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仕事・働き方
2020.08.7
1980年4月16日生まれ。大阪府大阪市出身。2002年のドラフトで横浜ベイスターズに入団すると、高い守備力と走塁技術が認められ、主に広島移籍後に活躍。2015年オフにFA権を行使し、西武に移籍。西武退団後は、プロ野球経験者として史上初めてクリケット選手に転身し、競技歴2カ月で日本代表に選出される。現在は、インドのプロリーグでの活躍を目指し、国内リーグやスリランカを拠点に奮闘中。
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やる気ラボの勝部です。
本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
さっそくですが、木村昇吾さん。
この「やる気ラボ」は、やる気が出ない人たちを応援するサイトなのですが、木村さんはそういった人たちにどのような声がけをしたいと思いますか?
まず、僕は「やる気を出せ」とか「集中して取り組め」という言葉が好きではありません。なぜなら、「やる気」や「集中」という言葉は、第三者が傍から見たときに初めて使える言葉だからです。
と、言いますと?
例えば、子供たちがテレビを見ている時って、口を半開きにして食い入るように見たりしているじゃないですか。その状態を傍からみたら「集中」というだけで、当の本人はまったく集中しようなんて考えていないんですよ。
あ、確かに…!
だから、僕は「集中しろ」という言葉はナンセンスだと思うんです。「集中していけよ!」と言われたら「集中すること」自体に集中してしまうわけですから。それは、本末転倒ですよね。
それでは、どういった言葉をかけてあげるべきなのでしょうか?
僕も正直、勉強はあんまり得意な方ではありませんでした。だけど、お母ちゃんに言われた言葉を実践してから成績がグンと伸びたんですよ。「学校の先生の目を見て話を聞いとき」、これだけでした。
これって、めっちゃ簡単なことじゃないですか?
目をジッと見ることでいつの間にか話を聞くことに集中している、という意味ですね。
そうです。
そして何といっても、「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、好きなことにとことん取り組むのがいちばんなんですよ。
好きなこと…。大小はともあれ、誰もが持っているはずのものですね。
僕の場合は、たまたまそれが野球だったんです。
野球が好きだから、「あいつに勝ちたい」「試合に出たい」と考えるじゃないですか。そうすると、自分がやらないといけないことがわかってくるんです。ここが足りないからこういう風に練習をして、今度はこうしてみようかなとか…、そういったことを日常的に考えるようになりました。
ふむふむ。
ここで、「やる気を出す」という話はどこにいったの?と思うでしょう。でも、こんな僕の話を聞いていたら、みんなが僕のことをやる気満々な人なんだなって思いますよね?
やる気っていうのはそういうものなんですよ。好きなものに没頭している状態こそが、傍から見たら「集中」や「やる気」ということなんです。
なるほど…。
やる気は、自分で意識して出せるものではない。ただ、いつの間にか自然にわいてくるものだということですね。
勉強が好きな子っているじゃないですか。それは確かにすごいことですけど、じゃあ、スポーツが好きな子はすごくないの?ゲームが好きな子は?
僕は、みんな同じだと思うんです。好きなことに没頭できるのは、どんなことでもすごいことですし、価値のあることだと思うんです。
好きなことを追求していくことは、とても重要なことなんですね。
しかし、好きなことはもちろん、嫌いなことでも取り組まなければならない場面はかならずありますよね。それこそ、学校とか勉強とか…好きな子ばかりではありません。
学校の勉強は、どんなことにも通じています。例えば、バスケが好きで八村塁君みたいにNBAを目指したいなら、英語の勉強もやらないといけないでしょうしね。そういう風に、思考を転換させるといいでしょう。
「バスケと同じように、勉強もできるとすごいよね」といった感じで、勉強すること自体に価値や目的を見いだせるようになれば、自分から自然にできるようになるのではないかと思います。
「やる気を出せ」という声がけより、それを好きになれるような周りの声がけが重要、と。
そうです。まあ、そういう僕も嫌なことは嫌ですけどね(笑)
湿度の高い日のトレーニングなんて、もう本当に大変ですし…。
それが仕事になると、好きなことでもやはりまったくの別物かと思います。
木村さんの場合、プロ野球生活や現在のクリケッター生活はどのようにモチベーションを保っているのでしょうか?
結局は全部自分に返ってくるので、やる気がなくてやらないならそれで終わり。プロの世界は、打たなかったら来年はサヨウナラという世界ですからね。
過酷な世界なのですね。
寝てて結果が出るのなら僕も寝てますよ(笑)でも、自分にはうそをつけないでしょ?だって、自分の行動は四六時中自分が見ているんですから。例え他人はだませたとしても、必ず答えは出るんです。結局、「あいつは口だけだったな」ってバレるじゃないですか。
結果を良くしたいのであれば、とにかくやるしかないんです。どうなりたいかが重要であって、そのように考えることができれば、やる気とかモチベーションとかは後からついてきます。僕の中には「なりたい木村昇吾」がいるので、とにかくそこを目標にやり続けるしかないんですよ。
やる気が出なくてもやり続けるしかない…。
それでは、まず一歩目を踏み出せない人は、どうすればいいでしょう?
いきなり遠いところまで行くのは無理なので、まずは好きなことと目標を見つけて一つひとつ段階をクリアしていくこと。そうすれば、あとからやる気はついてくるものだと思いますよ。
「なりたい木村昇吾」というお話がありました。長年過ごした広島東洋カープをFAで去るという選択をしたのも、こういったところにつながっているのでしょうか?
その通りです。
僕、小学生の時に、自分の将来の目標を「10億円プレーヤー」って書いているんですね。「王さんのホームラン記録を抜く」とも…。本当にできると思っていたんですよ。当時は何をやってもうまくできましたから、甲子園なんて通過点、プロになってあたりまえという根拠のない自信があったんです。
つまり日本1のプレーヤーになれる自信があった、と。
でも、プロ野球に入って、広島に来て試合で使ってもらえるようになって、どこか満足してしまった自分がいたんです。年俸が4,000万円くらい、移動はいつもグリーン車で、おいしいものを好きなだけ食べられる。チームのジョーカー的な存在だった自分は、給料も下がりにくい…。
めちゃくちゃいいでしょ?だから、チームが負けても試合に出られなくても、どこか悔しさが足りないというか、「また明日」という気持ちになっている自分がいました。
当然のことのように思います。
ただ、その気持ちに気づいたとき、僕は自分にめちゃくちゃ腹が立ったんですよ。「ちょっと安定したくらいでなにやってんの?」「王さんを抜くんじゃなかったの?」って。
その時、手の中にあったのがFA権だったんです。
まさか…。
僕は、チャレンジしたかったんです。チャレンジせずに終わってしまうことが怖かった。
カープのことは大好きだし、本当にお世話になりましたけど、「なりたい木村昇吾になる」という夢を追いかけることがやっぱりいちばんだと思ったんです。だから、カープを出るという決断をしました。
安定を捨て、幼い頃からの夢を追いかけた…。これは、誰にでもできることではありません。
しかし、木村さんが移籍された次の年にカープはセ・リーグ制覇を成し遂げます。そんな仲間たちの姿を見て、後悔はなかったのでしょうか?
覚悟をもってやったことだったので、カープに残っておけばよかったなと思うことは一切ありませんでした。優勝に関しては、それよりも「やっぱりみんなすごいな」という気持ちだけでしたね。「俺もそういうことをやるために頑張ろう」と、やる気がわいてきました。
覚悟を持った決断は、後悔を生まないのですね。
そもそも、後悔って「後に悔しがる」ことを言いますよね?僕にとって今は後じゃないんですよ。だから、わからない。
そういう話をすれば、野球が正しい選択だったのかもわからないじゃないですか。本当は、サッカーの方が向いていたのかもしれない。僕は、死ぬときに「もっとこうしておけばよかったな」と思わない人生を歩むように、今を頑張っているんです。
すてきな考え方です。
西武退団後には、プロ野球経験者として史上初めてクリケット※プレイヤーに転身されました。これも、木村さんの夢の続きなのでしょうか?
※クリケットは、各チームが交互に攻撃と守備を行い、得点数の優劣に基づいて勝敗を競う球技。英国、オーストラリア、インド、南アフリカ、西インド諸島などの英連邦諸国を中心に大人気で、世界の競技人口はサッカーに次いで第2位といわれる。
プロ野球選手としては、幼い頃に思い描いた夢には届きませんでした。でも、「100パーセントアスリートとしてやりきりたい」という気持ちが強かったんです。そんな時に、このクリケットのオファーをもらいました。いただいていた独立リーグの兼任コーチのオファーを断って、プレイヤーとして現役を続けることを決意しました。
今度はクリケットプレイヤーとして、木村さんが目指すのはどのような場所なのでしょう?
現在は、国内やスリランカなどで代表レベルの人たちと練習して、インドのIPLというクリケット世界最高峰のプロリーグを目指しています。選手の平均年俸は3億円といわれるほどのリーグです。
さ、3億円…!?
でも、普通にやっていたらダメなんです。自分の場合はほかの選手とは違う形で始まっているから、何か違う形で入らないとダメ。正規のルートじゃ、決して入ることはできない場所なんですよ。
僕は、野球で磨いた守備力を売り込んでいきたい。守備はクリケットでも大切なんですが、一般的にレベルが高いのは野球の方だと言われているんです。そこをアピールしていけたらと思っています。
新たな木村昇吾の挑戦、と。
でも、もう40歳。どんなに上手でも、年齢が上がれば上がるほど周りの目は厳しくなります。日本人は若く見られるから、「サバ読んだろか!」って思うこともありますよ(笑)
非常に険しい道のりなのですね。
はい。だから、こんな僕を見て「無理だ。あきらめろ」という人もいるかもしれません。でも、僕は無理と言われれば言われるほど燃えるんですよ。
「あなた、無理って言いましたよね?でも俺、やりましたよ」って。その方が断然かっこいいでしょ?
木村さんらしい前向きな考え方ですね。
木村さんをそこまで突き動かすものって、いったいなんなのでしょうか?
もちろん、「なりたい木村昇吾」になるためです。そして、例えばこのインタビューとかでも「やる気のある人」として取り上げていただいているわけじゃないですか。いろいろなものを背負っているので、そういうのが原動力になっているんです。
僕の姿を見て、「頑張ろうと思いました」と思ってくれる人が一人でもいてくれるのであれば、僕のやっていることには意味がある。「あいつ、あんなアホなこと言ってたけど本当に達成したわ」「すごいな」と、少しでも前向きに感じてくれるのであれば、これ以上に嬉しいことはありません。
いつでも挑戦する木村さんの姿勢を見て、勇気づけられている人たちはたくさんいると思います。
そして、クリケットの普及に貢献したいんです。例えば、高校とか大学で不完全燃焼、野球を志半ばであきらめることになった人たちが、「そういえば木村昇吾ってやつが、野球からクリケットに転向して成功したんだったな」、そう思ってクリケット界に来られるように。そのために、先を走るのが僕の使命なんだと思います。
かっこいい。「なりたい木村昇吾」を目指すのは、自分のためだけではないのですね。
口で言うのは簡単です。でも、本当の意味では、結果で見せるしかない。そのために、これからも今できることを全力で頑張ります。
とても前向きになれるお話をありがとうございました!
これからの木村昇吾さんの活躍を期待しています。
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この記事を書いた人
勝部晃多(かつべ・こうた)
やる気ラボの娯楽記事担当。23歳。ハウストラブルコラムやIT関連のニュースライターを経、2019年8月より現職。趣味はプロ野球・競馬観戦や温泉旅行、読書等と幅広いが、爺臭いといわれるのを気にしているらしい。性格は柴犬のように頑固で、好きな物事に対する嗅覚と執念は異常とも評されている。
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