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【元祖鉄道アイドル・豊岡真澄さん】無関心だった鉄道を渋々学んでみたらドハマリして「鉄道の伝道師」になっちゃった話

2021.12.24

元祖鉄道アイドル・現在は親子で鉄道を楽しむママ鉄として活躍し、鉄道の魅力を幅広く発信している「ますみん」こと豊岡真澄さん。その鉄道愛はガチです。なぜ鉄道を好きになったのか、その魅力、好きな電車、やる気を出す秘訣などについて伺いました!

豊岡真澄 (とよおかますみ)

1983年1月25日生まれ。埼玉県志木市出身。ホリプロ所属のアイドルユニット「P-chicks」で活動後、担当マネージャー(鉄道BIG4の南田裕介)の影響によって鉄子に目覚める。元祖鉄道アイドルとして『タモリ倶楽部』など数々の番組、雑誌、イベントに出演。2008年3月に結婚・出産を機に引退。現在は二児の母となり、ママ鉄・鉄道文化人として鉄道イベント等で活躍。『Hanakoママweb』にてコラム連載中。鉄道トーク番組『恋する!たび鉄部』部長。南阿蘇鉄道「南鉄応援団」広報大使。


  
  
  

あれ、もしかして鉄道って奥深い世界なんじゃないかな?


――豊岡さんは、元祖鉄道アイドル、現在も親子で鉄道を楽しむ「ママ鉄」として活躍されていますが、もともと鉄道が好きだった、というわけではなかったそうですね。

    

そうなんです(笑)。17歳のときにオーディションを受けてホリプロに入って、アイドルユニットの活動からスタートしたのですが、その後ソロになってバラエティにいろいろ出始めたときに、担当マネージャーが南田裕介さんだったんですね。

 

――「中川家」の中川礼二さん、「ダーリンハニー」の吉川正洋さん、「ななめ45°」の岡安章介さんと共に、芸能界の「鉄道BIG4」と呼ばれている方ですね。

   

はい、業界でも有名な鉄道が好きな方で、移動で電車に乗るたびに「おう、〇〇系や!」「〇〇線のお古やで!」とか、ひとりでワーッと喋ってるんですよ。「すごい楽しそうだな」と思って聞いてはいたんですけど、最初は全然興味なかったので、「あ、そうなんですね」って、ずっとスルーしているのが2年くらい続いて(笑)。

     

たぶんその頃からちょっとずつ鉄道の種は植え付けられていたと思うのですが、開花はせずに、ずっと眠っている状態だったんですね。

      

南田裕介さんとは今でもイベント等で交流することも

   

――どんなきっかけで鉄道を好きになったんですか?

    

2005年に「アリtoキリギリス」の石井正則さんと山口もえちゃんが寝台特急で日本縦断の旅をするテレビ朝日さんの番組に出演することになって、しかも「北斗星」について何でも知っている、という体で出てください、と言われてしまったんです。

      

「北斗星」というのは、「日本初の豪華寝台特急」と呼ばれた有名な電車だったのですが、当時の私は「北斗星」の「ほ」の字も知らなくて。「北斗星って何ですか?」って状態だったのに、南田さんに資料をどっさり渡されて「全部暗記して」と。

     

「えー!」となったんですけど、もちろんお仕事ですから、一生懸命暗記して、ロケ先で覚えたことをお二人にワーッとお話したんです。そしたら「へえ〜すごいね」「すごいね」と言っていただけて。私も嬉しくなって「あれ、もしかして鉄道って奥深い世界なんじゃないかな?」と、ちょっとそこで気づいてしまったんですね(笑)。

       

――なるほど(笑)。

      

アイドル時代。まだ鉄道に興味のなかった時でも鉄道イベントに参加

    

もともと暗記するのは好きだったのですが、車両についている「キハ」とか「モハ」とか、そういう記号を覚えるのが楽しくて。それからもずっと気になって、「この記号って何ですか?」と南田さんに聞くようになって。ひとりで地方に行ったときでも、気になる記号があったらわざわざ電話して聞いたりして、私の好奇心に火がついてしまって。

     

その頃から鉄道の番組が増えてきて、南田さんに監修依頼が来ると「じゃあ、うちのタレントも出してください」とやっぱり営業しますから、私も少しずつ出るようになって。

         

『タモリ倶楽部』は何度も出させていただいたのですが、タモリさんがすごく鉄道が好きな方なので、定期的に鉄道特集をされていたんですね。そうなるとやっぱり南田さんが呼ばれ、私もセットで呼ばれ、何度も出ていくうちに、どんどん知識が深まってきて。

      

南田裕介さんと一緒に参加した東武鉄道イベント

      

――『タモリ倶楽部』でも、鉄道に詳しいアイドルという設定だったんですか?

     

最初は鉄道に全然興味ない普通のアイドルとして出ていたのですが、私自身が本当に鉄道を好きになってきたんですね。それで「電気機関車の免許を取りました!」「貴重な電車に乗ってきました!」とか、そういう報告をタモリさんにしていたら「おお、豊岡も電車を好きになってきたな。南田、お前やったな!」と、すごく喜んでいただけて(笑)。

    

鉄道業界もどんどん盛り上がっていったので、全国のいろんなところに撮影に行ったり、乗りに行ったり、イベントに呼んでいただいたりして、その都度、勉強して、また語って。なので、最初は無理やり覚えさせられたんですけど、覚えたことで開花して、「もっと知りたい、もっと知りたい」となって、今に至るというかんじですね。

     

     

     

自分のものにできないからこそ、追いかけてしまう


――鉄道ファンには、電車に乗ることが好きな「乗り鉄」、鉄道写真が好きな「撮り鉄」など、いろんな楽しみ方があるんですよね。豊岡さんは?

   

私は「乗り鉄」と、いちばんのメインは「車両鉄」ですね。車両の作りとか、どうしてこういう構造にしたのだろうとか、もちろんお顔とか。そういう見た目や細かい機能面、鉄道会社さんのコンセプト、そういうところにグッとくるんですよ。

    

たとえば、「あれ、つり革はなんで丸いのと三角のがあるんだろう?」とか「なんでこの車両は天井がちょっと高く見えるのかな?」とか「なんで車両と車両の間の扉を透明にしているんだろう?…あっ、広く見せるためか、すごい!」とか(笑)。

     

「車両鉄」(車両ファン)は車内外すみずみまでじっくりと見て楽しむ:本人撮影

   

――車両鉄、初めて知りました(笑)。もともとそういう気質があったのでしょうか?

   

いえ、車も全然興味なかったですし、乗り物に興味を持ったことはまったくありませんでした。ただ、もともと私はハマり症で、ガンダムが好きで、ずーっとガンプラを作っていたり、『戦国無双』というゲームに夢中になって、お城を好きになったりしていたので、南田さんも「この子は鉄子にできるな、しめしめ」と思っていたみたいです(笑)。

     

     

車両鉄に目覚めたのは、JR九州の車両たちに出会ったことがきっかけでした。九州に行ったときに、ソニック883という電車を初めて見て「カッコいいな、ガンダムっぽいな」と最初はそこから入ったんですけど(笑)、JR九州の車両は水戸岡鋭治さんという建築家の方がデザインされていて、本当にメカニックでカッコいいんですよ。

    

その後、JR九州の方とお仕事する機会があったので、「どうしてこんなに新しくてカッコいい車両を作れるのでしょうか?」と聞いてみたら、お金はあまりないけれど、古くなった車両でも使えるものはあると。それで、すごく昔の古い台車に、新しい外装を組み合わせて作ったそうなんですね。なので、見た目はすごく新しくてスタイリッシュなんですけど、ガラガラガラという昔の気動車のモーター音や独特の匂いがするんです。

     

その「使えるものは使う、中も外もカッコよくして、新しいお客さんを引き込みたい」というJR九州さんの想いにすごく心を打たれて。古い気動車のエンジン音や「あの匂いがたまらない」という鉄道好きの人も多いので、昔を感じさせつつも、まったく新しい観光列車を作ろうというところに、「古いものを復活させて、こんなに生まれ変わらせることができるなんてすごい!」とグッときて、JR九州さんの大ファンになって。

    

――好きな車両にも「JR九州ソニック883」を挙げられていますよね。

     

イチ推しの「JR九州883系ソニック」:本人撮影

    

はい、まだ鉄道に目覚める前に出会って「ああ、なんてイケメンな車両なんだろう」と、ひとめ惚れしてしまって、JR九州さんのお話を聞いてますます大好きになりました。

    

私はそういうことがたくさんあって。学生時代にいつも乗っていた東武東上線の東武8000系は、停車するときに独特の匂いがするので「嫌だな、臭いな」とずっと気になっていたんですけど、それはブレーキシューという制輪子が焼ける匂いだと東武の方に教えていただいて、仕組みを知ったら逆に愛しいポイントに変わったり。

     

かつて通学に使っていた「東武鉄道8000系」

    

『タモリ倶楽部』に出ていた頃にデビューした東京メトロ10000系は、都会の通勤車といえば四角い顔という印象だったのに、初めて顔がまんまるなんですよ。車両と車両の間の扉もすべて透明なんですね、それは、地下鉄は密閉感があって狭く感じるお客様が多いので、少しでも広く見せるための工夫だと聞いて「すごい!」とグッときたり。

   

私はつり革も好きで、必ずチェックするんですけど、古い車両はだいたい丸形で、新しい車両は三角で、向きも違ったりするんですね。それは隣のお客様と肘が触れ合わないようにするためだったり、できるだけ多くの人に乗ってもらうための工夫だったりするんです。そういうところもグッときて、どんどん鉄道を好きになっていきました(笑)。

     

東京メトロ10000系は、通勤時でも癒しを感じる優しいフォルム

――豊岡さんの鉄道愛もすごいです(笑)。鉄道の魅力はたくさんと思いますが、ひとつ挙げるとしたら、どんなところでしょうか?

      

自分のものにできないからこそ、いつまでも愛着が湧くんです。車や自転車は、好きになったら購入できますよね。ただ所有できたときは、ワッと嬉しいとは思うんですけど、それはいずれ冷めていくものだと思っていて。

    

電車は、いつまでも自分のものにできないからこそ、いつまでも追いかけていきたくなる。古いものがなくなっても、どんどん新しいものに生まれ変わって、終わりがない。そこがいちばんの魅力かなって思っています。

     

私自身もこんなに、この年まで、鉄道に魅了されるなんて思ってもいませんでした。今は人生の柱に鉄道があるくらい大好きなので、私自身も本当にびっくりしています。

     

    
    
    

ひとつの世界に入り込むんだけど、大きな輪が広がっている


         

――豊岡さんは鉄道アイドルとして有名になったわけですが、もともとオーディションを受けられたときは、どんな将来をイメージされていたんですか?

    

私が中学生のときに広末涼子さんがデビューされて、すごく活躍されていたんですね。それで広末さんに憧れて芸能界に入りたいと思ったのがきっかけではあったのですが、結構、気軽にオーディションを受けてしまって(笑)。それが逆にホリプロの方からすると新鮮で良かったみたいなのですが、「歌手になりたい」とか「女優になりたい」とか、そういうこだわりが全然なくて。鉄道を好きになることができて本当に良かったです。

    

――鉄道を好きになって良かったのは、たとえばどんなことでしょうか?

    

いいことばかりで、人生がこんなに豊かになるとは思っていなかったです。電車は誰でも乗れるし、身近に感じられるので、すごく入っていきやすいんですよね。だけど、すごく奥深い世界なので、知っても知っても終わりがなくて、知らないことだらけです。

     

私が知り得たことを誰かに教えてあげて、喜びを感じてもらうことに幸せを感じる、というところもありますし、逆にファンの方から知らないことを教えてもらって、「すごいですね!」と感謝すると、ファンの方にも喜んでもらえる。みんなで補給し合って、鉄道の世界を盛り上げていける。そういうところに、すごく幸せを感じます。

     

九州鉄道記念館でのイベントトークショー

      

私は子どもが大好きで、子どもができたら、そのことだけに一生懸命になりたいと小さい頃から思っていたので、24歳で結婚して引退したのですが、鉄道のお仕事をたくさんさせていただいたこともあって、子どもが幼稚園に入るぐらいのときから「記事を書いてみませんか」「ママ鉄グッズをプロデュースしてくれませんか」と声をかけていただけるようになって、少しずつ今のような活動をするようになったんですね。

     

駅鉄で「一日店長」として子ども向け鉄道グッズを販売したことも

     

子どもたちも鉄道を大好きになって、息子は中学校で鉄道研究部に入っていて、将来は鉄道の仕事をしたいと言っています。『Hanakoママweb』の連載コラムも、親子で一緒にいろんな電車や駅を取材して記事を書いています。親子で鉄道を楽しんで、子どもたちの輪も広がって、ママたちの輪も広がっている。ひとつの世界にすごく入り込むんだけど、その中で大きな輪が広がっていっている。それがとっても嬉しいですね。

    

いまでは親子で鉄道をたのしめるように

     

やる気は、やらないと出てこない。とにかくやることが大事


――豊岡さんは、やる気を出すための秘訣って何かありますか?

    

実は私も、子どもが中学受験をするときに、やる気が出る方法を調べてみたんですね(笑)。そしたら「やる気が出てから勉強するんじゃない。勉強すればやる気が出てくるんだ」と、いろんな記事に書いてあって「その通り!」と思ったんです。

     

私自身もそうですが、「やる気が出たらやろうかな」と思っても、やる気って出てこないですよね。自分のことを振り返ってみても、鉄道の世界にポンと入れられて「覚えて」って言われて無理やり勉強することから始まりましたが、そこから鉄道の魅力に気づいて、どんどん好きになっていきました。

      

やる気のスイッチをポチッと押したら「よし!」みたいなのが理想だとは思いますが、そんなに現実はうまくいかないので、最初は無理やりでも嫌々でも渋々でもいいから、ちょっとでも興味のあることがあったら、勇気を出して飛び込んでみる。

      

そうしたら、やる気は自然に出てくるんだと思います。やってみないと、楽しいも、つまらないも、わからないですよね。「自分には合わない」と思ったら、やめればいいし、すごく好きになれたら、人生だって変わるかもしれません。

     

――豊岡さんは、その素晴らしいお手本だと思います。

     

    

ある企業の偉い方とお食事に行ったときに「鉄道のどういうところが好きなの?」と聞かれて、ワーッと話したことがあったんです。そしたら「すごいね、豊岡さんは自分の使命がわかっているんだね」と言われたのが、すごく衝撃的で。

     

それまで私は、使命という言葉を口にしたことがないくらい、何も意識したことはなかったんですけど、「ああ、そうか、自分の使命があって、それを果たしていくことで、人生もっと楽しくできるのかも」と気づいたんですね。

      

「電車って、鉄道って、こんなに楽しいんだよ、ということを1人でも多くの人に知ってもらうことが私の使命だから頑張ろう!」とまたそこでやる気のスイッチが入りました。何かひとつ好きなものを見つけられたら、いろんなところに繋がって、人生豊かになると思います。鉄道に限らず、自分の好きなものを見つけてほしいですね。

     

     

    


   

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この記事を編集した人

タニタ・シュンタロウ

求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。著書に『スローワーク、はじめました。』(主婦と生活社)など。

 
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