996年、東京大学文学部卒業。関東圏大手進学塾で中学・高校受験指導に携わる中で、学習における動機づけ(やる気)の大切さを痛感。そこを原点に、筑波大学大学院・人間総合科学研究科にて動機づけの研究を始める。2014年、高知工科大学准教授に就任、現職。教員を志望する学生たちとともに、子どもと子どもを応援する大人の方々を笑顔にする方法を考え続けている。