新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
子育て・教育
2019.05.14
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2020年の教育改革を前に、アクティブラーニングという言葉を耳にしたり、関連書籍を見かける機会が多くなりましたが、「世の中で騒がれているからアクティブラーニングは大事=良いものだろう」と漠然と思っていた私にとって、この本は「アクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)」について深く考えるきっかけとなりました。
「指導要領を読んでもよくわからない」「難しくて手を出しにくい」という方や、これから教育の現場に出て働きたいと思っている方に、ぜひ読んで頂きたい一冊です。
(文・黄色いもみじ)
本書は、アクティブラーニング=良いものと思っていた私にとって、衝撃的な「はじめに」で始まります。
各種メディアでも期待を持って語られるようになったアクティブラーニングに対し、「はじめに」では、アクティブラーニングまたは主体的・対話的で深い学びのあり方やそれを支える前提を「幻想」ではないかと疑って考えてみる必要があるのではないかと語っています。
著者は上記のように、あくまでアクティブラーニングに懐疑的な姿勢を見せた上で、第1章ではアクティブラーニングや「主体的・対話的で深い学び」が教育政策として導入されるようになった経緯に触れ、2020年より実施される学習指導要領の問題点や課題を挙げます。
第2章以降は時間をさかのぼり、大正時代・戦時下・戦後・平成という時代ごとの、日本の教育史を振り返ります。
そして、こんにち主体的・対話的で深い学びと言われるようなものが、歴史上何度も試みられてきたこと、また、そのどれもが決して成功だったとは言えなかった実例を挙げます。
過去の実例を知ることは、驚きの連続でした。
日本の教育史を全く知らなかった私にとっては、明治から、何度も試みられてきたこと自体も驚きですが、その内容も2020年より実施される学習指導要領の内容に重なる部分が多く、決して目新しい試みではないのだと知ることができます。
また、過去の事例の中でどんなことが問題で成功とは言えない結果となったのか、その課題点や現場での実施の難しさなども例を交えて挙げられていて、とても納得ができます。
個人的には、第4章で例に挙げられた“「お店屋さんごっこ」の悲劇”がとても腑に落ちました。子どもたち一人ひとりの個性などを度外視して、主体的な学びを画一的に押し付けてしまうと、子どもにとっても、現場で働く教育者にとっても悲劇にもなりえます。
各種メディアで「良いもの」とされているアクティブラーニングについて、果たして本当に良いものなのかと疑問が湧き、より深く自分で考えてみようと思うきっかけとなりました。
実例が具体的でわかりやすいので、指導要領などでは難しくてとっつきづらいという場合でも、読みやすい内容となっています。
第5章で現代に視点を戻します。
今後の日本の教育について、歴史から何を学び、実際に教室で実践できるのか、適切に運用できるのかなどの様々な課題を掘り下げます。
過去の教育史を知った上でこの章を読むと、世の中で良いとされているから、良いものとして受け取るだけではなく、色々な視点でアクティブラーニングについて考える必要があると、自分事として課題点について自分の考えを思いめぐらせることができるようになったように感じました。
そして、教育の現場だけではなく、家庭でも何かできることがあるのではないかと考えさせられました。
教育の現場で働く人ができることには限界があります。子ども一人ひとりのきめ細やかなサポートは、やはり家庭でなければなかなか難しい。その子の個性や育った環境を一番知っているのは家族です。
学校と家庭の連携は、今後ますます必要になってくるのではないでしょうか。
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