子育て・教育

【3分解説】「わからない」がわかると、やる気になる? 「メタ認知」の促し方|保護者にオススメ! 子どもの「やる気」の引き出し方(5)

2019.06.4

【幼児】【小学生】【中学生】【高校生】【保護者】】
・自分を上からみつめる「メタ認知」――「どこがわからないか」がわかると、やる気になれる。
・子どもにとって「メタ認知」は難しい。大人のほうから、子どもの目線に立って「どこがわからないか」声をかけていこう。

【連載】保護者にオススメ! 子どもの「やる気」の引き出し方
第1回 どんな「やる気」を育てたい?
第2回 自分で決めると「やる気」が出る?
第3回 「やる気」の活かし方を知っている?
第4回 「やる気」はうつる?
第5回 「わからない」がわかると「やる気」になる?
第6回 誰のために「やる気」になる?



<第5回>「わからない」がわかると「やる気」になる?

 子どもが簡単な問題を間違っていたりすると、つい「なんでこれがわからないの!」と言いたくなってしまいます。それをぐっとこらえながら、「どこがわからないの?」と訊くと、「どこって…」と黙ってしまいました。

 

 よく、「勉強が苦手な子は、“どこがわからないか”がわかっていない」と言います。子どもにとってみれば、「わからないものはわからない!」なのでしょう。苦手を克服しようにも、とにかく全体的にわからないという状態なので、どこをがんばったらいいのかもわかりません。そうすると、なかなかやる気が出ないのも当然といえば当然です。

 

 「どこがわからないかがわからない」というのは、メタ認知の問題です。

 「メタ認知」とは聞きなれない言葉ですね。「メタ」というのは「ひとつ上からみた」というような意味です。アニメなどで、登場人物が作品自体に発言することを「メタな発言」と言ったりしますね。自分の「わかっている」とか「考えている」といった頭のはたらき(これを認知と言います)を、一つ上からみるのがメタ認知です。

 人の話を聞きながら、「今、他のことを考えていたな」と思ったりすることはありませんか? あるいは、小説を読んでいるとき、「前半はおもしろかったんだけど、この人が出てきてから話がわからなくなった」というように、理解が追いつかないことに気づいたことはないでしょうか? そんな風に、自分の頭の中のことがわかるのは、メタ認知のはたらきです。

 「“どこがわからないか”がわからない」となっている子は、うまくメタ認知ができていません。傍からみていたら、「通分を理解していないから間違えるんだな」とか、「線も引かずに読んでいるけど、大事な部分を読み飛ばしていそうだな」といったことがわかります。しかし、子ども本人は、そういった自分のまずいところに気づいていません。なので、とにかく「わからないものはわからない!」となってしまうのです。

 ここまで読まれて、メタ認知って大事なんだなと思われた方が多いのではないかと思います。「どこがわからないかを意識しながら、問題を解くのよ」と、お子さんに言ってみたくなった方もいるかもしれませんね。

 ただ、メタ認知はそんなに簡単ではありません。特に小さい子どもにとっては、自分の考えを客観的にみるのは、発達的にとても難しいことです。

 みなさんも何か心配事があってあれこれと思い悩み、後になってから「考えすぎだったな」と気づいた経験はありませんか? 心配事を抱えている最中には、なかなか自分の考えを客観的にみることはできません。大人でも難しいのに、小さい子どもであればなおさらです。

 

 メタ認知をする力は、少しずつ育っていきます。小さいうちは、メタ認知の代わりをしてくれる人が必要です。「僕は、通分のところがよくわかっていないな」とか、「私は、文章を読むとき、何となく読んじゃってるな」とかいうことを、子どもが自分で気づければよいのですが、それは簡単ではありません。

 最初は、周りにいる大人が、子どもの「わかっていないところ」を言葉にして示してやることが大事です。「分母を通分せずに、そのまま足したから間違えたんだね。通分って何だっけ?」というように、子どもの頭の中に育ってほしいメタ認知を、会話で再現するようなイメージです。

 自分の考えに目を向ける機会をもつことで、少しずつ自分自身でメタ認知ができるようになっていくのです。

 

 そうすると、保護者のみなさんの役割は決まってきますね。子どもは、簡単(だと大人には思える)な問題でも思いがけない間違いをしたりします。そんなときに、「なんでこんな風に考えたのかな?」と思いを巡らしてみることが大切です。たとえ間違っていても、子どもは子どもなりにおもしろい考え方をしていたり、理に適ったことを考えていることも少なくありません。お子さんがどんな風に考えたのかに興味をもち、一緒に「わからない」を探っていくとよいかもしれませんね。

【連載】保護者にオススメ! 子どもの「やる気」の引き出し方
第1回 どんな「やる気」を育てたい?
第2回 自分で決めると「やる気」が出る?
第3回 「やる気」の活かし方を知っている?
第4回 「やる気」はうつる?
第5回 「わからない」がわかると「やる気」になる?
第6回 誰のために「やる気」になる?

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この記事を書いた人

岡田 涼

香川大学教育学部 准教授。2008年、名古屋大学大学院教育発達科学研究科修了。11年、香川大学教育学部講師就任。13年、香川大学教育学部准教授、香川大学大学院教育学研究科准教授就任。現職。友人関係場面における自律的動機づけの役割や、学習場面における自律的動機づけなどを主な研究テーマとしている。

 
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