新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
仕事・働き方
2022.03.10
山田元康(やまだ・もとやす)
スパイシーソフト株式会社代表取締役。東京大学を中退し1999年に起業。ガラケー時代にアプリのポータル事業「アプリゲット」をMAU(月間アクティブユーザー数)400万人まで伸ばし、チャリ走や糸通しなど人気カジュアルゲームを輩出。サブスク型ゲーム配信事業の有料会員を30万人まで成長させる。Nintendo3DSやSwitchで売上ランキング1位を何度も獲得。現在は、リモートワークを日本に普及させるため、リモートワークで事業の成果を出すための組織コンサル事業なども手掛ける。
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――山田さんは24歳という若さで、1999年にスパイシーソフト株式会社(以下、スパイシーソフト)を起業しました。もともと、将来は起業しようと思っていたんですか?
特に起業したいと思っていたわけではなかったですね。当時ITエンジニアとしてバイトしていたベンチャー企業の内情を見て、これだったら自分でもできると思ったんです
――最初はPCソフトの販売からスタートしたんですよね。
そうです。どうせやるなら受託ではなく、自分たちでソフトウェアを作ってみたいと思い、自社でPCソフトを作ってVector(ベクター)という外部のサイトで販売していました。ただ、このときは鳴かず飛ばずでした。
でも、ちょうどその頃に、NTTドコモ(以下、ドコモ)の「iモード※」が始まったんです。待ち受け画像や着メロのダウンロードに300円払ってくれるユーザーが100万人いるというような話を知り合いから聞いて、興味を持ちました。ただ、待ち受け画像や着メロをやりたいわけではなかったので、その段階では参入しませんでした。
その後、2001年に、「iアプリ」という今のスマートフォンのアプリと似たような機能がiモードに追加されました。自由にアプリを作って、自由に配信できるようになったんです。
もちろんドコモの公式メニューに登録するには審査がありますが、その外であれば審査もなく非常にオープンな環境でした。当時は、ドコモに認証を受けたサイトが「公式サイト」、それ以外のサイトが「勝手サイト」なんて呼ばれていましたね。
アプリなら作ってみたいと思い、参入を決めたのですが、そもそもアプリを売る場所がないことに気が付きました。だったら、自分たちがPCソフトを売っていたときにお世話になったVectorのような、「発表できる場所」を作ろうと。それで、「アプリゲット」という勝手アプリ配信プラットフォーム事業を始めました。今で言う、Appleの App Storeみたいなサービスですね。
PCソフトを売っていたときに、雑誌に自社PCソフトの体験版を付録にしてもらったりしていたので、既にパソコン・デジタルガジェット・モバイルなどに強い出版社と関係ができていました。また、アプリゲットのユーザーデータがあったということもあって、最終的には僕らがiアプリのゲーム紹介記事をほとんど独占することができるようになったんです。それで、アプリゲットは順調に数字を伸ばすことができました。
※ドコモの携帯電話向けネット接続サービス
――PCソフトでの失敗を糧にして成功したわけですね。
ただ、2010年ぐらいから「怪盗ロワイヤル」などのフリー・トゥ・プレイのゲームが流行り始めたんです。無料でプレイができて、ガチャなどの課金要素があるゲームですね。今で言うところのソーシャルゲーム※です。このあたりから事業の雲行きが怪しくなり始めました。
フリー・トゥ・プレイのゲームは、これまでのライトな携帯用ゲームと違い、一度ハマると数か月から数年単位でユーザーが遊んでくれます。だから、一ユーザー当たりの課金単価が非常に高いんです。大きな収益が見込めるわけなので、当然広告にも費用をかけられます。
一方、アプリゲットは当時「アプリゲットDX」という月300円のサブスクリプション型のサービスが主力になっていました。一ユーザーの獲得コストとして出せるのは3か月分くらいが限界ですから、広告の出稿競争になったとき僕らが出せるのは600~800円くらいまで。しかし、フリー・トゥ・プレイのゲームは、課金単価の高さを活かして2000円くらいのコストを出すこともできます。広告の出稿競争に勝てなくなったアプリゲットは、ユーザーを獲得できなくなっていきました。
さらに、スパイシーソフトは得意分野ではないソーシャルゲームにも手を出してしまいました。アプリゲットのときはPCソフトの販売で得たノウハウがありましたが、ソーシャルゲームに関してはノウハウがありませんでした。
確かに、アプリゲットではゲームを取り扱っていましたが、それはあくまで「配信プラットフォーム」としてです。ゲームの開発やマネタイズ、プロモーションなどについては知見がなかったんですね。
すぐに撤退すればよかったのですが、なんとかうまくいかないかと人を増やし続け、どんどん赤字が膨らんでいきました。最終的には、このままいけばあと1年半でキャッシュが尽きてしまうという状況に。正直、一度はリストラも考えました。
結果的には、ソーシャルゲームのチームを丸ごと売却することで、また黒字化することができたのですが。
※SNS上で遊べるオンラインゲーム。SNSの会員同士で対戦や協力プレイができる。なお、現在では「コメント機能」などのSNS的な要素を持っているゲームアプリもソーシャルゲームに含まれることがある。
――大変な状況から脱して、なんとか黒字化できたんですね。その後、2018年にはスマホ向けHTML5ゲームプラットフォーム事業「株式会社Liberapp(リベラップ)」を新たに起業しますね。会社を立て直したにも関わらず、なぜ連続起業を?
ソーシャルゲームのチームを丸ごと売却した後、黒字化したのでしばらくゆっくり働いていたら、アクセル全開で仕事をすることができなくなったんです。サボり癖のようなものがついてしまったり、失敗を恐れて思い切った仕事ができなくなったりしました。だらだらせずに、ソシャゲの失敗を活かして、すぐにもっと大きな挑戦をするべきだったとあとで後悔しましたね。
このままではいけないと思って、ブラウザ上でゲームができる規格「HTML5」のプラットフォーム事業の起業を決めました。App StoreやGoogle Playには厳しい審査があります。ブラウザ上に誰もが自由にゲームを配信できる、オープンなプラットフォームを作ろうと思ったんです。
ただ、実際に始めてみてわかったのですが、HTML5ゲームを作っているクリエイターというのはほとんどいませんでした。iモード・iアプリの時代は、ドコモという引っ張る会社がいたので、色々な環境が整っていたのですが、HTML5はそうではなかったんです。それで、2020年10月に事業の撤退を決めました。
現在は、リモートワークに関する組織コンサルティング事業などに取り組んでいます。
――何度でも挑戦し続けるモチベーションはどこからくるんでしょうか。
何かを始めると突き詰めたくなるんです。限界まで挑戦しようとしてしまって、楽しくはなくなってしまうんですが。
「取りつかれている」という風に言われることがよくあります。「燃え尽きたい」みたいな気持ちがあるのかもしれないです。
――楽しくないのに続けられるのはどうしてですか?
スタートはどれも「楽しい」からなんです。自分の中で「楽しかったな」で終わってしまうものと、「できないと悔しい」と思うものがある。
例えばスキューバダイビングのような「体験」みたいなものだとはまりにくい気がします。
――それは、もともとそういった気質があったんですか?
そうですね。逆に言えば、子どもの頃から、親や先生に「やらされる」ようなことはやらなかったです。怒られるくらいですむなら、やらない。
だから中学校の成績は良くなかったですね。宿題もやらず、出席日数も少なく、授業態度もあまり良くなかったので。
――でも、東京大学に入学していましたよね。勉強自体は嫌いではなかった。
やらされるのは嫌ですが、別に勉強自体が嫌いなわけではなかったんです。東京大学は、父親が行っていたので、「親父が行けるなら俺も行けるだろう」と思って(笑)。
ただ、中学の成績があまりにも悪かったので、高校は偏差値30~40くらいの私立高校に入学したんです。工業科がメインで普通科もあるんですが、正直あまり進学実績は良くない高校でした。
でもその高校に理数コースが新設されたんです。校舎も理数コースだけ山を越えた別のところにあって。僕らのクラスが20人、1個上の先輩が10数人、2個上が7人しかいない立ち上がったたばかりのコースでした。
ここがちょっといい加減なコースで(笑)。学校に行かなくても良い。定期テストの点数も何点でも良い。予備校の模擬テストを受けて偏差値が高ければ、それで学校の成績がつくというコースだったんです。実力主義というか。
そこで最初の頃に「どこの大学を目指すのか」と目標を聞かれて、適当に「東大に行く」と言ってしまったんです。「その成績で?」と言われたのが悔しくて火が付きました(笑)。
それと、模擬テストの成績ですべて決まる環境が自分には合っていました。先生の好き嫌いや出席日数ではなく、公平に作られた模擬テストですべてが決まるというのが良かったんです。
――集中して「突き詰める」ことができる環境がそろっていたんですね。
確かに今思えばそうだったのかもしれないですね。友達と参考書をどっちが早く終わらせるかで競ったり、数学が好きだったので大学の教材に手を出してみたり、勉強にのめりこんでいましたね。
――「楽しくないと続けられない」「やる気が維持できない」といった悩みを抱えている方は非常に多いです。山田さんのように「突き詰める」ためには、モチベーションをどう管理すれば良いのでしょうか?
やる気に関して、2つ考えを持っています。
まず一つは、「やる気ドリブン」はやめましょうということです。「やる気がない」ということに罪悪感を覚えなくていいんです。「やる気がない」ということを受け入れる。疲れているだけかもしれませんから。
もう一つは、「椅子に座る」「パソコンをつける」というレベルでいいので何かやる。やる気はランナーズハイと一緒で、やった後に出てくるものだと思っています。
やる気に振り回されないようにして、テクニカルに対応するというのが大事かなと思います。
――ありがとうございました!
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この記事を書いた人
ミズタ
やる気ラボライター。趣味は映画と音楽。インタビューとコラムをメインに書いています!