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2020.07.29
仕事・働き方
2022.12.19
三宅香帆(みやけ かほ)
1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。博士後期課程中途退学。大学院での専門は『万葉集』。 大学院在学中に執筆活動を開始。会社員生活を経て、現在は書評家・作家として活躍中。 著書に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)、『それを読むたび思い出す』(青土社)など。近著は『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文 (14歳の世渡り術)』(河出書房新社)。
YouTube:Kaho Miyake
公式サイト:三宅香帆
――書評家デビュー5周年と、ご結婚おめでとうございます!
ありがとうございます(笑)。
――三宅さんは、デビュー作『人生を狂わせる名著50』で「人生を振り返ると、自分で思いもよらなかった選択をするとき、いつも傍らには本がありました」と書いてらっしゃいました。今日はこれまでの歩みや、読んでこられた本について伺えたらと思っております。
はい、よろしくお願いします!
2022年にYouTubeも始めた三宅さん。おすすめの本や自宅の本棚紹介も。
――本は、いつ頃から好きだったのですか?
小さい頃からですね。母親が読書好きだったので、その影響もあったと思います。昔から本や漫画が好きでずっと身近にありましたが、小学生のときって「みんな本を読んでいたよなぁ」と思っていて。読書の時間とかあったじゃないですか。だから周りにも本好きが多かった気がするんです。
ただ、中学生とか高校生になってみんな部活とかで忙しくなって、あまり本を読まなくなっても、私は週に4冊とか読み続けていて。「自分は本が好きなんだなぁ」と思うようになったのは、その頃かもしれないですね。周りの友達に「これ読んで!」って布教したりもしていました。
人生のどのタイミングでも、本から離れることはなくて、今に至るという。
――本は楽しいだけじゃなく、悩んでいるときに助けてくれたりするとも書いてらっしゃいましたよね。
それは思春期に読んだ本の影響が大きかったと思います。中学生のときに読んだ氷室冴子さんの『なんて素敵にジャパネスク』や、高校生のときに読んだ俵万智さんの『恋する伊勢物語』がきっかけで古典を好きになって「大学は文学部に行って国文学の勉強をしたい!」と思うようになったり。
司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』にハマって、新撰組をすごい好きになって、「京都の大学に行きたい!」と思うようになったりしました。最近も東京から京都に移住したのですが。
振り返ってみると、私は人生の転機に、本や漫画がきっかけで決めることがすごく多かったんですよ。好きなものや価値観にしてもそうで、「本は人生に影響を及ぼすものだなぁ」と思っていて。私という人間が、そもそも本や漫画で出来ている感覚があります。
――10代の頃は、将来についてどんな風に考えていました?
ぼんやりと、本に関わる仕事に就けたらいいなって思っていました。図書館の司書さんとか本の編集者さんとか。でも「絶対なるぞ!」と思っていたわけではなくて、本当にぼんやりでしたね。
大学に入ってもそれは変わらなくて。出版社への就職もいいなと思ったりしていたのですが、いろいろ話を聞いていくと編集者は飲み会が仕事の一部という風潮が当時は色濃くあり……今はそんな時代でもないと思うのですが。毎晩お酒飲む生活をする勇気はなく。憧れはあるけれど、実際に自分がやるとなったら向いているのかなって。
インターンも結構行ったりして、わりとがっつり就活はしていたんですけど、もうちょっと勉強もしたかったので、結局、就職するのはやめて大学院に進んで、3年間『万葉集』の研究をしていました。
今でこそ私は、本を紹介したり解説したりする仕事に就いていますけど、自分がそんな職業に就くなんて思ってもいなかったし、そもそも選択肢にすら浮かんでいなかったんです。
――大学院で研究されていた『万葉集』は、どんなところに惹かれたのでしょう?
万葉集って1200年前とかの和歌が残っているんですよ。それなのに現代の人が読んでも共感できるというか。たとえば、恋愛の歌だったら「それはこういう返しをするよね」みたいな(笑)。
奈良時代は、万葉仮名といって漢字だけで表記する時代だったので、その漢字で遊んでいる人もいて。たとえば「蜂音」って書いて「ブ」と読ませたりするんです。「ブブブブブブ」って蜂が鳴くからなんですけど。
万葉集は本当に長いので、そういう漢字の読み方の研究もいまだにやっていますし、リアルタイムで新しい発見が生まれていて、まだまだわからないことがいっぱいあるのが面白いんですよね。
――最新作も『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文』という古文の入門書ですね。
古文ってものすごい面白さがあるのですが、それを入門的に言っている本ってなかなかないなぁと思っていて。「ここが面白いよ!」「ここをもっと知ってほしいよ!」と思うことを詰め込んだ本になっているので、「古文苦手だった」とか「古文全然知らない」って人こそ、ぜひぜひ読んでほしいですね。
――自分もそうなのですが、古文が苦手な人って多いですよね。
学校の授業時間が短い、というのが一因だと私は思っていて。古文の授業ってそもそも少ないじゃないですか。面白さを伝える前に終わっちゃうと思うんですよね。文法とか助動詞とかで終わる印象がありませんか? 和歌もそうですが。
私は、古文が単純に作品として面白いのと、1000年前の人が私たちと同じようなことを考えていたんだと知ることが好きなのかもしれないです。
古典を読んでいると、「すごい共感できる!」とか「なんとなくわかる!」と思うことがいっぱいあって、それが1000年経っても残っていることも、同じようなことを思っていること自体も、すごいことだなって。
『妄想古文』でも紹介しているのですが、私は『更級日記』が大好きなんです。でも「その面白さが全然世間に伝わってない!」と思っていて。
『更級日記』って菅原道真の5世孫にあたる菅原孝標の娘が書いた日記なんですけど、今でいうオタクなんですよ。「源氏物語って面白そうな物語があるらしい。どうにかして読みたい!」と始まって、読みたいから祈るために仏像を掘り出したりするんです(笑)。
オタクって平安時代にもいたんだなと分かる日記文学で、本当に面白いんですよね。そういうことをもっと多くの人たちに知ってもらいたいので、『更級日記』を訳させてもらうことが今の夢ですね。
――卒業後は研究者の道を進むという選択肢もあったと思うのですが、そうしなかったのは?
それも考えてはいたんですけど、その前に「書評家」という別の道が見えてきたんですよね。
――大学院時代に書評家としてデビューされたんですよね。それはどういう経緯だったのですか?
大学院に通いながら、天狼院書店という書店でアルバイトをしていたんです。その書店がちょっとベンチャーっぽい書店さんで、アルバイトの子たちがブログを更新するみたいな文化があって。そのブログのネタがなくなってきたので、好きな本の紹介をするようになったんですね。
その中の一記事(『京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた 《リーディング・ハイ》』)がバズって、出版社さんから「これをもとに本にしませんか?」と声をかけていただいて、本当に運良くデビューできることになったんです。
――『人生を狂わせる名著50』は「本が好き!」という深い愛情がものすごく伝わってきて、友だちに語りかけるような文章もとても魅力的でした。ご自分で意識されたのは、どんなことでした?
背伸びしないで書くことですね。本の話をいただいたとき、私は23歳だったので「若い人が書く、若い人向けの本と思われるだろうなぁ」と思ったんです。本は大好きでしたけど、大したことが書けるわけでもない。だから背伸びしないように書こうと。
周囲を見渡しても同世代で小説家としてデビューしている人はいても、書評や批評の活動をしている人はいなかったんですよね。私は書評や批評を読むのも好きなので、背伸びせず、今の自分が思っていることを、堅苦しくない文体で書いて、同世代に読んでもらえたらいいなぁと思って書きました。
――本が発売されると、ベストセラー作家の有川浩さんが「作品の芯を射抜かれた」と推薦されたり、全国の書店員さんも猛プッシュされて大反響。初めて本を出されてみて、いかがでした?
やっぱり嬉しかったですね。私は10代の頃から有川浩さんの大ファンだったので、すごく感激しました。何より「こういう風にすれば、本に関わる仕事ができるかもしれない」と思えてホッとしました。
本に関わる仕事をしたいとか、本と繋がっていたいという感覚はあったんですけど、出版社に勤めるとか編集者になるというのは、自分の中でしっくり来ていなくて。書評というかたちで本を出すのが、いちばん自分に合っているように思えたので、そういう道が見つかったことがすごく嬉しかったです。
――卒業後は、IT企業に就職されたんですよね。どうして本とは関係ない会社を選んだのですか?
「書評の道を続けていきたい」と考えたときに、研究者として書くのでも良かったのですが、やっぱり一回、社会に出たいと思ったんです。
で、就職するなら、あまり本を読んでなさそうな普通の人がいる会社のほうがいいかな、と。世の中、本好きな人ばかりではないので、様々な人のことを知りたいなって。
インターネットも好きだったから、インターネットに関わる仕事で、副業OKなのはIT企業が多かったので、そういう会社を探して、WEBマーケティングの仕事をしながら執筆活動も続けていました。
――会社で働きながら本を書き続けるのは、かなり大変だったと思うのですが、どうでした?
1年目は、死んでました(笑)。1冊目の本が出てから、ありがたいことにいろんな出版社さんからご依頼をいただいて、入社した年に『バズる文章教室』『人生おたすけ処方本』『妄想とツッコミでよむ万葉集』という3冊の本を出させていただくことになったのですが、やっぱり兼業は大変でしたね。
――三宅さんの場合は、本についての本なので、膨大な数の本を読むだけでも大変ですよね。
私、本を読むのは速いんです。読みたくて読んじゃうので、むしろ「仕事になって良かった!」と思っていました。活字中毒なので、逆に読まないことがつらくなっちゃうんですよね。
会社員時代は、なかなか本を読む時間が取れないことがつらかったです。「もっと読みたいのに」とずっと思っていて。3年半、会社に勤めていたんですけど、仕事がどんどん忙しくなってきて、最終的には「本を読む時間も、書く時間ももっと欲しい!」と思って、今年6月に退社して専業になりました
――執筆活動一本で行くのも、勇気がいりませんでした?
そうですね。でも未来永劫、「執筆一本で行くぞ」というよりは、一回ちょっと休みたいというのがあったので、今後はどうするかは決めていなくて。とりあえずっていうかんじではあります。
――会社に勤めてみて、良かったのはどんなことでした?
いちばん良かったのは、「あっ、会社ってこんなかんじなんだ!」とわかったことですね。実際に経験してみないと、会社の雰囲気も社会のルールもわからないし、本を読んでいない人がどんなことを考えたり、どんな生活をしているのかもわからないじゃないですか。会社に入って、様々な人と接してみることで、世の中のことが理解できるようになったことが大きかったです。
やっぱり出版社さんとだけ付き合っていると、本を読んでいるのが普通だと思い込んでしまうんですよ。でも普通に暮らしている方はそうではないし、本は目に届かないのが当たり前だと思うので。そういう人にどうしたら本を届けられるのかなと、すごく考えるようになりました。
――書評の本は難しいイメージがありますが、そういう視点が三宅さんの本の読みやすさやポップな面白さにつながっているんでしょうね。逆に独立して良かったことは?
時間ができたことです。本を読む時間も、書く時間もいっぱい取れるようになって。健康的な生活ができるようになりました(笑)。
――今年は、初の自伝的エッセイ『それを読むたびに思い出す』も発表されました。
自分のことを書くのはそんなに得意じゃないので、自分の経験とか自分の思い出を面白く書くのって改めて難しいなと感じた本でした。書くのにすごく時間がかかってしまいました。ただ、本に関しては、いつも違う切り口を試しているつもりなんです。
たとえば同じ書評でも、『バズる文章教室』は、作家だけじゃなくて、アイドルとかインフルエンサーの文章も含めた文体の本。『人生おたすけ処方本』は、お悩みに対して1冊ずつ本を紹介する本。『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』は、名作小説の読み方の本。『女の子の謎を解く』は、ずっと書きたかった映画やドラマや漫画も含めたヒロイン論。
いつも違う切り口ではあるので、エッセイだから特別嬉しいってことではなかったんですけど、新しいことが書けたのは嬉しかったし、やれてよかったです。
三宅さん本人による全著作解説。執筆の裏話も。
――今年は退社、独立、結婚など、いろいろなことがあった年だと思います。そういう人生の転機に読んで感銘を受けた本があったら教えてください。
転機というわけではないんですけど、私は悩んだときに読む本が2冊あって、いつも手元に置いています。ひとつは、恩田陸さんの『小説以外』というエッセイ集で、短い文章をまとめた本なんですけど、恩田さんのいろんな考え方とか、生活に関するちょっとした記述とか、いいなと思うことがすごくいっぱい書いてあって、私にとって理想の生活みたいなものが描かれている気がするんです。
もう1冊は、村上春樹さんの『走ることについて語るときに僕の語ること』。趣味のランニングや小説についてのエッセイなんですけど、「あの世界的作家の村上春樹ですら、こんなに努力している!」と思って、頑張る気持ちが伝染するような本なので、それこそやる気が出ないときに読んだりしています。
実は私、書くまでがとても遅くて……。書き出しさえ決まれば、だいたいそのまま書けるんですけど、最初の切り口が見つからないときは、めちゃめちゃ悩みます。そういうときに読むのがこの2冊です。
みなさんの参考になるかはわからないのですが、好きな人や同じような仕事をしている人のエッセイは、「こういう風に生きてみたいな」と思うきっかけになるんじゃないかなと思います。
――心がすごく弱ったときに『ガラスの仮面』を読んだらめっちゃ元気が出た!という三宅さんのエッセイもすごく好きです。駅構内でぼろぼろ泣いてしまったと。
ありがとうございます(笑)。『ガラスの仮面』は本当に面白すぎるので、どんなに元気がないときでも没入できて、すごいパワーがもらえますよね。
やる気が出る小説としては、田辺聖子さんの『言い寄る』もおすすめです。基本的にはアラサーの恋愛小説なんですけど、主人公のデザイナーの女性が、働くことにしても、恋愛にしても、人生をすごく前向きに楽しんでいるのが伝わってくるような作品で、読むと、すごい元気になるというか、前向きな気持ちになれるので、私は気分が落ちたときにすごく読みたくなります。
――デビューから5年、いま改めて、読書の魅力はどんなところだと思いますか?
私がよく思うのは、映画とかドラマは、いろんな人の手が入っていますよね。監督とか脚本家とか、たくさんの人で作られるものだと思うんですけど、本はひとりで書いてるじゃないですか。だから、言葉としてダイレクトに、ひとりの思想が入ってきやすいのかなと。
自分が悩んでいるとき、同じような悩みを自分よりも考えている人が語りかけてくれている。すると一緒に悩んでくれているような気持ちになるんですよね。
人は孤独なものだし、つらいときに誰かが寄り添ってくれるわけでもない。でも本はいつもそばにいて、書いた人と心が通じ合ったような感覚になる時があります。
ひとりで楽しむ趣味って、今の時代はなかなかシェアしづらいというか、流行らないかもしれないですけど。逆にそれが救いになる人もたくさんいると思うんですよ。
「ひとりになりたいけど、ひとりで何もしてないといろいろなことを考えてしまう」人こそ、本を読んで、ひとりの世界を楽しんでもらえたら、より救われるんじゃないかなって。社会人になって特にそう思うようになりましたね。
――そういう意味で、三宅さんにとって特別な一冊ってあったりしますか?
村上春樹さんの『眠り』という短篇があって。すごく好きな作品なんです。眠れなくなった女性の話なんですけど、本当に特別な短篇で、他でも見たことない感情が描かれていると思っていて。私は「すごくわかる!」と直感的に思うんですけど、何がわかると思っているのか、あまり言語化できないんですね。
自分の中でも「なんでこれが『わかる』と思ったんだろう」と思って定期的に読み返し、考える一作です。そういう行為も読書の楽しさのひとつだと思います。
私は「小説は役に立つものだ」と思っていて、これほど手軽に気分を上げてくれるものもないし、自分に寄り添ってくれるものもない。「こういう人っているよなぁ」と現実的に考えられたりもしますし、自分の中でいろいろ考えるときでも、語彙が増えて「今、自分はこういう気分なんだ」と言葉にしやすくなったりします。生きていくうえで意外と役に立つものだと思っているんです。
――読者の方にも悩んでいる人がたくさんいると思います。最後に何かメッセージをいただけますか。
そうですね……私も悩むことはいっぱいあるんですけど、本を読むと「悩んでいいんだな」と思わせてくれるんですよね。たとえば、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』とか読むと「自分より全然悩んでいる」と驚くんです。で、「この主人公、悩みすぎ!」と笑って、逆に励まされる。
随筆などを読んでいても「この人、永遠に悩んでいるなぁ……」と感じたりするんです。現実には悩む時間って、意外と肯定されないですよね。「さっさと次に行こ!」みたいに言う人がたくさんいる。
でも本を読むと、悩むことも人生というか、それ自体も「人生の楽しみのひとつ」だと思えてくる。悩むことを悪いことだと思いすぎなくて良くなるんです。私も本に救われたことがいっぱいあるので、きっと助けてもらえると思います。悩んでいいんです、一緒に悩んでいきましょう!
――本日はありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしています!
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この記事を編集した人
タニタ・シュンタロウ
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。著書に『スローワーク、はじめました。』(主婦と生活社)など。