新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
仕事・働き方
2021.06.8
株式会社悪の秘密結社
2016年福岡にて創業。「正しい倫理観のもと世界に 「必要悪」 を提供し、キャラクターコンテンツの成長とそれらを「支える人」を支え、子供の笑顔を創造する」を理念に掲げ、ヒーロー関連のビジネスを展開する。社長は画像中央の「ヤバイ仮面」。笹井浩生さんは人間代表として裏舞台を支える。
オフィシャルサイト:株式会社悪の秘密結社
――早速ですが、「悪の秘密結社」ってすごい名前ですよね。もともと笹井さんは悪役に愛着があったんですか?
悪役がヒーローがというより、ヒーローの世界そのものが僕は大好きなんです。大げさに聞こえるかもしれませんが、僕はこの世界に救われました。
――とおっしゃいますと?
僕がヒーローに興味を持ち始めたのは中学生頃からでした。特に中3のときに見た『仮面ライダー響鬼』がとても心に響いて。
『仮面ライダー響鬼』の主人公は自分と同じ年頃の母子家庭の少年でした。
実は僕の家は親が離婚と再婚を繰り返していまして、だから主人公に親近感を覚えたんです。もしかしたら自分の物語のように感じていたのかもしれませんね。
このシリーズでは響鬼という仮面ライダーが、少年にとって父親のような存在で登場しています。父親像を見せるように作られていることがさらに僕にとって興味深く、どんどん物語に入り込んでいきました。
困難にぶつかり、戦い、成長していく。いつのまにかそうした物語が自分の支えとなり、ヒーローの世界が大好きになっていきました。
――舞台を作る側になったきっかけは何だったのですか?
高校生のときにバイト求人誌でアクター募集を見つけたのが始まりでした。
中学を卒業してもヒーローへの熱は続いており、募集があると知ったときはめちゃくちゃ嬉しかったです。今でも求人は大切にとってあるんですよ。
――憧れていたものになれるって嬉しいですね!
残念ながら自分には向いていなかったんですけどね。
勉強そっちのけで、ものすごくはりきってやっていたんですよ。毎回どこがダメだったのかをレポートにまとめて。でも下手で、どうにもアクションセンスがない。あるとき先輩に言われてしまいます。
「狼と羊っているやん?オレは生まれながらに狼だけど、お前は羊。そもそも持っているものがちがうよ」
“お前にはムリだ”宣言でした。
――夢がつぶれてしまったんですね…。
ただ、だからといってヒーローを好きな気持ちは変わらない。何かしら関わっていたいと思っていたところ、アクションのない女の子向けショーの怪人役がまわってきました。
「やるぞ!」と燃えましたね。他のキャラクターのセリフも全部覚えていきました。アクションヒーローの夢はつぶれてしまったけど、今できることに全力を注ごうと思ったんです。
悪役はやってみるとわりと自分に合っていました。
ヒーローは100点満点な存在でなければならず、ヒーローが転ぶと「ヒーローなのにこけた!」と子どもに言われてしまいますが、悪役はやられる方が喜ばれる。ときにはヒーローを窮地に追い込んで凄みを出しますが、それを倒すからヒーローはかっこいい。
ヒーローのように減点されることなく、お話を盛り上げられる役回りは自分にハマりました。周囲の方々も僕の頑張りを評価してくださり、その後悪役が多く回ってくるようになっていきました。
――ヒーローをやりたかった気持ちが尾を引くことはなかったですか?
それはありません。僕はヒーローや悪役にこだわりがあるわけではなく、相互に作用し合って作り上げる世界が好きなんです。ただヒーローの世界にいたいというだけ。
僕は悪役というやる気になれる居場所を好きな世界の中に見つけられました。だから気持ちの折り合いをつけなきゃということはなかったです。むしろ「もっとやっていこう」とスイッチが入ったんですよ。
――では会社を興されたのは、悪役でやっていけるという自信を持てたことがきっかけとなっているんでしょうか?
会社設立はまたちょっとちがう経緯なんです。僕は一度ヒーロー業界を離れました。高校を卒業してもしばらく同じバイトを続けていたんですが、それだけで食べていくことは難しくて。
時計店や広告代理店に就職してバリバリ働きました。出世して部下を大勢持つなど順調な日々を送っていたと思います。しかし何か満たされない。自分がやる気になれる場所はここじゃないんじゃないかという思いがふつふつと湧いてくる…。
やっぱりヒーローが好きだったんですよね。忙しく働いていてもヒーロー熱は冷めなくて、自分で衣装を作って店舗のイベントや忘年会の余興などでショーをやるという行動に出ていました。
26歳のとき「やっぱり人生後悔したくない」と会社を立ち上げることを決心。思いついた翌日、勤め先に辞表を提出しました。
――悪の秘密結社の創業にあたっては、かつてやる気になれる居場所を見つけられた経験が活きていますか?
そうですね。アクションができなかったために、あまり人がやりたがらない悪役をやってみることにした。するとそこにこそ自分の居場所があった。この経験は、人がやらないことをやってみればいい、というビジネスを展開する上で重要なマインドを培ったと思います。
そのマインドで「悪役を専門にしている会社ってあるのかな?」と調べてみたらなかったんですよね。「これだ!」と思いました。悪役は自分が演じたときに性に合っていると実感していましたし、悪の秘密結社なら自分らしく生き生きとやっていけると確信しました。
熱を入れて会社のPVも作成。悪の秘密結社PV「YABAI!」
――創業当初は全国のヒーローショーに悪役を派遣することをメインの事業とされていたんですよね。
そうです。ヒーローやキャラクターを持っている団体さんのもとへ出向き、悪役としてショーを盛り上げるというものです。
――いざ事業を開始されて壁にぶつかったということは?
会社としてはぶつかってばかりでした。
ヒーローショーのキャスティングでなんとかやっていけていましたが、それは単に、あらかじめブランディングされた場に乗っかっていただけです。「悪の秘密結社」自体にファンはついてきていませんでした。
怪人を30体作ってショーをやったことがあるんですが、1000人くらい来てくれるかな!と期待をかけていたら、実際に来てくれたのは14人。
考えてみればそれは当然で、僕らは応援してもらえる仕組みを作っていなかったんです。つまり、物語がなかった。
――会社が成長するために「物語」が必要だったんですね。
そこで僕らは創業から4年間クライアントに合わせて物語を作ってきた経験を活かし、福岡県内で活躍するヒーローたちに協力を仰ぎ、『ドゲンジャーズ』を生み出しました。
悪の秘密結社が脚本を執筆する『ドゲンジャーズ』。
福岡に実在するヒーローたちとともに社長のヤバイ仮面も出演する。
――ローカル放送にも関わらず、初回から放送ごとにTwitterでトレンドワード入りし、大きな話題となっていましたよね。
ネットだけでなく、リアルでも反響の大きさを確認できました。
コロナ禍のためなかなかショーができなかったんですが、シーズン1の最終回放送直前にやっと開催することができ、3000人もの方が来場してくださいました。
『ドゲンジャーズ』までに何度も人が集まらない失敗体験をしていますから、嬉しかったですね。
『ドゲンジャーズ』ショー会場の様子(写真:本人提供)
お手紙での感想もよくいただきます。「コロナで気が滅入っていたけど、ばからしい番組をやってくれたおかげで明るい気持ちになれた」と言っていただけると、「楽しんでいただけているんだな」とほっとしますよ。今は『ドゲンジャーズ』という物語を作ることが、悪の秘密結社をやっていく大きな原動力となっていますね。
――『ドゲンジャーズ』はどんなところが魅力の物語なんでしょうか?
正義を押しつけないところですかね。夢や希望を語らずコミカルに作っています。ここにも「人がやらないことをやる」という僕の精神が活きているんですよ(笑)。
また、実在する福岡のヒーローを扱っていますが、あえて地元のことを押し出さないスタイルです。作中のヒーローたちの自己紹介もあっさりしたものですよ。主人公の青年も東京から福岡に遊びにきたという人物で、福岡に執着はありません。
なぜそうしているかというと、その地域を知らない人はローカルな話ばかりされてもおもしろくないと思うからです。どこに住んでいる人が見てもすっと物語に入り込めるようにということを心がけています。
現在シーズン2『ドゲンジャーズ〜ナイスバディ(Nice Buddy)〜』が放送中。シーズン3の放送も決定している。
ドゲンジャーズ公式サイトはこちら
――人がやらないことにチャレンジし、『ドゲンジャーズ』誕生によって会社の個性もついてきました。今後の悪の秘密結社の目標は何ですか?
創業当初から言っていますが、上場して世界征服することです!
野心的と思われるかもしれませんが、そういうわけではなくて(笑)。
僕はかつて自分を救ってもらった世界に恩返しをしていきたいんです。でもそれを自分が見てきたものを後追いするような形でやるのはちがう。自分にしかできないことで、憧れた世界を今度は自分が引っ張っていきたい。それが上場したいの裏にある本当の気持ちです。いろんな経験を積んできた悪の秘密結社が誰かのやる気スイッチになればいいなと思います。
――悪の秘密結社が世界征服するのを楽しみにしています!ありがとうございました!
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この記事を編集した人
ほんのまともみ
やる気ラボライター。様々な活躍をする人の「物語」や哲学を書き起こすことにやりがいを感じながら励みます。JPIC読書アドバイザー27期。