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【中学生】【高校生】【保護者】
5月になると新入社員や大学生などを対象に話題になることの多い「五月病」。実は大人に限らず、お子さんも五月病になることがあるのです。
入学・進級の季節も落ち着き、せっかく新しい環境にも慣れ始めたお子さまたちが、五月病になってしまい、やる気が下がってしまったら?
中間試験・期末試験を目前に、学習意欲がなくなってしまったら?
五月病を乗り切るにはどうしたらいいのか。臨床心理学の観点から解説します。
本来、五月病とは新人社員などに見られる、新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状を意味すると言われています。
ただ、これは必ずしも大人に限ったものではないようです。実態としては、ゴールデンウィーク明けにやる気がなくなったり、無気力になったりする状態をさすことが多く、お子さんでも五月病と言われる状態になる可能性は十分にあるのです。
やる気が出なくなる五月病を心理学的に考えてみましょう。
人間は直近に具体的な報酬があるとやる気が上がります。いわゆるアメとムチのアメです。
お子さんが長期休みの前にやる気を見せているとしたら、長期休みがアメ(報酬)となっている可能性があります。特にゴールデンウィークは「普段行けないところに遊びにいく」など特別なイベントも多く、「授業がない」という非日常感も合わさって、強力な報酬となりやすいのです。
しかし、これが五月病のリスクにもなりえてしまうのです。目の前にゴールデンウィークという報酬があって、一時的にやる気が高まっていたけれど、報酬(ゴールデンウィーク)がなくなり、やる気が下がってしまった。それが五月病につながることがあります。
五月病を乗り切るためには、ゴールデンウィーク後もやる気を保っていられるような、適切な目標と報酬の設定が大切です。そのために、お子さんにどう働きかけたらよいのか見ていきましょう。
ゴールデンウィークという報酬をなくしたお子さんに、いきなり「目標をたてなさい」と言っても、急にやる気になれるはずもなく、なかなか難しいと思います。
そこで、「人は欲求に弱く、特に目の前にある具体的な報酬・誘惑に弱い」という心理的特性を利用してみてはいかがでしょうか。
夏休みの報酬を用意する
ゴールデンウィークという報酬が終わったのなら、次の報酬を用意すれば良いという考え方です。ブレダ応用科学大学のジェーレン・ナウィンらによると、報酬となる旅行の計画をすると8週間幸福度とやる気が上がり、報酬が終わると2週間で減退したという研究結果があります。
ですので、夏休みに入るあたりで、お子さんにとって報酬となるようなイベント(家族でキャンプに行くなど)を用意します。
また、そのイベントをカレンダーなど、目に入りやすいところに記しておくこともオススメです。この時、報酬を得るために達成するべき目標(次の中間テストで○○点以上を取るなど)を設定させ、一緒に記しておくことも有効でしょう。
これは、計画に参加しているという自己関連度を上げ、視覚化によって報酬を意識しやすくするためです。
目標はただ設定すれば良いものではなく、コツがあります。
大きい目標を立て、小さく分解する
大きい目標とそれを達成するための小さな目標を用意することが大切です。目標を小さくたくさん分けることで成功確率を上げることができます。
例えば、大きい目標は「中間テストで○○点以上」だとします。その目標を達成するために、「4月に習った単元をいつまでに復習するか」「数学の参考書の○ページから○ページまでを解くか」「英語の単語をいくつ覚えるか」「自分の苦手な部分をいつまでに把握するか」など、大きな目標に繋がるような小さな目標を立てていきます。
一つひとつの目標には期日を設けることも大切です。小さな目標を一つずつ、自分で決めた期日内にクリアしていくことで、自信が高まります。また、自分がどのくらいの目標をクリアしたかが分かるように、壁にチェック表を貼るなど視覚化する方法も良いでしょう。
お子さんのやる気が低いうちは、簡単に実現可能な目標を設定し、クリアしていくことで、自信とやる気をアップさせるようにすると効果的です。
結果だけではなく、過程も組み込む
「中間テストで○○点」などの結果だけではなく、「毎日15分は勉強に取り組む」などの過程も目標設定に組み込みましょう。その際は、あまり無理をせず、実現可能なものにするのがベターと言えます。結果のみを目標とすると、もし達成できなかった場合、一気にやる気がなくなります。しかし、過程も目標に入れ、そちらを褒めることができれば、お子さんのやる気は継続します。
習慣化させる
習慣にする事で自動運転モードになり、抵抗なく取り組みやすくなります。習慣化しやすい工夫としては、できるだけ同じ時間に同じ場所でやることです。
やる気が出ない時は必ずあります。しかし、「最低15分はやる」「1日1単語は必ず覚える」など、少しでも継続することが大切です。
お子さん自身で管理している感覚を与える
目標設定をさせる時につい見逃しがちですが、目標というものは他者から押し付けられると抵抗を感じやすいものです。
自分で目標を選択し、主体的に関わっているというコントロール感覚を持たせることも有効です。
お子さんの意見を聞いたり、一緒に考えたり、いくつかの選択肢から選んでもらうのも良いでしょう。「中間テストで○○点を取るために、塾で勉強するか、家庭教師を呼ぶかどっちが良い?」などです。
目標を設定しても、先にご紹介した通り、人は目の前の報酬や誘惑に弱いものです。
例えば、「勉強すれば次の定期テストで良い点が取れるかもしれないのに、スマホゲームをしたい」などが考えられます。
そんな誘惑に負けそうになっているお子さんをサポートするには、どんな方法があるのでしょうか。
自分のなりたい姿をイメージしやすくする
例えば、将来サッカー選手になりたいと思っている中学生のお子さんに、サッカー強豪校の高校のパンフレットを見せてみるのも、効果的かもしれません。
また、脳内コンストラスティング法というものもあります。これは、イメージのテクニックを使った方法です。
まず、寝る前に目標を達成している自分の姿をありありと思い浮かべます。例えば、試験中にスラスラと問題を解いている自分やキャンプを家族で楽しんでいる自分などです。
次に、いま思い浮かべた理想の自分と現在の自分を対比します。数学の問題で悩んでいる様子でしょうか。
こうして違いを具体的に考えることで、現在の自分がイメージの中の自分に近づくためにやるべきことを明確化し、さらに達成すべき期間を逆算して、「やってみたら楽しそうだ!」という気持ちを促し、やる気アップにつなげます。
声かけを工夫する
勉強の成果が出ていないときに慰めるのは良くないと言われています。現在の問題と向き合わないような、問題を見ないようにするような声かけはオススメできません。
なぜならやる気をアップさせるために、現状に目を向け、ある程度のネガティブな感情を抱くのは必要なことだからです。通常は不安などのネガティブな感情によって行動が促進され、怒りなどによってモチベーションはアップします。それは、問題に対処するためのエネルギーになります。
ポイントは、「問題点を具体的に示すこと」「まだ達成のチャンスがあるという信念を抱かせること」です。
つまり、「数学が苦手」という能力の問題と考えるのではなく、「今はうまくできていない」という手段の問題と考えることです。具体的にどこでつまずいているのか検討し、「関数の部分を集中的に勉強しよう」と改善のための具体的な方法を提案した方が自信は失いにくく、やる気も維持されます。
また、褒める時は、「相手がコントロールできる行動」を褒めます。
「頭がいい! 天才だよ!」ではなく、「一生懸命頑張った」など努力や勉強への姿勢、集中力、問題の解き方など、お子さんのがんばりや成長、変化といった部分を褒めます。才能を褒められると一時的な気分はよくなるのですが、努力を褒められた方がやる気が継続します。
今回は、五月病を乗り切るためのやる気のポイントについて目標設定の大切さという点からご紹介しました。
お子さんのことだけではなく、ご自身のこと、部下のことにも使えるテクニックです。ぜひ、参考にしていただければと思います。
石上 友梨
臨床心理士/公認心理師
いしかみ・ゆり●大学・大学院と臨床心理学を学び、警視庁に心理技術職員として入庁。5万人の職員のメンタルヘルス管理をしながら、カウンセリングやスポーツ選手へのメンタルトレーニングを経験。退職後は、認知行動療法をベースとしたカウンセリングやセミナーの講師、企業の顧問カウンセラーなど、活動の幅を広げている。また、ネパール・インドでヨガやマインドフルネスを学び、メンタルヘルスに効果的なヨガや、発達障害を支援する活動に力を入れている。