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生活・趣味
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五島鉄平(ごとう・てっぺい)
測量士の仕事をしながらハンバーグを食べ続ける「ハンバーグ測量士」。その食べ歩きブログがマスコミ関係者の間で話題となり、日本テレビ系列『ヒルナンデス!』やTBS系列『マツコの知らない世界』に出演。数々のメディアで取り上げられる。2023年現在、ハンバーグ生活15年目を迎える。
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――五島さんはほぼ毎日ハンバーグを食べているそうですね。でもそんなハンバーグ生活の始まりは自分の意志からではなかったとか?
そうなんです。会社の先輩に言われてハンバーグを食べまくる日々が始まりました。
――どうしてそういうことに?
測量会社で働き始めたのがそもそものきっかけなんです。測量の仕事って基本的に現場仕事で、その現場は毎日変わります。だから昼飯をいろんな地域のお店で食べていて。しかも現場には必ず先輩と二人一組で入ります。休憩も先輩と一緒でした。
で、あるとき先輩が、僕がどのお店でもハンバーグばかり注文することに気づいたんです。店を選ぶのはいつも先輩だったんですけど、先輩が「このお店はナポリタンがうまいんだ」とおすすめしても、僕はハンバーグを頼んでいて(笑)。
――もともとハンバーグが好きだったんですね。
好きっちゃ好きでしたけど、それほど熱があるわけでもなかった感じです。もともと食に興味はなくて、「絶対おいしいものを食べたい」とかいう欲もなくて、ただおいしくないのはイヤだから、ハズレがないメニューとして無意識のうちにハンバーグを選んでいたんです。
でも先輩がそうした僕のクセに気づいた。それで、「そんなにハンバーグが好きなら、ランチをハンバーグしばりにして、ブログに記録を書いていけよ」って。
――唐突な提案でしたね。
提案というか強制というか…せっかく毎日食べ歩いているんだからやってみろって感じで。
――先輩は怖い方だったんですか?
入社時は怖いと思っていましたけど、ブログの話が出たのはそれからだいぶ経っていて、怖さも緊張も和らいでいましたね。ただ、ひとまわりくらい年上の人でしたし、やっぱり気を遣っていました。気を悪くさせちゃいけないなって。それではっきり拒否することもなく、なんとなくブログを始めたんですよね。
――そもそもなんで「ブログ」だったんでしょう?
それは先輩がお昼を食べるお店を選ぶのに、食べ歩きブロガーさんのブログを見ていたからなんですよね。2000年代半ばの当時はまだ、飲食店の口コミサイトはあってもレビューが少なくて、だったらブロガーさんの記事のほうが参考になるって感じだったんです。その背景があって、「お前もこの人たち(ブロガーさん)を見習ってやってみよう」って話になって。
――なるほど。ブログのように文章を書くことは得意だったんですか?
いえ、全然。文章を書くなんて仕事でもまったくやっていなかったですし、けっこう苦痛でした。そもそも生活のなかに新しい習慣を入れるのがイヤですよね。自分で決めたことではないならなおさら。
それにブログを始めたのは2006年頃でしたが、まだガラケーの時代だったので、撮った料理の写真をパソコンに移すのも一苦労でした。ガラケーとパソコンをケーブルで繋がないといけなくて。今みたいに簡単に転送できる「エアドロップ」とかなかったですから(笑)。とにかくめちゃくちゃ面倒くさかったですね。
――けっこうストレスがかかっていたんですね。
ハンバーグを食べるのがしんどかったときもありましたね。とくに真夏。外で汗をびっしょり流して働いた後に鉄板アツアツのハンバーグを食べるのって、いくらハンバーグが好きでもきつくて…。
――わぁ、聞くだけで暑くなってきます…。
しだいに休憩時間が近づくと、「ああ、もうすぐお昼来ちゃうなぁ」ってプレッシャーを感じるようにもなっちゃって。
――やめたいとは思わなかったんですか?
やめたくなるのは何度もありました。なんなら今でも。でもなんでしょうね、惰性で始まったことだから、やめることにもなかなか踏み切れなかったといいますか。過去に一度、「やめるんならここだな」っていうタイミングもあったんですけどね。痔になって。
――え!
そのときは1カ月ハンバーグ断ちをしたんですよ。医者に止められて。幸せな1カ月だったなぁ。でもその後またハンバーグを食べ始めちゃって。きっとやめる勇気を持てなかったんですね。で、今に至ると(笑)。
――逆に続いた理由はあるんですか?
最初はブログにコメントが来るようになったのが嬉しかったからですね。「このお店気になっていたのでどんな感じかわかってよかったです!」とか「行ってみたくなりました!」とか仰っていただいて。人の役に立っているんだと思えたんですよね。
そうやってモチベが続いて数をこなしていくと今度はプライドが芽生えてきました。自分のようにハンバーグの食リポをしている人は他にもいるので、その人たちに負けたくないなと。それはテレビなどメディアに呼んでもらえるようになったことが関係していて、自分より歴の浅い人が出演していると悔しいんですよね。「こっちは苦痛を味わいながら何年もやってきているのに!」って思って(笑)。
――しんどい思いをしながら続けている分、余計に悔しいですよね。
ただ、意識が高まりすぎるとかえって疲れることになってしまって。
ハンバーグ生活5年目ぐらいのときに、料理の取り上げ方や文章表現をもっと工夫しないといけないんじゃないかと思ったことがあったんですね。その頃にはInstagramを始めていたので、専門のコンサルの方に相談してみたりして。
でもそれがけっこうしんどかったんですよ。その方は「とにかく長文を書いてください!」とアドバイスしてくれたんですけど、もともと文章を書くのが苦手なのに長文とかきついですし、ソースがどうとか肉がどうとか自分は専門家じゃないから書けなくて。
――「こうしないといけない」は負担になりますね。
結局、意識して発信するのはやめました。尊敬するブロガーさんからも、「誰に求められてやっているわけでもないし、疲れちゃうからやめたほうがいいよ」と言ってもらえましたし、それからは自然体で投稿しています。
――具体的にはどんなふうに?
まず文章のほうは、自分が好きかどうかだけを書いています。僕は別にハンバーグのプロじゃないし、自分は詳しくないってわかっているので、評価するようなことは言わないんです。
写真も、料理を真上から撮ることはしません。真上から全体が見えるように撮ると、たしかにきれいなんですけど、実際の人の目線ではないと思うので好きじゃないんです。だから斜め上から撮るのと、ハンバーグの高さがわかるように側面から撮ります。肉厚がわかったほうがおいしそうじゃないですか。
――実際に食べる人の目線なんですね。
こういう目線を、お店の人だって求めているんですよ。この活動をしているおかげで飲食業の社長さんとお話しする機会が多くなったんですが、作り手の方々は自分たちで発信すると宣伝になってしまうから、食べた人が率直においしかったと言って紹介してくれるのが一番助かるんだそうです。これも僕が活動を続けられている理由の1つですね。
すごくおいしいのにあまり知られていないお店ってあるんですよ。そういうお店を自分が紹介することで人の目にふれてもらえるようにしたい。使命感に突き動かされている部分もありますね。作り手のみなさんには各々こだわりがありますし、それを自分が伝えることができたらうれしいです。
――お店の方にこだわりをうかがうこともあるんですか?
当初はお店の人と話すことはなかったんですけど、メディア露出するようになってから、向こうから話してくれるようになりました。それは自分にとって良かったと思っています。
作り手の方々はいわば職人で、みなさん巧みな技を持っていらっしゃるんですよね。そういうふだん表には出せないお話をうかがうのってすごく面白い。自分も測量の仕事で、見えないところで神経を研ぎ澄まして細かい作業をしていたりするので、職人芸の話って興味があるんですね。盛り上がって、夜9時から翌日の朝方まで話し込んだこともあります(笑)。
――それはすごい(笑)。
たぶん僕は人が好きなんですよね。ハンバーグも好きだけど、それをきっかけに人と関わりを持っていくのが好きで楽しい。『マツコの知らない世界』に出演してからはいろんな食べ歩きをしている人とも繋がることができて、いい刺激になっています。何かに熱を注いでいる人って独特な雰囲気を持っていて話も面白いんです(笑)。
ハンバーグ師匠・井戸田潤さんと、「マルシンハンバーグ」で有名な株式会社マルシンフーズに工場見学に訪れたことも。
――楽しい要素もあるようで安心しました。
楽しさが得られるようになったのは、やっぱり実績を積んだからだと思いますね。数多く食べたから、何年も続けたからこそ素人でも全国放送で語れるようになって、やりがいが生まれて、全然出会わなかったような人たちと出会えたのだと。
――先輩に感謝ですね!
そうですね…半分くらいは感謝しています。先輩も先輩でよくここまで僕に続けさせてきたと思いますよ。ただ仕事柄、食べ歩き自体は習慣化しやすかったんでしょうね。
オフィスで働くサラリーマンだったら、店選びが会社付近に偏っていたかもしれないし、休日にわざわざ出かけないといけなかったかもしれません。僕らの場合、現場から現場への道すがらで昼飯を食べるのが日常でしたから、ルーティーンに組み込みやすかったんですね。
――それで来る日も来る日も同じことを繰り返していたら、いつのまにか実績が積み上がっていたんですね。
簡単にやめられないところまで来てしまいましたね。よく「長く続けられるほど好きなんですね」って言われるんですけど、ただ好きというだけで15年続いたのかというと、それは違います。
ハンバーグはたしかに好きです。でもずっと食べているともうその感情は超えているというか。白米を毎日食べるのと同じような感覚になっているんです。白米って好きと言う気持ちだけで毎日食べているわけじゃないと思いませんか。
――言われてみればそうですね。当たり前になっているといいますか。
ですよね。僕にとってのハンバーグもそうなんです。ハンバーグを食べるのは日常生活の一部になっています。で、日常になるとどんなことが起こるかというと、自然と体が反応するようになるんですよ。
車で現場へ向かっているとき、飲食店の前を通ると、そのお店の看板にハンバーグと書いてあるかどうかがわかるようになっちゃいました(笑)。時速60㎞というなかなか判別できないスピードで走っているにもかかわらず(笑)。ちょっと寄ってみようかとお店に行くと、本当にハンバーグがメニューにあるんですよね。ずっと僕にハンバーグ生活を続けさせてきた先輩も同じ状態になっていて、お互い「すげぇな」ってもはやこの状況を面白がっています。
こういう境地まで来ちゃったので、今はやめるほうがしんどいですね。先輩も僕もいいおじさんだからやめるのにも体力がいる(笑)。今さら生活を切り替えられないですね。
――「やめるのがしんどい」まで続けるのが何かを極めるカギなのかもしれませんね。ありがとうございました!
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この記事を編集した人
ほんのまともみ
やる気ラボライター。様々な活躍をする人の「物語」や哲学を書き起こすことにやりがいを感じながら励みます。JPIC読書アドバイザー27期。