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スモールステップの原理とは、難しい課題を達成するには、学習する内容を細分化して少しずつ取り組んだ方が良いという考え方のことです。アメリカの心理学者バラス・スキナーが「プログラム学習の5原理」の中の一つの原理として提唱しました。
プログラム学習には、次の5つの原理が含まれており、学習方法・教育訓練に有効である。①学習内容を系列化し細分化して、学習しやすくするスモール・ステップの原理、②オペラント条件づけに基づき、学習者の反応を引き出すアクティブ・レスポンディングの原理、③確実に学習できたかを調べる即時確認の原理、④学習者が個別のペースで学習を進めることができる自己ペースの原理、⑤プログラムの良し悪しは専門家が評価するのではなく、実際に学習が成立したかどうかで判断する学習者検証の原理。
子安増生、丹野義彦、箱田裕司『現代心理学辞典』(有斐閣)pp.681
スモールステップの原理は、会社での人材育成や、学校での教育などに非常に有効な理論だとされています。
スモールステップの原理のメリットとしてよく挙がるのが以下の2点です。
1、モチベーションアップにつながる(「できる」の発見)
難しい大きな課題は、簡単な小さな課題に細分化して取り組むべきというのがスモールステップの原理の考え方です。簡単な小さな課題であれば、学習者は成功しやすくなります。この小さな成功体験の積み重ねが学習者の達成感につながるので、モチベーションアップが見込めると言われています。
2、苦手分野の明確化(「できない」の発見)
課題が細分化されることで、「できること」がわかると同時に、「できないこと」が何なのかはっきりとわかるようになります。そうすることで、苦手な箇所に絞った対策をすることができるようになると考えられています。
また、教える側もどこまできるのか、そして何ができないのかが判断できるので、教えやすくなるといわれています。
では教育に関する例でスモールステップの原理の使い方を考えてみましょう。「九九が苦手な子ども」がいたとします。
この場合、九九の習得という大きな課題を簡単な小さな課題に細分化していくことになります。具体的には例えば以下のようなステップ。
1、1の段や2の段のような簡単な段を1つずつ覚える
2、7の段や9の段のような少し難しい段を1つずつ覚える
3、(得意な段から)連続して複数の段を言えるようにする
4、すべての段を連続して言えるようにする
5、九九のどの部分を聞かれてもすぐに答えられるようにする
このように課題を細分化することで、例えば、「5の段までは言えるけど、6の段以上の難しい段は言えない」というように、どこまでならできるのかがはっきりわかります。子どもはできるところが確認出来て達成感を得られますし、できないところに集中して取り組むこともできます。
実際にスモールステップの原理を使う際は、特に以下の2点のポイントに注意して使うのがおすすめです。
①大きな課題を学習者のレベルに合わせて細分化する
②焦らずに一つずつ取り組む
スモールステップの原理の考え方は、人材育成や教育だけでなく、習慣付けにおいても活かすことができます。
例えば、早起きを習慣付けたいとします。「早起き」という習慣も例えば以下のように細分化することが可能です。
1、寝る前に液晶画面を見ない
2、湯船につかる
3、10時までには布団に入る …など
こうすることで少しずつ小さな習慣を身に着けて、最終的には目標の習慣を身に着けることができるようになります。
なお、以下の記事で習慣化についてより詳しく解説していますので、気になる方はぜひチェックしてくださいね。
習慣化4つのステップと2つの継続のコツ!やる気を維持し続ける方法とは?
スモールステップの原理をしっかり理解して実践することができれば、「何がわからないのかもわからない」状態にならず、階段を一段一段登るように着実に成長していくことができます。会社や学校でぜひ実践してみてくださいね!
〈参考文献〉
子安増生、丹野義彦、箱田裕司『現代心理学辞典』(有斐閣)
藤永保『最新 心理学辞典』(平凡社)
この記事を書いた人
ミズタ
やる気ラボライター。趣味は映画と音楽。インタビューとコラムをメインに書いています!