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【幼児】【保護者】
知能研究所の市川希所長に、子どものやる気を目覚めさせるための「コツ」や「奥の手」について、3回に分けてお話をうかがいます。
第2回は『考える力、どう伸ばす?』
キーワードは『創造力』と『性格』!
知能研究所 所長
市川 希 先生
いちかわ・のぞみ●脳生理学・教育学・心理学などを基礎に、人間の知能および知能幼児教育学の研究を重ねている知能研究所の所長として、全国約130教室で使われている知研プログラムの研究開発に携わっている。
──前回は、受容・集中・拡散・転換・表現という「5つの思考力」についてお話がありました。これらをフル活用することが、自分の力で新しいものを生み出す「創造力」につながると。
ただ、「受容」や「転換」といったことがどうして「創造力」につながるのか、まだよく分からないんです。もう少し、詳しく教えていただけませんでしょうか?
市川 それでは、『ワラスの創造四段階説』という学説に沿って説明しましょう。ワラスという人は心理学者で、創造力には4つの段階があると考え出した人です。
まず、仮説を立てる「準備期」。
次に、何もしていない「孵化期」。
そして、新しいことをひらめく「啓示期」。
さらに、ひらめいた事を整理し、理論だてる「整理期」です。
5つの思考力は、このそれぞれの段階に作用しています。
準備期には、文献を調べて、情報を集めて、それらをまとめ論理的に組み立てる「受容的思考力」「集中的思考力」と、それを何通りも考える「拡散的思考力」が働いています。これが、新しいことをひらめくための材料になります。
ただ、そうやって情報をインプットしている最中に何か新しいことをひらめくかというと、なかなかそうはいかないものです。むしろ、ひらめきというのは寝ているときやお風呂に入っているときなど、何も考えずに過ごしている瞬間に来るものではないでしょうか。そのような孵化期に「はっ!」と思いつくのが「転換的思考力」です。啓示期の到来ですね。
でも、ひらめいただけでの思いつきでは、アイデアは形になりません。ひらめきを誰かに伝えるためには、整理して伝え方を考える必要があります。それが整理期です。情報を「集中的思考力」でまとめたり、それを相手に伝わるように表現するという「表現的思考力」が求められるのです。
──なるほど。子どもたちはこうした段階を追って、5つの思考力をフル活用し、創造力を伸ばしていくのですね。
保護者としては、どういう働きかけをすべきでしょう?
市川 大事なのは「考えの幅を広げる」ための働きかけです。それによって、創造力の基礎となる「受容・集中・拡散・転換・表現」の思考力を鍛えることができます。
もちろん、幼児が相手ですから、いきなり何もないところから自由自在に思考力を発揮できるわけではありません。まずはきまった型の中で遊んでもらいながら少しずつ 「受容・集中・拡散・転換・表現」 を促します。
例えば、いくつかの図形片をうまく組み合わせ、所定の台紙に合わせて「舟」や「蝶々」などさまざまな形をつくっていく遊びをしているとしましょう。
小さな子どもだと、図形片を置く際、向きが間違っているために正しく台紙の通りに置くことができないことがあります。
そのようなとき、私たちは、
「くるくるまわしてごらん」
「パタンとひっくり返してごらん」
…などといった言葉かけをし、実際に子ども自身に図形片を動かしてもらい、ぴったり台紙に合う向きを考えてもらいます。
このくるくる手を動かしている過程が大切で、「こーでもない、あーでもない」と頭を使っていることになります。
ここで気をつけなければいけないことがあります。知育の中で、子どもが意見を言ったとき、それが合っていても、間違っていても、必ず理由を聞いてあげてください。
ただし、毎回聞いてしまうと、飽きてしまうので可能な範囲で大丈夫です。
――時間がかかってもいいのでしょうか?
市川 もちろんです。待つということが大切なんです。大事なのは「いま・ここで、できるかできないか」をゴールに置かないことです。
──試してみて、間違えて、また試してみてというのが大事ですからね。
市川 そうです。別の方法でアプローチをしてもいいですし、忘れたり、興味がなくなったりしたら、教材を変えて、楽しみながらまた学べばいいわけです。
──幼児の学びについてお聞きしていますが、子どもたちは一人ひとり性格が違い、学び方や創造力の身につけ方も違ってくると思います。
そもそも性格はもともと持っているものでしょうか?
市川 性格と言ってしまうと、育て方によって変わることはあります。
ただ、第1回でお話しました「本性」(下図参照)は、ある程度持って生まれた部分が大きいです。
ただ、2歳頃では折り紙を慎重に折っていたのに、3~4歳になったら、気にせず折ってしまうといったように変わったりするので、時期ごとに様子を見極める必要はあります。
──例えば、「どうしてなの?」「なんでなの?」とすぐに質問してくる子がいると思います。この子たちに対しては、どのように接するのがいいのでしょうか?
市川 「一緒に図鑑を見てみようか」と言って、なるべく一緒に考えてあげてください。
そうすることで、知りたいという「本性」を満足させてあげれば、また次も知りたいとなり、知的好奇心がどんどん育ってきて、小学校や中学校、高校の勉強に対しても自ら楽しく取り組める子どもに育ちます。
反対に言えば、幼児教室に通って勉強が嫌いになってしまっては本末転倒ですよね。
──知能研究所では、子どもたちがもっとやりたいとやる気を持ってもらうために、何か工夫されていることはありますか?
市川 満足感、達成感、楽しかったと思える時間を作るようにしていることです。
あと、2~3歳などの小さい子は長く座っていられないから飽きないように、より動きを取り入れるなどの工夫をしています。
また、子ども一人ひとりにすぐ解ける課題だけでなく、ちょっと考える課題を先生に用意してもらい、頭を使い背伸びをさせることがやる気に繋がり、満足感を得られるように工夫しています。
第3回(最終回)「家庭で知育、やってみよう」。知育教材・知育玩具を選ぶポイントもアドバイス!