新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
仕事・働き方
2020.08.5
おちゃっぴ
ねんどクリエイター
自身が考案したオリジナルのねんどを使って、キャラクターデザインなどを手掛ける。このほか、全国各地で子ども向けねんど教室も実施。2020年3月より、新型コロナウイルス感染拡大で外に遊びに行けない子どもたちのため、オンラインねんど教室を始めた。
――おちゃっぴさんは会社員からクリエイターへ転身されたそうですが、安定したサラリーマンを辞めてまでやろうと思った理由は何だったのですか?
子どもの頃からずっと、頭の中に浮かんでくる風景だったりキャラクターだったりを形にしたいと思っていたんです。
だから大学を出たら造形に関する仕事をしたいと思っていました。最初に就職したのはロボットを作る会社で、博物館の恐竜を動かすなどをやっている企業でした。そこでものづくりの仕事ができればいいなと思っていたんですが、経済学部だったので営業しかやらせてもらえなくて(苦笑)。
でも営業の仕事も楽しかったんですよ。いろんな人と関われる職種なので技術の人とも話せましたし、日本中飛び回ってそれなりにやりがいを持って働いていました。だけど「自分が創りたい」という熱は消えなかったんですよね。
――それで決心されたのですね。
ただ、まず転職をしました。商品企画の仕事をやりたかったんですよ。おもちゃコレクターの北原照久(※)さんが経営されている「ブリキのおもちゃ博物館」で働かせてもらい、オリジナル商品の開発について勉強させていただきました。
で、その商品の一つにねんどがあったんです。お客さんへのデモンストレーションでねんどでいろいろ作っていると、ある日、「作品を売ってくれませんか」と言われました。それが「自分はねんどでやっていけるんじゃないか?やってみよう!」と、クリエイターへの道が開けた瞬間でした。
※北原照久(きたはら・てるひさ)
おもちゃコレクター。「ブリキのおもちゃ博物館」の運営会社・株式会社トーイズ代表取締役。テレビ東京系列「開運! なんでも鑑定団」レギュラー出演のほか、講演などで活躍中。
――スイッチが入った瞬間ですね!
自分で入れたというよりは、お客さんに入れてもらった感じですけどね(笑)。
それからもう一つ、クリエイターになる決心がついた理由があります。実はこの頃、事故で指先をなくしてしまったんです。だから、「手や指が自由に動かせるうちにやらなくちゃ」という気持ちが強くありました。それでねんどを本格的にやるようになったんです。
――ねんどでの創作を見出されて、ねんどはどんなところが魅力だと思いましたか?
ねんどは、絵を描くのとはちがって、イメージを固めてから作るというものではないんですよ。とにかく先に手を動かせるのがねんどなんです。それは自分にとって良かったことでした。
というのも、ぼくは子どもの頃から創作意欲はあったんですが、図工や美術が得意だったわけではなくて(笑)。なぜかというと、どう表現していけばいいのかわからなかったんです。だから、いかに表現するかを考えるより先に手を動かすねんどは、自分に合っていました。
まずねんどにさわる、そしてこねながら、作品へと仕上げていく。その過程が楽しく、やりがいがあります。
作品を作る上で大事にしているのは自分が納得できるかどうか。心からいいと思うものができた時は、「よく来たねえ」と思わず作品に話しかけてしまうという。
――その後、仕事は順調に?
いや、大変でしたよ。フリーで活動し始めた当初は、キャラクタービジネスが流行った時代だったので、その波に乗ってやっていけるかなと思っていたんですが、そんなに甘くはなかった。
初期の頃は一緒に組んでいる方がいたので、その方が企業に企画を持ち込み、通ったものを作らせてもらっていました。ほかは、あらゆる繋がりをたどりました。どんどん自分を売り込みに行きましたよ。稼ぎを得るのには苦労しました。
だけど、「ふつうに人生を進むよりは変わった道でもいいから創作をやっていきたい」という気持ちが大きかったんですよね。その想いが自分を動かしていたような気がします。
――おちゃっぴさんは自分で創るだけでなく、子ども向けねんど教室も長くされていますよね。
ねんど教室をやるようになったのは、ひょんなことからだったんです。
ある水族館に家族で行った時、妻がイルカにかまれちゃって(笑)。それでてんやわんやしながらスタッフさんといろんなことを話して、そのうち「自分はこういう活動をやっているんですけど」という話になり、「じゃあうちでイベントをやってみますか?」とまとまりました(笑)。
で、実際にイベントをやってみたらすごく人気になって、3時間待ちなんて事態になったんですよ。
――そんなことってあるんですね(笑)。人に創ることを教えるというのも性に合っていたんですか?
そうですね。思えばぼくは子ども時代、学校が大好きで、特にクラスで和気あいあいと授業を受けている瞬間が好きだったんです。「先生」の仕事にも憧れていました。
大学を卒業して学校人生が終わった時、「人生終わったな…」と思ったくらいだったので、今度は自分が先生になって子どもらに囲まれてワイワイやれるのが嬉しかったんです。
――ねんど教室のやりがいはどんなところにありますか?
子どもがねんどにのめりこんでいく様子が間近で見られるのが楽しいです!はっきり言って途中からぼくの説明は聞いていませんよ(笑)。でも、いいんです。それくらい自分の世界に入ってやっているということですから。
それでできたものを見せにきて、ぼくが何かしら声をかけてあげるとすごく喜ぶんです。距離がぐんと近くなるんですよ。さっきまで全然知らなかったおじさんなのに(笑)。スイッチが入る瞬間に携われるのは大きなやりがいですね。
――最もうれしい瞬間をあげるとしたら何でしょう?
できなくて泣いたりさけんだりしていた子どもが、ねんどに夢中になってキラキラと目が輝く瞬間ですね。
ねんどって何でもできる分、難しいんです。子ども教室にはだいたい4歳から小学校高学年までが集まるんですが、「できないよ~!」って言いだしちゃう子もいるんですよね。
でもとにかくねんどをさわらせていると、ふとその子が納得するいいものができることがあります。その時、子どもの目がパッと変わるんですよ。その瞬間に立ち会えることが一番の喜びです。「やっぱりねんどっていいな」と自分自身のやる気にもなります。
ねんどはゼロから作り上げるものなので、やり始めるとすぐに壁が出てくるんです。ふだんの制作でそれを実感しているので、子どもが泣きたくなる気持ちもわかります。でも乗り越えた時、すごく達成感があることも知っています。だから子どもにそれを味わってもらえた時はすごくうれしいです。
――コロナの影響で楽しかったねんど教室もできなくなってしまいましたね。
そうなんですよ。だからすぐにオンライン化を進め、3月初旬には整備しました。これはもちろん子どもたちのためであったんですが、自分自身のためでもありました。
緊急事態宣言が発表されて自粛生活を送らないといけなくなり、自分もストレスがたまっていたんです。オンラインで子どもたちと出会えて救われました。
子どもたちと一緒にねんどをやっていると、「世の中はコロナ、コロナ、って言ってるけど、頭の中は自由だよね」と思えて、明るい気持ちになれました。
オンライン教室の日程は特設ページにて確認できる
――「オンラインだからやる気になれる」ということはありましたか?
そうですね。オンラインだとお互い自宅で、イベントのように知らない人に見られている感がないので、リラックスして取り組めると思いました。より自分の世界に集中でき、「ものを生み出す楽しさ」を体感してもらえます。互いに手元がよく見えるのもオンラインの利点ですね。リアルイベントが開催できるようになっても、オンラインは続けたいと思っています。
――今後の展望はどのように?
自分の創作も、ねんど教室で子どもに創作の喜びを伝えていくの続けていきたいです。ねんど教室で子どもと話すのはもはや生きがいになっていますしね(笑)。
今振り返ってみると、ぼくは美術系の大学を出たわけでもないですし、「よくやってきたなあ」と思います。ねんどに活路を見出せて良かったです。これからもねんどを使って、頭の中にある空想の世界を外に出していきたいです。それがちゃんと仕事になれば万々歳です(笑)。
――ありがとうございました!
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この記事を編集した人
ほんのまともみ
やる気ラボライター。様々な活躍をする人の「物語」や哲学を書き起こすことにやりがいを感じながら励みます。JPIC読書アドバイザー27期。