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刀鍛冶というと、みなさんはどのような人をイメージしますか?ストイックで堅固な人を思い浮かべるでしょうか。
刀鍛冶になるには、刀匠のもとで5年以上修行し、文化庁主催の研修会で技術を認めてもらわなければなりません。簡単な道のりでないのはもちろんのこと、刀匠資格が得られても食べていけるとは限らない、厳しい世界です。続けられずやめていく人も多くいるとのこと。
しかし安藤さんによると、刀鍛冶に必要な資質はどんな仕事にも共通するものであるといいます。はたしてどんなことが、刀鍛冶のように厳しい世界を乗り越えられるやる気となるのでしょうか。
安藤広康(あんどう・ひろやす)
1979年生まれ。岡山県在住。1998年、父・安藤広清氏に入門。2003年に文化庁より作刀承認を得て、翌2004年より岡山県・備前長船刀剣博物館内の鍛刀場にて実演を行う。
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安藤広康さんは刀鍛冶である父親の背中を見て育ちました。物心つく前からずっと仕事を見てきたため、保育園の頃にはすでに、刀鍛冶になることを将来の夢として絵に描いていたといいます。
以来「自分は刀鍛冶になる!」と思い続け、高校生になってもその夢は揺らぎません。同級生が就職や進学を考える中、安藤さんは卒業したら修行に入ると決めていました。
父・広清さんはコックから刀鍛冶へと転身した人物。安藤さんが1歳のとき8年の修行を経て独立。
父親の元で修行を開始すると、最初はひたすら師匠の動きを追うことに注力しました。「仕事は見て覚えろ」の世界。目で吸収していくしかないのです。
また弟子の主な仕事は「炭切り」。刀身の焼入れに使う木炭を均等な大きさに切り分ける作業です。刀鍛冶の世界には「炭切り3年」という言葉があり、上達するのに3年かかるほど炭切りは難しい仕事であるそう。
来る日も来る日も炭を切り続けなければならないこと、なかなか思うように同じ大きさに切れないことには、子どもの頃から仕事を見てきた安藤さんも骨が折れたといいます。
他にもつらかったことがありました。それはつい友人と自分を比較してしまうこと。友人たちは働いてお金を稼いでいるのに、自分は修行中で無給。
安藤さんは親元で修行していたため、必要な費用は家族に賄ってもらっていましたが、「自分で稼いでいない」ことは重くのしかかっていたといいます。
そもそも刀鍛冶は不安定な職。買ってくれる人がいなければ稼ぎは得られません。「20年以上やっている今だって不安ですよ」と安藤さんはぽつりと漏らします。
ではなぜ続けることができるのか?
安藤さんは「やっぱり仕事が好きだから」と語ります。
「刀ももちろん好きだけど、僕は刀を作る工程や作業そのものが好きです。刀作りはどんなに鍛錬を重ねても一度でいいものができるわけではない。失敗も多いです。でも一筋縄ではいかないからこそ楽しい。たとえうまくいかなくても、次はどんな色になるのか?形になるのか?ワクワクするんです。この世界にはやめていく人も多くいますが、続けていくには刀が好きなだけではなく、仕事そのものを好きになることが大切だと思います。これはどんな仕事の人にも通ずることではないでしょうか」
刀作りには火傷が日常茶飯事。しかし怪我や環境は慣れていくもの、むしろ「勲章」だと安藤さんは語る。続けられるかどうかは気持ち次第。
修行5年目に文化庁の研修会に参加し、技量が認められた安藤さん。その後、最後の1年までしっかり鍛錬し、晴れて自分で刀鍛冶の道を歩み始めます。
とはいえ修行が明けてもすぐに独立できるわけではないこの世界。多くの人は引き続きお世話になった工房に奉公し、独り立ちの機会をうかがうのです。
幸運なことに安藤さんは、開設計画のあった備前おさふね刀剣の里の職方に応募する機会に恵まれました。そして見事合格を手にし、作品作りに集中できる環境を得ることができたのです。
しかし個人事業であることに変わりはなく、その後やっていけるかどうかすべては自分の腕にかかっていました。
安藤さんは注文がないときでも刀作りをしています。作れば作るほど材料は減り、かえってお金がかかってしまうにも関わらず、休まず作り続けているのです。その理由は継続にこそ意味があると信じているからでした。
「作り続けているから注文が来るんです。何も手を動かさないで待っていてもチャンスはやって来ない。やり続けることが大事だと思っています」
続けるためには人に知ってもらうことも重要と考え、積極的にSNS発信をしている。うまくいかないことや失敗も赤裸々に投稿。
日々の仕事を投稿する他、作刀過程で生まれ出る玉を「安産のお守り」としてプレゼントする取り組みを行う。
安藤さんは刀鍛冶の世界に入って20年余り。長きにわたり活動していても、未だに「やってみたい」の火は消えていません。自分なりの「おもしろい」を追求しているのです。
刀鍛冶の職人は作品を見るとき、いい・悪いで評価せず、おもしろいかどうかを見るといいます。安藤さんが「おもしろい」と思うのは、作り方が想像できないもの。
多くの刀を見ていると、中にはどのように作られたのか設計や工程が見えるものもあるそう。一方、「いったいどうやって作ったのだろう?」と唸る作品もあるとのこと。そんな作品に出会うと、「自分だってやってやるぞ!」とやる気が湧いてくるのだといいます。
「例えばですが、庭師の方が整えた庭より、アメリカのグランド・キャニオンのように圧倒的な自然の力で形成された台地の方が、僕はおもしろいと思うわけです。どっちがいいとか悪いではないんです。あらゆる自然条件が重なってものが生まれることの方が僕は心が弾みます。史上最高峰といわれる鎌倉時代の刀のように、自然的できれいな刃文を作り出すことに生涯チャレンジしていきたいですね」
刀鍛冶というと、修行僧や仙人のごとく厳かな人を想像していた人もいるでしょう。今回お話をうかがった安藤広康さんは、毎日生き生きと楽しみながら刀作りに打ち込んでいる方でした。今後も刀鍛冶としてやる気をみなぎらせる安藤さんにぜひ注目してみてください!
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この記事を編集した人
ほんのまともみ
やる気ラボライター。様々な活躍をする人の「物語」や哲学を書き起こすことにやりがいを感じながら励みます。JPIC読書アドバイザー27期。