仕事・働き方

アダムスの公正理論とは?【やる気を上げる組織論】

2021.05.6

上司や先生に不公平な評価をされて、やる気を失ってしまったという経験はありませんか?人が組織の中で安心してモチベーション高く活動する上で、公平感は非常に重要な要素です。組織心理学では公平感とモチベーションの関係についてこれまでに様々な研究が行われてきました。その中でも今回は、公平感に関する基礎的な理論であるアダムスの「公正理論」と、その発展的な理論であるグリーンバーグとフォルジャーの「組織的公正の原則」を詳しく解説いたします!

 

 

 

 

アダムスの公正理論(公平理論)


 

公正理論は、心理学者のジーン・ステイシー・アダムスが提唱したモチベーション理論(動機づけ理論)です。アダムスは、フェスティンガーの認知的不協和理論の「人は自分の考えと行動に不協和が大きくなるほど、それを減らしたいと思うようになる」という考えなどに影響を受けて公正理論を生み出しました。

     

  

  

公正理論の要点

公正理論の要点は以下の通りです。
1、人は努力や教育などの「入力(インプット)」を分子、金銭や評価などの「結果(アウトカム)」を分母として、その比率を他者と比較する。
2、比率の不均衡が起きた時、つまり他者が自分よりもより少ない努力でより多い報酬を得ていた時、人に緊張がもたらされる。
3、緊張は、例えば仕事をさぼることで入力を減らす、給与アップの交渉をすることで結果を増やすといった緩和(不均衡の解消)をもたらす行動を促す。

公正理論は、人が不公平感を感じる時に何が起こっているのかについて明らかにしたと評価されました。一方で、入力と結果に含まれうるものがあまりに多種多様な上、どれを改善すれば不公平感の解消につながるのかが個人によって異なるため、解決策を立てにくいという問題がロバート・プリチャードらによって指摘されました。

    

  

       

グリーンバーグとフォルジャーの組織的公正の原則


 

公正理論は組織における公正さの重要性を明らかにした一方で、公正さを保つための具体的な解決策が立てにくいという問題点がありました。ジェラルド・グリーンバーグとロバート・フォルジャーの提唱した組織的公正の原則は、公正理論よりも実際的なものとして、組織の公正さを考える上での基本的な理論の一つとなりました。
組織的公正の原則は「分配的公正」「手続的公正」「相互作用的公正」の3つの要素で構成されています。

 

  

  

分配的公正

分配的公正とは、給与や(役職などの)役割の分配の公正さのことです。ここでは、誰に何が分配されたのかということが重視されます。
分配的公正を高めるということは、例えば組織のメンバー全員に給与額を納得させるというようなことなので、非常に難しいとされています。そのため、重要な要素ではあるのですが、次の手続的公正を改善することが現実的な解決および改善への近道だといわれています。

   

  

  

手続的公正

手続き的公正とは、分配の手続きの公正さのことです。例えば給料決定のプロセスやシステムがこれにあたります。手続的公正に影響を与える特に重要な要素は「規定(アプリオリ)の意思決定基準」と「意見表明(ボイス)」の2つです。

・規定の意思決定基準
規定の意思決定基準で問題になるのは、意思決定の基準とその運用が全当事者にとって公平かどうかということです。例えば、給与決定の基準に特定の人物のみ得をする規定を作ったり、基準を無視して特定の人物のみを理由もなく優遇したりといった行いがあれば、規定の意思決定基準の公平さは損なわれます。
全当事者にとって公平で、倫理的な問題もなければ、人はたとえ基準に完全には賛同していなくてもそれを受け入れやすくなると考えられています。

・意見表明
意見表明で問題になるのは、意思決定に各人が参加しているか、あるいは意見が取り上げられているかということです。例えば、仕事で個人の評価をされる際に、基準に照らし合わせてただ機械的にされるのではなく、自分の意見も聞いてもらえた方が納得しやすいですよね。
自分の意見が考慮されていれば、最終的な決定が自分の見解と違っても、人はそれを受け入れやすくなると言われています。

  

  

  

相互作用的公正

相互作用的公正とは、人と人とのコミュニケーションの公正さのことです。相互作用的公正は、グリーンバーグとフォルジャーではなくビーズ・モーグが理論に付け加えるようにして提唱したものです。

特にリーダーとのコミュニケーションが組織の公正さにとって重要だという考え方で、そのなかでも以下の2点が肝心だとされています。

①リーダーが部下を公平に扱い、論理的な決定をする、誠実な人間だと思われていること
②リーダーの決定の根拠あるいは論理を理解するために必要な情報を偏りなく与えられていること

①を「対人的公正」、②を「情報的公正」として、相互作用的公正を2つに分ける考え方をする場合もあります。相互作用的公正が高ければ、望ましくない決定でも人は受け入れやすくなると言われています。

   

   

   

まとめ


 

職場や学校など様々な組織で、メンバーから「不公平だ!」という声が上がることは珍しいことではありません。にもかかわらず、不公平感を解消するのは大変難しいです。この記事が少しでも公正な組織づくりやマネジメントの力になれば幸いです!

その他のモチベーション理論については、以下の記事をご覧ください!
動機づけとは?理論を活かしてモチベーションを高める!

〈参考文献〉
ゲイリー・レイサム『ワーク・モチベーション』(NTT出版)

 

 

 

 

この記事を書いた人

ミズタ

やる気ラボライター。趣味は映画と音楽。インタビューとコラムをメインに書いています!

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